地理を学ぶことは世界を知ることです。また受験科目としての地理は、データの分析力や論理的思考を活かせる点で理系の受験生にも人気が高い科目です。本コラムでは、地理学習のポイントや効率的な学習法について解説し、受験生が地理で高得点を狙うための戦略を紹介します。
大学受験の地理選択 知識として求められるもの
大学受験の地理は、一見すると暗記量が少ないために簡単だと感じられるかもしれませんが、実際には知識の応用力や思考力が求められる科目です。特に近年の入試では、資料の読み取りや気候や産業に関する背景理解を問う問題が増加し、丸暗記だけでは対応が難しくなっています。
暗記の量が少ないは本当か?
大学受験を目指す皆さんの中には、日本史や世界史と比べると地理は覚える量が少ないため、簡単だと考えている人がいるかもしれません。確かに、覚える量そのものが少ないというのは事実かもしれませんが、それが「地理は簡単」ということを意味するわけではありません。地理の学習においては、知識を応用する力が求められるという教科特性を理解してする必要があり、暗記の量が少ないからといって得点しやすい、というわけではないのです。
たとえば範囲が限定的な学校の定期試験では、暗記中心の勉強が有効だったかもしれません。しかし、近年の大学入試では、知識だけでなく、それをもとにした思考力が重視される傾向が強まっています。単に覚えるだけでなく、地理的な現象や背景を深く理解し、それを応用できる力が求められるのです。
例えば、ある地域の地形や気候をただ覚えるのではなく、
- なぜそのような地形や気候が形成されたのか
- その地形や気候が産業の発展にどのような影響を与えたのか
といった理解が重要です。このように、地理の学習では知識の習得とともに思考力が問われるのです。
以下、センター試験2014年度地理Bの出題例を見てみましょう。こちらの設問では、それぞれの国の気候と産業の特徴を理解していることが求められています。アラブ首長国連邦は、国土が狭く人口が少ない産油国であるため、1人当たりGDPは高く、石油関連産業以外の産業の発展も著しいのが特徴です。イランは砂漠気候だけでなく地中海性気候なども分布することから、石油関連産業以外の産業も発達しています。サウジアラビアは、世界有数の産油国で、国土のほぼ全域が砂漠気候であることから石油関連産業以外の産業が発達しにくいことを手がかりに考えます。知識単体だけではなく、それぞれを組み合わせて考えることが求められているのです。
したがって、「地理は覚えることが少ないから楽」という認識は誤りです。基礎的な知識をしっかりと身につけ、それを活かして多面的に考える力を養うことが、大学受験において重要となります。知識と思考力をバランスよく鍛え、地理の学習に取り組んでください。
丸暗記ではだめ。資料を読み解く力とそこから思考する力が必要
特に、近年の大学入試では思考力や表現力が重視される傾向が強まっており、従来の暗記型学習だけでは対応が難しくなっています。
例えば、資料の読み取り問題は、丸暗記では対応できない代表的な設問です。主要国の貿易データを読み取り、その特徴から国名の組み合わせを判断させる設問は頻出です。また、主要都市の雨温図をもとに、気温や降水量の季節ごとの変化を読み取り、それに基づいて都市名を判断し、そのような変化をもたらす要因に関する設問に答えるといったタイプの問題も多く出題されます。
2021年の共通テスト第1日程の地理Bでは、雨温図をふまえて、大気の大循環が降水量の季節変化にもたらす影響を考察する設問が出題されています。この設問は、都市名が明らかにされていないため、既有知識を活用して推測することが難しく、より純粋な思考力を働かせることが要求されているハイレベルな出題です。
このような問題に対応するためには、単なる知識の暗記にとどまらず、日常的に資料を読み解く訓練が必要です。さらに、資料を正確に理解するための知識を身につけるだけでなく、そこから得た情報を活用して思考する力を養うことが求められます。
国公立理系志望者の受験も多い
国公立大学を目指す理系の受験生が選択する社会科目として、「地理」は人気があります。ちなみに、令和6年度の共通テストでは、世界史Bの受験者数が75,866人、日本史Bの受験者数が131,309人、地理Bの受験者数が136,948人となっています。文系・理系の内訳は明らかにされていませんが、文系で地理を選択する受験生はそこまで多くないことをふまえると、理系の受験生の多くが地理を選択していることが推測できます。この選択には、納得できる理由がいくつかあります。
まず、地理は他の社会科目と比較して暗記量が少ないという特徴があります。日本史や世界史などの科目では、多くの年号や出来事、人物名を記憶する必要がありますが、地理ではそれほど多くの暗記を必要としません。このおかげで、理系の受験生にとっては他の科目に集中する余裕が生まれます。
また、地理の問題は単なる知識の暗記だけではなく、データの分析や論理的な思考力が求められるという特徴があります。これは数学や理科にも通じる部分があり、取り組みやすいと感じる理系の受験生が多いようです。
このように、地理は暗記量の少なさと、理系科目と共通する思考力を活かせる点で、理系志望の受験生にとって合理的な選択肢と言えるでしょう。地理を選ぶことで、理系科目と同様の学習スタイルを維持しながら、効率的に高得点を狙うことができるのです。
社会科目の新課程 地理総合となった経緯とは?
