執筆:八尾直輝
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長
数学は大学入試で差がつきやすい教科です。理系はもちろん、文系でも数学が合否を決めることは少なくありません。一朝一夕で伸びづらい教科ですが、その分よい勉強のやり方を身につけることができれば、ライバルに差をつけることができます。自分に合った正しい勉強のやり方を学んでいきましょう。
大学入試における数学の重要性は、理系・文系を問わず、受験生にとって無視できないものです。また最近は文系学部でも数学が必須になったり、数学受験が可能になったりする流れがあります。苦手であっても数学に向き合わなくてはならないことも増えるでしょう。数学の学習に関する考え方を見ていきましょう。
数学はセンスに依存すると考えられがちな教科です。確かに難しい記号や、華麗な解法を見ると、「とても自分にはできそうにない…」と感じてしまうこともあるかもしれません。しかし多くの場合、適切な努力を継続することで大学受験に通用する数学力をつけることは可能です。大学入試で出題される数学は広範囲といえ、習得が不可能な量ではありません。
数学は、「知った後」と「知る前」で大きく景色が変わるという特徴があります。例えば、 f(x)が奇関数ならば、
が成立する。
という性質は、理解する前は難解な数式のように見えますが、理解すれば「なんてことない」と感じられるでしょう。同じように、「数学はセンス」と今感じていたとしても、身についた後は、「なんだこんなものだ」と感じる可能性もあると思って、今後の学習に取り組んでもらえればと思います。
食べたものが吸収され身体の一部になるように、数学の学習は新しい未知の知識を自分の既有知識と関連させ、有機的につなげることです。新しい知識を取り込むという意味では「数学は暗記科目だ」ということもできますが、複数の臓器が有機的に機能するように、取り込まれた知識はつながってなければ数学の力を伸ばすことにはなりません。そういう意味で、「数学は暗記科目ではない」ということもできます。
新しい知識を取り込む際には、自分の既有知識のどの部分につなげるかが重要です。適切な場所につなげることができなければ、その知識は有機的に機能することなく、忘れ去られてしまうでしょう。そういう意味で、数学は暗記も重要ですが、暗記のやり方がより重要になると考えるのがよいでしょう。
数学が得意な人は理系・苦手な人は文系といった文理選択をする人は少なくありません。確かに数学が苦手で理系を選択するのは、大学受験においては不利にはたらくことが多いものです。進路選択は自分の希望に沿って決定するべきですが、受験戦略に限定するのであれば、数学の得意・不得意で文理を決定するのは悪い判断ではありません。
しかし「得意・不得意」は相対的なものです。文理選択時に数学の成績上位者が、理系のなかでも成績上位になるわけではないのです。逆も然りで、数学が得意でないと思っていた人も、文系受験では数学が武器になることもあります。昨今、文系学部でも数学で受験できる学部が増える傾向があります。そういう意味では、「数学が苦手で文系を選択した」人こと、数学に真剣に取り組み、苦手を克服することが大学受験の合格につながる可能性を秘めていると言えます。
ここからは数学が苦手な人向けに、基礎からの学び直しのやり方を解説します。数学は積み上げの学問なので、基礎の理解不足は致命的です。普段の学習のやり方から改善を進めていきましょう。
中学数学が不安な人は、必ず戻って再学習しましょう。数学は積み重ねが大切な学問です。急がば回れそのもので、中学数学に戻って学習することが最終的に数学の学力向上につながります。
全体的に不安がある人は、「総復習」系の問題集に取り組むのがよいでしょう。戻り学習は期限を決め、そのなかで計画的に取り組むべきです。復習の過程で特に苦手な単元が見つかった場合は、その単元に特化して復習するのもよいでしょう。復習すべき単元が明確な場合は、問題集に取り組むだけではなく、教科書やオンデマンドの映像授業なども活用するのがよいでしょう。
言うまでもないことですが、数学は公式が重要です。その理由は2つあります。
前者は言わずもがなです。公式を習得していなくては問題を解くことはできません。見落としがちなのが後者の視点です。「公式」とは、数学の議論を積み重ねていくなかで、「何度も出てくる性質や解き方」をまとめたものです。「公式」を深く理解することは、数学の体系の重要部分を理解することにつながるのです。
そういう意味で、公式の学習では、
この2点を特に丁寧に学習する必要があります。