高校の新しい社会科目として「地理総合」が必修となった背景には、中学校で学んだ社会科の内容を土台にして、より深い地理的知識と実践的な技能を身につけることが求められている点があります。この科目は、高校での選択科目である「地理探究」へのスムーズな移行をサポートし、地理学習を基礎から応用へと発展させる役割を担っています。
現代社会は、グローバル化の進展に伴い、国際情勢の変動や地域ごとの課題が複雑化しており、これに対応するための地理的な知識と技能が不可欠です。「地理総合」では、地図や地理情報システムを実際に活用する能力を養うとともに、国際情勢や国際協力について正しく理解し、それに基づく問題解決策を考える力を培うことが求められています。これらのスキルは、グローバルな視野で物事を捉え、多様な視点から問題に対処するために不可欠です。
さらに、近年多発する自然災害への対策や持続可能な社会の構築といった課題に対して、地理的視点からどのような解決策を導き出せるかを考えることも、「地理総合」の重要な学びの一つです。これにより、生徒たちは現実社会で直面するさまざまな問題に対し、地理的なアプローチを用いて効果的に対応する力を身につけることが期待されています。
このように「地理総合」を学ぶことは、単なる知識の習得にとどまらず、変化する世界に適応し、国際社会で主体的に活躍するための基盤を築く大切なステップとなります。
高校の地理 基本の勉強法
大学受験に向けた地理の学習では、地図やデータを活用した知識の定着、疑問を探求する姿勢、インプットとアウトプットのバランスを取った効果的な学習法を取り入れ、確実な実力を養いましょう。
背景を理解しながら知識を定着させることが大切
地理の学習においては、単に知識を暗記するだけではなく、その出来事の原因や成り立ち、背景にある理屈を理解しながら学ぶことが大切です。特に近年の大学入試では、思考力を重視する問題が増えています。そのため、背景を理解していれば、たとえ知識が曖昧でも太刀打ちできることもあります。
具体的には、地誌を学ぶ際に、国ごとの言語や宗教、民族の分布を覚えることが不可欠です。そのとき、近隣諸国との歴史的なつながりや旧宗主国との関係など、背景を理解することで、なぜそのような分布になっているのかが見えてきます。たとえば、フィリピンではカトリック信者が多く、英語の話者が多いという特徴があります。これはスペインの植民地支配時代の影響でカトリック信者が増えたこと、その後アメリカ合衆国の占領下で英語が導入されたことで今でも英語の話者が多い、という背景があります。このように、背景とともに学ぶことで理解が深まり、知識を定着させやすくなります。
一見すると、勉強するべきことが増えて大変に思えるかもしれませんが、物事の背景を理解することで、複数の単元にまたがった複合的な問題にも対応する力が身につきます。地理の学習では、背景を理解しながら知識を定着させることが重要です。
なぜ?どうして、と思ったことはきちんと調べる
地理を学習する皆さんにとって、重要なのは「なぜ?」という疑問を持ち、その答えを自ら探求する姿勢です。ただ暗記するだけではなく、疑問を感じたときにその理由を調べることで、理解が深まり、知識がより確実なものになります。
例えば、南米大陸の太平洋側に広がるペルー砂漠について考えてみましょう。この砂漠をただ「ここに砂漠がある」と暗記するのではなく、「なぜここに砂漠が形成されるのか?」という疑問を持つことが重要です。この地域には、ペルー海流という寒流が流れています。寒流がもたらす冷たい空気は地表を冷やし、大気を安定させます。この結果、雨をもたらすために必要な上昇気流が発生しにくくなり、降水量が非常に少なくなるため、砂漠が形成されるのです。
さらに、この原理を理解することで、他の地域でも同様の現象を応用して理解できるようになります。例えば、アフリカ大陸のナミブ砂漠も同じメカニズムで形成されています。このように、一つの疑問を解明することで、他の地域や現象に対する理解も深まります。
地理の学習において、「なぜそうなるのか?」と疑問を持ち、その答えを追求することは、単なる知識の暗記を超えて、深い理解を促進します。この姿勢を身につけることで、学びはより豊かで実りあるものになるでしょう。
地図を見ながら理解していく
地理の学習では、地図を効果的に活用することが重要です。地図には標高が色分けされており、一般的な地図帳では低地が薄い緑色、高地になるにつれて薄い茶色から濃い茶色へと変化しています。この色の違いを意識しながら地図を眺めるだけでも、その地域の地形の特徴をつかむことができます。例えば、アフリカ大陸では平地が少なく、全体的に薄茶色で示されていることから、標高がやや高い地域が多いことがわかります。
また、河川に注目することも重要です。河川は古くから人々の生活や産業の発展に大きな影響を与えてきました。例えば、ライン川沿いのケルンやバーゼルのように、河川沿いに大きな都市が発展している地域があります。また、エジプトのナイル川のように、外来河川が他国から流れ込む地域では、その河川によって例外的な産業が発展していることもあります。
このように、標高や河川に注目しながら地図を活用することで、その地域の地形や気候の特徴を理解し、さらにその地形がどのように産業の発展に影響を与えているのかを把握することができます。地図を使った学習を通じて、より深い地理の理解を目指しましょう。
インプットだけではなく、アウトプットを。模試などを活用
大学受験の地理の学習において、インプットとアウトプットのバランスを取ることが重要です。多くの受験生は、インプット、つまり知識の蓄積に力を入れがちですが、実際の入試問題では、その知識をいかに効果的にアウトプットできるかが問われます。単に覚えた情報を再現するだけでなく、資料や統計データ、地図を読み解き、それを踏まえたうえで適切に回答する力が求められるのです。
この力を養うためには、日常的に問題集を活用してアウトプットの練習を積むことが大切です。『地理重要用語・地名1500 チェック問題集』は、単元ごとに重要項目のアウトプットを行うのに最適な問題集で、初学者はもちろんのこと、既習範囲の復習を行いたい人にもおすすめです。
また、模擬試験も効果的な手段です。模試では、各大学の出題傾向に沿った問題が出され、実際の入試に近い形式での訓練が可能です。模試を積極的に受けることで、自分の実力を確認し、どの部分を強化すべきかを見極めることができます。
地理の学習を効果的に進めるためには、インプットだけでなく、アウトプットの機会を意識的に増やし、訓練を重ねることが不可欠です。こうした学習法を取り入れることで、実際の入試においても自信を持って対応できる力が身につくでしょう。
関連リンク:駿台模試
地理の教科書、ノートの取り方、参考書の選び方
地理の学習を効率良く進めるための教科書の書き込み方、ノートの取り方、参考書・問題集の選び方など、地理を深く理解し得点力を高めるための具体的な方法を紹介します。
書き込む余白を残して、白地図のコピーを貼る
地理の学習においては、白地図の活用が非常に効果的です。まず、授業やテキストで学んだ重要な内容を白地図に記すことで、知識を視覚的に整理でき、記憶に定着しやすくなります。例えば、原油や天然ガスなどの天然資源の産出地、工業都市の場所などを地図上に書き込むことで、それぞれの位置関係がはっきりし、覚えやすくなります。
また、学習内容を単に文字情報として覚えるだけでなく、白地図を使うことで学習内容を深く理解できるのも大きな利点です。例えば、工業の立地に関する学習では、白地図に工場の場所を記入することで、なぜそこに立地するのかがより鮮明になります。原料指向型の工業であるセメント工業は、原料である石灰石の産地に近い場所に多く存在することを視覚的に確認できます。また、市場指向型の工業であるビール工場や清涼飲料水工場は、主要な消費地である大都市近郊に集中していることが、一目でわかり、工業の立地パターンが理解しやすくなります。
このように、白地図への書き込みは学習効果を高め、地理的な知識の定着を助ける強力なツールです。書き込むための余白を十分に残した白地図を用意して、授業で学んだ内容を積極的に書き込み、自分だけの地理ノートを作りましょう。
間違いや苦手な分野をまとめておく