公式が出てきたら、関連する問題を解き、公式を使えるようになりましょう。ある程度その公式の意味がわかったら、公式の証明を学び、いつでも自分で再現できるようにしておきましょう。数学が得意な人は、先に証明から取り組んでも構いませんが、公式の証明は難しいことも少なくないので、先に使えるようになった後に、証明を深く学ぶのがおすすめです。
数学の学習は問題演習が命です。いくら参考書や教科書の内容が理解できたとしても、問題が解けなければ意味がないからです。逆に問題を解く過程で基礎事項の理解が深まることも多いので、「ある程度理解したら、問題を解く」くらいのスタンスで、積極的に問題を解く姿勢が求められます。
また解答解説を読むこともとても大切です。数学は結論の値だけではなく、その導出過程の論理を大切にする学問です。たとえ正しい結論が得られたときも、必ず解答解説を読み、自分の見落としている点はないか、より良い考え方はないか確認するようにします。
問題演習では、「演習ノート」「復習ノート」の2冊を用意し、この図のように、「◯△✕管理」をするのがおすすめです。
◯…自力で解けた
△…解答解説を読めば理解できた
✕…解答解説を読んでも理解できなかった
このように分類し、問題集1冊の理解を完璧になるまで丁寧に取り組みましょう。
「◯△✕管理」の本質は、△と✕の取り組みにあります。勉強はできないことをできるようにすることです。「◯」の問題を繰り返したり、「△」や「✕」の問題の解説を読むだけにしていたりでは、成績は向上しません。適切な「△」や「✕」の問題への取り組み方を見ていきましょう。
「△」の問題は自分で解き直すことが重要です。解答解説は、一行ずつ丁寧に読み、具体的に間違えた部分を明らかにします。丁寧に読むために、解答解説を紙で隠し、一行ずつ紙をずらしながら読むことで、理解できていない部分を特定しやすくできます。
解説には積極的に書き込み、自分の理解を深めましょう。色づかいも工夫し、自分なりに解答解説を「使い倒す」ことを目指してください。
解答解説を読んでも、理解できない問題は「✕」に分類されます。先生や友人に質問をして解決する必要があります。問題集に印をつけたり、ふせんを貼ったりして、忘れず質問する仕組みを作りましょう。漫然と「わかりません」と質問するのではなく、解答解説の「わからない」部分を具体的に聞けると良いでしょう。
決まった曜日・時間に先生に質問をしに行くなど、定期的に「✕」の問題を処理する習慣を作りましょう。友人がいるとお互い教え合いをするのも、とても効果的な学習になります。理解できたら必ず復習ノートに解き直しをするようにしてください。
関連リンク:復習予約ふせん
数多くの人が「確率」を苦手としています。これは大学受験においても頻繁に出題される範囲であるため、早期にこの苦手意識を克服したい領域です。
確率が苦手な方は、まずは「場合の数」の学習から始めることをおすすめします。確率は基本的に、2つの場合の数の比率を分数形式で示したものです。したがって、場合の数を理解していないと、確率を理解することはできません。
基礎からしっかりと復習するために、適切な参考書や問題集を用意しましょう。場合の数を学ぶ基本は「数える」ことにあります。時には非効率に感じるかもしれませんが、一つひとつ丁寧に数え上げることが重要です。全てを抜け漏れなく数え上げる能力がなければ、それ以降の学習を進めることは難しいでしょう。
数え上げの基本ができるようになったら、次は参考書で基本公式の理解を深めてください。例えば、順列の数を計算するPや組み合わせの数を計算するCなどの場合の数の公式を、意味を理解し、自分の言葉で説明できるようになりましょう。これらの基本をしっかりと理解していれば、他の定理や公式の理解も容易になります。
十分に参考書で学んだ後は、実際に問題集を使用して演習を行います。問題集では問題が学びやすい順序に配置されているため、解法が予測しやすくなることがありますが、試験では問題がランダムに出題されるため、解法を予測することはできません。
例えば以下の2問は、問題文がほぼ同じでも、解き方が異なります。
「A・B・Cを使って3文字の文字列は何通り作れるか。ただし、同じ文字を1回しか使用できない。」
「A・B・Cを使って3文字の文字列は何通り作れるか。ただし、同じ文字を何度でも使用してよい。」
このように、「場合の数」の問題は表面上似ていても、解法が全く異なることがあります。適切な解法を自分で選択する力を養うためにも、基礎から丁寧に学び直すことが大切です。
記述の答案の書き方で悩む人は少なくありません。理解できていても書き方がわからなかったり、しっかりと書けたと思っても試験では減点されたりという経験をしたことがある人は少なくないでしょう。記述問題に強くなるためにはどうしたらいいのでしょうか。