間違えた問題や苦手な分野をしっかりと整理することは、大学受験対策において非常に効果的です。学校の定期試験や塾での確認テストを受けた後、間違えた箇所をそのままにせず、ノートにまとめておく習慣をつけましょう。具体的な方法としては、ノートに書き込みを行う際に、教科書や資料集、地図帳の該当ページを記入しておく形式が効果的です。これにより、間違えた内容をさらに深掘りしたい時にすぐに調べることができるため、関連知識の理解も深めることができます。
特に有効なのは模擬試験後の振り返りです。模試で間違えた部分をノートにまとめておけば、入試直前期に効率的な見直しが可能になります。入試直前期は時間が限られているため、全範囲を一から復習するのは現実的ではありません。しかし、あらかじめ自分が間違えた問題や苦手な分野を整理したノートを使うことで、効率よく弱点を補強することができます。特に模試で出題された内容は本番の入試でも似た内容が出題される可能性があるため、入試直前期の見直しが効果を発揮するはずです。
普段から間違えた内容や苦手な分野を整理しておくことで、限られた時間の中で効率よく得点力を上げ、受験に備えることができます。
参考書は背景がわかりやすくまとまっているものを
参考書を選ぶ際には、知識をただ羅列するだけでなく、その背景や関連性がわかりやすく説明されているものを選ぶことが重要です。
例えば、センター試験2019年度地理Bで出題されたこちらの設問では、河川の流量変化について問われていますが、これは河川の流量変化の暗記を求められているわけではありません。エニセイ川のような高緯度を流域とする河川は、遅い春を迎える6月頃に雪解けによる急激な流量増加が見られることを知っていれば、その知識をもとに判断することができます。
このような背景を理解しながら知識を習得するためのおすすめの一冊として、『地理重要用語・地名1500 チェック問題集』(駿台文庫)があります。この参考書は、単元ごとの知識整理に適しているだけでなく、大学入試でよく出題される資料の読み取り問題に対応するための背景知識をしっかりと解説しています。受験勉強では、インプットだけでなくアウトプットの質を高めることが大切ですが、この参考書はその両方をバランス良くサポートしてくれるため、効率的な学習が可能になります。
目指すレベルに合わせて、出版日が新しいものを選ぶ
大学受験に向けての参考書や問題集を選ぶ際には、自分の目標や学力レベルに合ったものを選ぶことが成功の鍵です。まず大学入試で求められる基礎知識を分野ごとに習得していくことから始めたい、という目標であれば、『これだけはおさえよう! 地理100テーマ書き込み問題集』が役立ちます。この問題集は、実際の大学入試の出題傾向も把握しつつ、各分野の必須の知識を効率的に習得することができます。地理の広範な範囲をコンパクトにまとめているため、最初のステップとして非常に有効です。
一方で、共通テストや二次試験に向けた対策を進める段階では、過去問や実践問題集が必要になってきます。このとき、特に重要なのは「出版日が新しいものを選ぶ」という点です。共通テストや大学ごとの出題傾向は年々変化します。特に、地理は時事問題の影響を受けやすい科目です。最新の国際情勢や国内の社会問題が反映されるため、数年前の問題集では現在の出題傾向をカバーしきれない可能性があります。そのため、『2025-大学入学共通テスト実戦問題集 地理総合,地理探究』などの毎年刊行される問題集を活用し、常に最新の出題傾向を把握することが大切です。
最新の問題集を使うことで、時事問題に強くなるだけでなく、現行の入試傾向を的確に把握でき、より効果的な対策が可能になります。志望校合格に向け、無駄なく学習を進めるためには、こうした選び方に注意を払うことが重要です。
定期テスト対策のポイント~ノー勉は絶対だめ~
地理の定期試験対策は、授業内容をノートにまとめ、特に先生の補足説明をきちんと記録することで、効率的な復習が可能になります。定期試験前には教科書、資料集、地図帳を使って重要事項を再確認し、地理的な知識を確実に理解しておきましょう。
まとめノートで、できなかったものはきちんと確認しておく
定期試験で高得点を取るためには、授業で学んだ内容をその場限りにせず、しっかりとノートにまとめておくことが非常に重要です。特に、大学受験を見据えた高校生にとって、毎回の定期試験に向けた日々の積み重ねが大きな差を生むことになります。
授業中、先生が板書や配布するプリントを用いて解説をしてくれる場合、その内容を漏らさずノートに写しましょう。先生が強調するポイントや、口頭での補足説明もきちんと記録することが大切です。単元ごとに要点を整理した「まとめノート」を作っておくことで、試験前の復習が効率的に行えるだけでなく、大学入試対策においても非常に役立ちます。
また、授業中に行われる確認テストや演習問題は、自分の理解度を確認する良い機会です。そこで間違えた問題や、スムーズに解けなかった問題については、後でしっかりと見直しを行い、解説を加えてノートにまとめておくことが不可欠です。特に、間違えた問題は、類似の内容が定期試験に出題される可能性が高いため、放置せずに繰り返し復習することが大切です。
しっかりとノートを活用し、できなかった問題を確実に復習することで、定期試験でも大学入試でも成果を出す準備を整えましょう。
前日は試験範囲の教科書、資料、地図を再確認
地理の定期試験の前日には、試験範囲の教科書、資料集、地図帳をしっかりと確認しましょう。
まず、教科書を見直す際には、本文中の太字で示された重要用語を正しく説明できるようにしましょう。ただ教科書の文面を読み上げるのではなく、用語の定義を簡潔に説明できるかどうか、あるいは似た用語との違いを説明できるかどうかといった点に注意して取り組みましょう。もし説明が難しい場合は、教科書の該当箇所を再度読み直し、内容をしっかりと理解することが大切です。
次に、資料集の確認も重要です。図表やグラフを読み取るための着眼点や背景知識を先生が授業中に解説してくれているはずです。資料集と同じ図表やグラフが出題されたときに、その着眼点や背景知識を適切に使うことで、根拠を持って設問に答えることができるはずです。これは、定期試験の対策につながることはもちろん、入試対策にもつながるので必ず行ってほしい作業です。
最後に、地図帳の確認も欠かせません。授業中に確認した国や都市、河川、山脈などの重要な地理情報を再度チェックしましょう。特に教科書やノートに記載されている地名や国名が地図上のどこに位置するかを把握しておくことが大切です。定期試験では、地図を用いて位置を答える問題が頻出ですので、確実に対策しておきましょう。
テスト当日は、落ち着いて考える
地理の定期試験当日、問題を解く際には、まず落ち着いて考えることが重要です。定期試験では、あらかじめ範囲が指定されており、基本的には覚えてきた内容を問う設問が中心です。しかし、中には事前に覚えていないような内容が含まれることもあります。しかし、これらの問題は決して皆さんを困らせるための意地悪なものではありません。むしろ、授業で学んだ知識を活用し、初めて見る情報から答えを導く力を試すために設けられているのです。
そのため、試験中に知らない問題に出くわしても焦らないことが大切です。「知らない問題が出た」という状況は、自分の持っている知識を使って解決することが求められているというサインです。こうした問題に対しては、「授業で学んだ知識を使えば解ける」と自信を持ち、落ち着いて取り組むことがポイントです。
共通テスト2021年度地理Bで出題されたこちらの設問は、初めて見る仮想的な大陸が描かれているため、何を根拠に考えればいいのかわからず、戸惑ってしまう人も多いと思います。しかし、気候因子として隔海度以外にも緯度や標高、海流などがあることを授業では必ず習っているはずです。その点をふまえれば、そこまで特別な知識を使わずとも、答えを導き出せる設問であることに気付けるはずです。
また、資料や図表の読み取り問題でも、冷静さが求められます。まず、資料にどのような情報が書かれているのか、設問では何を読み取ることが求められているのかをしっかり把握しましょう。特に設問文や注釈に読み落としている情報はないか、丁寧にチェックすることが重要です。落ち着いて分析することで、正しい答えにたどり着くことができます。
試験当日は、どんな状況でも慌てずに、自分の力を信じて問題に取り組むことが成功のカギです。
大学受験のための地理の勉強はいつから始めれば良い?