記述力は一朝一夕で身につくものではありません。記述力には表現力はもちろん、根本的な数学の理解や、論理構成・解法選択など、数学の総合力が必要になるからです。普段の取り組みを見直し、日々記述力を伸ばすことを心がけましょう。
以下が「記述力向上のチェックリスト」です。ぜひ参考にしてみてください。
数学の学習の基本は問題演習です。それは定期テスト対策でも変わりません。
まず数学の授業日には毎日復習しましょう。10分程度で構いませんので、授業のポイントとなる問題を自力で解いたり、証明したりしましょう。重要なのは教科書の説明を「読む」のではなく、自力で「解く」ことです。自分で思い出したり考えたりすることで、数学への理解は深まります。
また授業の復習とは別に、可能な限り毎日問題演習に取り組みましょう。1日3問解く習慣があれば、試験範囲の学習を終わらせることは難しくありません。数学は積み重ねが重要な学問です。試験前にまとめて解くのではなく、日々コツコツ取り組む習慣を身につける努力をしてください。
たとえば、以下のような学習習慣をつくることができると完璧です。
人によって部活動などの予定も踏まえ、自分なりのルーティンになるようにカスタマイズしてみてください。
数学にミスはつきものです。計算ミスをしたことがない人はいないでしょう。仕方のないミスは「人為的ミス(ヒューマンエラー)」と言われます。人間は機械ではないので、ある程度ミスが生じるのは自然なことです。しかし、ミスを減らすことは可能です。
大切なのは「ミス」と言いたくなるものが、本当にミスなのかを検証する姿勢です。生徒目線では「ミス」と思っていることが、講師目線ではミスではなく、原因があると感じることは少なくありません。1つ目は内容の未定着が原因になっているケースです。自分で理解したつもりになっているものの、適切に知識が定着していないことで、生徒本人はミスを感じてしまうことがあるようです。2つ目は複雑な解法を選択してしまうことによって生じるミスです。ミスが少ない人は、そもそもミスが起こりづらい解法や計算方法を選択します。ミスで済ませるのではなく、常に模範解答からよりよい解法や計算方法を学ぶ姿勢が必要なのです。
またミスに気付く力も重要です。解が適切ではないことに気付くことは、数学の大きな力の1つです。ときおり小中学生の解答で「太郎くんの歩く速さ」が「時速120km」など、現実的にありえないものを見かけますが、こういう明らかに不適切な解答に気付く力は、高校数学でも必要です。「明らかに条件に適さない」「整数になるはずがない」「代入しても成立しない」など、ミスに気付くポイントを多くもつことが、ミスを防ぐのに有効です。
ミスは繰り返してしまうものです。自分のミスの傾向を知ることが、「ミスに気付く」ことにつながります。ミスをふせんにまとめ、ノートに貼ることで自分のミスを自覚しやすくなります。このやり方を「ミスらんノート」と呼びます。
ミスらんノートの例
ミスを発見したら、ふせんに「自分の解答」「正しい解答」「注意点」の3つをまとめ、ノートの裏表紙に貼ります。ノートを開くたびに確認することで、自分のミスの傾向に自覚的になることができます。
ふせんの記入例
ふせんは貼ったりはがしたりできます。ノートを変えるときはふせんも移動させたり、克服したミスはふせんをはがしたりしながら、ミスを減らす努力を継続していきましょう。
関連リンク:ミスらんノート
共通テストは教科書範囲の基礎事項からの出題です。しかしあなどることはできません。特に数学は時間制限も厳しく、難問も出題されます。普段の学習に加え、適切に傾向をつかみ、対策することが必要不可欠です。
文系の数学対策は共通テストがメインになります。二次試験(個別学力試験)で数学を利用しない人は、夏以降は共通テストの対策に特化して進めましょう。
まず目標点を決めましょう。試験の難易度に左右される部分も大きいですが、合格に必要な得点を逆算し、目標を明確にしておくことで対策の方針が明確になります。たとえば70点を目指すのであれば、各大問の最後で出題されがちな難問は「飛ばす」ことも有力な選択肢になります。
夏以降は月に2~3セット本試験形式の演習をし、時間配分に慣れていきましょう。その場で自己採点し、目標点との差分から戦略を見直します。苦手な単元が見つかれば、その都度教科書・問題集に戻り着実に克服することを心がけてください。
目標点との差が20点以上ある場合は、対策と傾向の前に基礎事項の復習が必要です。焦る気持ちを抑え、最長で11月まで適切な問題集を用いて、演習を重ねてください。逆に12月以降は本番形式の対策に以降し、形式に慣れることを優先してください。