大学受験において、地理は文系・理系問わず多くの受験生が選択する科目です。しかし、いつから学習を始めるべきか、他教科とのバランスをどう取るべきかは、自分の志望校や学部、そして試験形式など、個々の状況によって異なります。
地理だけのことを考えるのであれば、早くから開始することに越したことはありませんが、他教科との兼ね合いで地理の学習が後回しになることもあると思います。ここでは、少なくともいつから開始すれば間に合うかという観点で考えてみたいと思います。
理系で地理を共通テストのみで使う場合、目標得点が7割程度であれば、高校3年生の夏からでも間に合う可能性があります。ただし、この場合、他の科目、特に主要な理系科目の学習が既に十分に仕上がっていることが必要です。理系科目の勉強に時間を取られることを考慮すると、地理の勉強を遅くとも高校3年生の4月には始めておくと安心です。そうすることで、他の科目と並行して地理の基礎を固め、夏以降に余裕を持って学習を進めることができます。
一方、文系の受験生で、地理を共通テストだけでなく、私立大学や国公立大学の二次試験でも使用する場合、より早めの準備が必要です。理想的には高校2年生の夏から地理の勉強を開始し、基礎固めに取り組むことをおすすめします。地理は幅広い知識が求められるため、遅くとも高校2年生の冬までには基本的な学習を始めておくことが望ましいです。高校3年生の4月には、系統地理と地誌の内容を一通り学び終え、その後は志望校の過去問演習や試験対策に集中できる状態にするのが理想的です。
何度もお伝えしているように、地理は暗記だけでなく、理解と分析が重要な科目です。計画的に学習を進めることで、入試本番での得点力を高めることができます。自分の進路や目標に合わせて、無理のない学習スケジュールを立てることが成功への第一歩です。
共通テストの地理対策
ここからは、新課程の導入や出題傾向の変化に対する不安を解消し、効率的かつ効果的な対策方法を紹介します。特に、国際問題や持続可能な社会の視点を強調する新たな出題形式に対応するためには、地理的視点を活かした思考力が不可欠です。過去問の活用や資料の読み取り方法、時間配分のポイントなども踏まえ、着実に得点力を伸ばすための実践的なアドバイスを提供します。
共テでの地理の出題傾向は?
共通テストの地理に関して、新課程の導入で出題傾向が変わることに不安を感じている人もいるでしょう。試作問題を見る限り、地理総合・地理探究への移行により、特に国際問題や持続可能な社会の視点が強調されている点が新しい特徴と言えます。これらは、単なる知識の暗記ではなく、地理的視点を活用して現代社会を考察する力が求められる内容です。
試作問題では、以下のように国際的に問題となっている難民の受入れ先に関する設問が出題されています。近年の国際情勢をふまえつつ、難民問題への理解を深めていることが求められる出題となっています。
ただし、心配する必要はありません。新課程への移行で学習の方針が大きく変わるわけではなく、過去問が無用になるような大幅な変更もないと予想されます。これまで通り、地理の学習においては、丸暗記に頼らず思考力を養うことが肝心です。例えば、ある国の気候や地形だけを覚えるのではなく、その背景にある自然環境や人々の生活、さらには世界的な動きとの関連性までを理解する姿勢が必要です。
また、これまでと同様に、資料や図表、統計データの読み取りが重要視される点も変わりません。地形図や気候グラフ、統計資料を活用した問題は今後も出題されると考えられます。これに対応するためには、日頃からさまざまな資料に触れ、実際のデータを基に分析・考察する練習を積むことが重要です。決して焦ることなく、これまでの学習方法をベースに、新しい傾向にも少しずつ対応していきましょう。
時間を意識しながら、過去問を進める
地理の共通テスト対策として、過去問演習を行う際は、時間配分を意識することが非常に重要です。
試験時間は60分で、大問が6つ出題されます。単純に各大問に10分ずつ使える計算ですが、実際の問題量に合わせて調整が必要です。第1問と第2問は比較的問題数が少ないため、1問あたり5~6分程度を目安に進めましょう。逆に第6問は分量が多いため、15分を目標に解くとバランスが取れます。残りの大問は10分以内で解けるように練習しておきましょう。
また、共通テストにおける地理の特徴として、資料読み取りの問題が多く、ここで時間を費やしてしまうケースが少なくありません。特に、共通テストでは資料の量が多いため、効率よく処理する力が求められます。そこで、まずは設問をしっかり読み、何を問われているのかを確認してから、必要な情報だけを資料から拾い上げるようにしましょう。設問に目を通すことで、どの資料が重要なのかがわかり、読み取るべきポイントが明確になるため、無駄な時間を使わずに済みます。