理系の数学の共通テスト対策は、二次試験(個別学力試験)との兼ね合いが重要です。特に二次試験では共通テストに出題されない数学Ⅲや、記述問題の対策も必要です。共通テストの対策は可能な限り前倒しし、二次試験の対策のウエイトを増やしていく必要があります。理系の人は高2までにある程度共通テストレベルをクリアしておく必要があります。
高3では、5月~夏の共通テスト型の模擬試験で、自分の目標とする得点(偏差値)をクリアし、それ以降は二次試験対策メインに切り替えるのが理想です。二次試験レベルの対策を基本にしつつ、模試を受験したり、共通テスト型の演習を適宜取り入れることで、共通テスト対策が疎かにならないようにしないようにしましょう。共通テストは時間配分やマーク式など「慣れ」が重要です。長く共通テスト型の試験から離れることがないようにしてください。
二次試験対策メインの人も、12月以降は共通テスト対策の割合を増やしましょう。国公立大学入試では共通テストの比重が大きい大学も多く、共通テストの失敗は致命的です。繰り返し演習することで、安定して目標点をクリアできる状態を目指します。一方で難関大学受験生は共通テストの割合がさほど大きくなく、二次試験対策も重視して進める必要があるときもあります。共通テストが近づくとその対策に傾倒しがちですが、二次試験まで含め適切なバランスを保つことが重要です。個人の状況によって最適バランスは異なりますので、困った時は経験のある先生に相談することをおすすめします。
難関大の受験では数学が合否を分けることも少なくありません。難関大に合格するためには、1つ上のレベルの取り組みが必要です。東大・京大・医学部の受験対策を見ていきましょう。(※東工大は2024年10月から「東京科学大学」になるため、今後の傾向については変更の可能性あり。)
難関大受験はハイレベルな争いになります。1点が合否を分けることも多く、基礎問題の取りこぼしは致命的です。逆に言うと、難関大入試の「難問」はあまり差がつかず、基礎問題をしっかりと得点できていれば、多少の出遅れは他教科で取り返すことも可能とも言えます。
難関大受験生であれば、基礎問題を解くことができる人がほとんどです。試験会場で解けなくても、後から解答を見れば「解けたはず」と感じることが多いでしょう。計算ミスなどのミスも含め、「解けたはず」を「確実に解く」ことが重要なのです。
そのためには普段から良い取り組みをする必要があります。以下の2つの観点から普段の学習を振り返ってみてください。
計算は、正解するまで何回でも自分で手を動かして解くようにします。立式できれば「後は時間の問題」と感じ、計算を省略したくなる気持ちはわかりますが、意外な落とし穴が潜んでいることも少なくありません。普段の学習から手を抜かず計算することで、このような落とし穴に気付き、対応することが可能になります。
また間違えた理由を普段から明らかにする習慣も大切です。特に難関大の問題は複数の解法が考えられ、模範解答と自分の解法が異なることも多々あります。解答と照らし合わせるだけでは自分の間違いがわからず、間違いの原因を明らかにしないまま、模範解答を理解するまでの学習に終始しがちなのです。少し手間はかかりますが、必ず自分の間違いの原因を明らかにするようにしましょう。自分ひとりで解決できないときは、先生や友人に質問して解決してください。
正答率の低い問題は大きく2つに分けられます。
前者はいわゆる「難問」で、数学の先生も苦戦することがあります。一見するだけでは解法の指針が立たず、解き始める前に試行錯誤が求められます。「ひらめき」が必要なときもあり、語弊を恐れずに言うなら、正解できるかどうかは「運」の要素も関わってくるような問題です。
一方で後者に該当する問題も少なくありません。知らない人から見ると超難問に見える問題も、知っている人から見ると(ある程度)容易に解法の方針が立ったり、正解できる問題も意外と多いものです。
これは現代文に似ています。「むかしむかしあるところに…」と書き出された昔ばなしが、結局ハッピーエンドで終わることを多くの日本人は予想できます。これは読解力があるからではなく、「パターンを知っている」からです。
現代文の基本は出題された文章を丁寧に読むことですが、それとは別に「パターン(テーマ)を知っている」ことが正確な読解に寄与することがあります。例えば「身体論」など、特定のテーマにはある程度決まったパターンで論理が展開されることがあるので、「丁寧に文章を読む」のに加え、「きっとこういう展開になるはず」という予想をしながら読むことで文章理解が深まるのです。