過去問を使った演習の際に、ぜひこの方法を試してみてください。時間内に解く練習を繰り返すことで、試験本番でも落ち着いて取り組めるようになります。
8割、9割の正答率を目指すなら……
共通テストの地理で8割、9割の正答率を狙うために必要なのは、「苦手な単元をなくすこと」と「過去問演習を繰り返すこと」の2点です。特に、得点が8割に届かない場合は、まず苦手な分野を見極め、それを重点的に克服していくことが大切です。
苦手分野の克服には、単元を細かく分けてくれる教材を活用すると効果的です。例えば、『地理重要用語・地名1500 チェック問題集』は主要国編・用語編・統計指標編・地名編など、単元を細かく分類して掲載してくれているので、自分の弱点に絞って効率よく学習が進められます。まずは、苦手な部分を丁寧に潰していくことが、得点力アップへの第一歩です。
次に、過去問演習を繰り返し行いましょう。共通テストの地理では、数年おきに似たようなテーマや知識が出題される傾向があります。過去問を解くことで、そのパターンに慣れ、試験での対応力を高めることができます。過去問演習は、知識を確認しつつ出題傾向を掴む絶好の機会です。1回解いた問題であっても、繰り返し解く意義は十分にあります。過去10年分の過去問を2周することを目安に、計画的に解き進めていきましょう。しっかりと対策を進め、自信を持って本番に臨んでください。
東大、京大、早慶、難関大学の入試問題の対策法
大学受験の地理対策は、大学ごとに異なる出題傾向を把握し、それに応じた学習を進めることが重要です。過去問を活用し、各大学の傾向に沿った実践的な学習を進めましょう。
東大の地理は網羅的な学習と過去問演習が必須
東大地理の対策を進める際、最も重要なポイントは、「網羅的な学習」です。東大地理では、非常に幅広い分野からの出題が見られます。特に、近年は基礎的な知識を問う単答問題が増えているため、教科書レベルの知識を確実に身につけ、基本問題でミスをしないことが合格への鍵となります。
また、東大地理の特徴として、資料の読み取り問題が頻出である点と、60字以内でまとめる記述問題が多く出題される点が挙げられます。資料の読み取り問題では、受験生が初めて目にする資料や統計データをもとに考察を求められますが、焦る必要はありません。大学受験一般レベルの知識があれば、冷静に資料を分析し、自分の持っている知識と組み合わせて解答を導き出すことが可能です。さらに、60字以内で答える記述問題は、地理の専門用語を正確に使い、設問で要求されている条件を満たしつつ、限られた字数内で的確な表現をする力が必要です。
これらの特徴に対応できる力を養うためには、過去問演習が最も効率的です。『東大入試詳解25年 地理』を活用し、25年分の過去問を解くことを推奨します。古い年度の問題に関しては、時代背景やデータが最新ではないため、少し違和感を覚えるかもしれません。しかし、出題傾向そのものは大きく変化していないため、古い年度の問題にも取り組むことで、多様なパターンの問題に対応できるようになります。
京大の地理は基本用語の定着と地形図の読み取りがカギ
京大の地理では、特に基礎的な知識をしっかりと押さえることが重要です。空欄補充形式で基本的な地名や地理用語を問う設問が大問ごとに出題され、ここは確実に得点したいところだからです。また、資料の読み取り問題が頻出で、読み取った内容が合っていることを前提にその後に続く論述問題に答える必要があるため、読み取り問題を間違えてしまうと芋づる式に論述問題まで間違えてしまいます。読み取り問題への対応は必ず訓練しておきましょう。なお、論述問題は頻出ですが、字数は比較的短い傾向にあります。20〜50字以内で要点を的確に説明する能力が求められるため、簡潔で正確な表現力を養うことが重要です。地理用語を正しく理解した上で、短い文章で正確に表現する練習をしておきましょう。
また、地形図の読み取り問題も頻繁に出題されます。特に、新旧の地形図を比較し、地形や都市の発展の違いを読み取る力が問われることが多いです。こうした問題では、都市の開発や災害対策による地形の変化や、都市の発展に伴う土地利用の変化を理解しておくことが役立つでしょう。
さらに、論述問題も多く出題されますが、字数は比較的短い傾向にあります。20〜50字以内で要点を的確に説明する能力が求められるため、簡潔で正確な表現力を養うことが重要です。地理用語を正しく理解した上で、短い文章で正確に表現する練習をしておきましょう。
このような特徴をふまえ、京大の地理の対策を進めていくには、過去問や『2025-京都大学への地理歴史』を利用して実践的な演習を積み重ねることが不可欠です。基礎知識の補充を続けつつ、実践的な演習を通して京大地理の出題傾向に慣れていきましょう。
早稲田大の地理問題は自分の頭の中に地図が書けるか
早稲田大学の地理対策を考える際、最も重要なのは「頭の中に地図を描けるか」という点です。早稲田大の地理問題では、地図が掲載されていないにもかかわらず、経度や緯度、都市、河川、山脈などの正確な位置を問う問題が多く出題されます。
このような問題に対応するためには、普段から白地図を使って学習することが不可欠です。具体的には、緯度や経度、各大陸や地域の主要都市や河川、山脈などを自分で書き込みながら、地図の特徴を頭に叩き込む作業が重要です。実際に手を動かして地図を描くことで、地理的な空間認識が身につき、頭の中で地図を再現する力が強化されます。
また、早稲田大の地理では、大問4つすべてが「地誌」に関する問題です。これは特定の地域の地理や特徴を問うものですが、特にヨーロッパやアフリカが出題される傾向があります。ただし、出題範囲は広く、複数の地域にまたがる問題も頻出です。たとえば「アジアの世界遺産」や「世界や日本の湖沼」といった複合的な問題もよく見られます。
近年になって日本地理に関する知識が出題されるようになったことからも、どの地域も満遍なく学習しておくことが重要です。特定の地域に偏らず、ヨーロッパ、アフリカだけでなく、南北アメリカ、アジア、そして日本全体に関しても、白地図を活用しながら徹底的に理解を深めることが合格への近道です。
慶應大の地理は、記述回答対策も
慶應義塾大学の地理は、他大学と比べて特徴的な問題形式が見られます。特に、空欄補充問題と記述問題がその代表例です。空欄補充問題では、空欄の数に対して非常に多くの語群が提示されるため、知識自体はそれほど難しくなくても、正解を導き出すのに時間がかかることがあります。そこで、語群に並んでいる用語に頼りすぎず、空欄を見ただけである程度適切な語句が予測できるよう、基本的な知識をしっかり身につけることが大切です。
さらに、慶應大の地理では記述問題が毎回出題されます。記述問題は大きく2つに分かれ、1つは地理用語を端的に答える単答問題、もう1つは地理用語の説明や現象の理由を20〜50字で述べるものです。単答問題では、普段から地理用語を正確に漢字で書けるように訓練しておきましょう。一方、記述問題では、用語の定義や現象の原因を的確に説明できるかが求められます。日頃から用語集や参考書を活用し、地理用語の定義や重要な現象の理由を確認する習慣を身につけましょう。
このように、慶應大の地理では空欄補充だけでなく、記述問題への対策も必要不可欠です。普段から自分の手を動かし、正確に地理用語を書くことと、定義や原因を説明することの2点を重点的に扱っていきましょう。
私大の個別試験対策の基本
私大の個別試験対策では、幅広い分野の知識を正確に習得することが求められます。系統地理・地誌を問わず、どのジャンルからもバランスよく出題されるのが一般的です。そのため、特定の分野を苦手にしないよう、全ての分野についてしっかり学習しておくことが大切です。
さらに、私大の地理試験では、地図や統計資料を用いた問題がよく出されます。例えば、世界地図や日本地図をもとにして、気候区分や産業の分布を読み取る問題や、統計データから国別の人口推移や経済成長を分析する問題などが典型です。このような資料の読み取りに慣れるためには、日々問題集や過去問を使って実践的な訓練を行い、素早く正確に情報を解釈できるスキルを磨いておく必要があります。
また、論述問題が出題される私大も多くあります。これらの論述は100字に満たない程度の短いものが一般的ですが、地理用語の定義や、気候変動や都市化などの地理的現象の原因・背景を簡潔に説明できる力が試されます。用語の意味を暗記するだけでなく、その背景にある理論や現象を理解し、自分の言葉で説明できるようにしましょう。
私大の地理試験で合格を勝ち取るためには、広範な知識と資料分析力、そして論述力をバランスよく養うことが欠かせません。
穴のない知識に思考力が問われる地理
地理の大学受験対策では、単なる暗記に頼るだけでは不十分です。国公立大学の論述問題に限らず、共通テストや私立大学の選択問題でも、思考力が問われる場面が増えています。例えば、地形図や統計データ、グラフを読み解き、そこから適切な答えを導き出す問題が多く出題されます。そのため、系統地理や地誌に偏らず、幅広い分野の知識を身につけることが大切です。また、時事問題にも注意を払い、日頃から演習を通して資料を読み取る力を養うことが必要です。
このような入試問題に対応するためには、問題演習を通じて、資料や図表を的確に読み取る訓練を重ねることが大切です。しっかりと知識を積み上げながら、思考力を鍛えることで、試験本番でも自信を持って答えられるようになるでしょう。