数学もこれと同じです。そして入試においてはこの「知識があれば解ける難問」が正解できれば、ほとんどの場合、合格ラインに到達します。必要なのは「テーマを知る」ことであり、例えば「有名不等式」「必要条件からの絞り込み」といったテーマごとのパターンを身につけていくことなのです。
まずは数多くの問題を解くことが対策の基本になります。多くの問題を解く経験がなければそもそもパターン化することはできないからです。そして繰り返しになりますが、模範解答の解法を徹底的に理解しましょう。時には模範解答の解法選択が不自然に感じることもあるかと思いますが、それは「テーマ」を知らないからであり、多くの場合それは「テーマ」を知っている人にとっては自然な解法です。正解/不正解だけではなく、問題のテーマを読み取るレベルの学習が、難問を解くことにつながるのです。
過去問への取り組み方は個人によって異なります。数年分の過去問で満足する人もいれば、20~30年分を解く人もいます。これは、学習進度、受験する大学の数、志望校の優先順位などによって左右されます。過去問の取り組みがなぜ重要なのかを理解し、自分に適した方法を見つけることが大切です。
過去問に取り組む意義は主に2つです。
過去問を解くことで出題傾向や難易度を知ることができます。確かに「まとめサイト」などで情報を得ることも可能ですが、実際に問題を直接見て解くことで、初めて気づくこともあります。受験生は遅くとも夏までに過去1年分の問題を確認しておくと良いでしょう。「記述力が重視される」「計算の正確性と速さが求められる」など、実際に体験することで、日頃の学習への意識が変わります。
また、本番に向けたシミュレーションも過去問をやりこむ大きな意義です。特に数学では、試験時間を有効に使う戦略が求められます。問題の難易度を見極め、解くべき順序を決定する能力は、日常の練習では身に付けにくいものです。
ただし、数学に限って言えば、出題傾向の変動幅は大きくありません。違う大学でも似たような出題形式であることも多く、大量の過去問を解くメリットが比較的小さい教科と言えるでしょう。それでも、難関大のなかにも一部の大学では特徴的な出題をする大学があるので、早めに出題傾向をつかんでおくことが大切です。
模試は、自分の学力を測る貴重な機会です。模試を最大限に活用するためには、以下の二点に留意して対策を進めることが重要です。
まず、目標を明確に設定します。例えば、「数学の偏差値を60にする」といった具体的な目標を立て、達成のために必要な対策を考えます。重要なのは、実現可能な学習計画を立てることです。模試は通常、既習内容全体から出題されるため、全てを復習するのは現実的ではありません。そのため、模試を苦手分野を克服する機会と捉え、「確率の基礎から復習する」や「数学I・Aの公式の証明を完璧にする」など、自分に合ったテーマを設定し、実行可能な範囲の課題を決めましょう。
課題設定は、具体的な問題集の問題番号を指定することで定量化します。例えば、「◯◯問題集の1-30問」とすることで、取り組むべき課題を明確にし、効率的な学習が可能になります。問題の選択に迷った際は、先生に相談すると良いでしょう。
模試対策は、普段の学習とのバランスを取りながら進めることが求められます。予習・復習も必要なため、限られた時間の中で効率的に取り組む必要があります。模試対策を後回しにしてしまう生徒も少なくありませんが、例えば「平日は30分、週末は1時間」といった具体的な時間を設け、日常学習より優先して取り組むと良いでしょう。
最後に、模試の出題傾向を事前に把握しておきます。可能であれば過去問を手に入れ、実際に解いてみることを推奨します。問題集や小問集合、試験の形式や制限時間などを事前に理解しておくことで、実際の試験で最大限の力を発揮することができるでしょう。
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先にも書いた通り、数学は問題演習が命です。自分に合った問題集を選ぶことが、そのまま実力向上につながります。特に以下に留意して選ぶようにしてください。
もっとも大切なのは自分のレベルに適したものを選ぶことです。難しすぎず、易しすぎず、初見の正答率が5割程度を基準に選ぶとよいでしょう。
問題集が自分の目的に合致しているかを確認しましょう。数学の問題集は大きく分けて、以下の3つに大別して考えるとわかりやすいです。
初学時に用いる基礎事項の定着のための問題集。単元別に、基礎事項を網羅している問題集です。特定の公式や解法の定着を目指すための、シンプルな問題が載っています。
入試対策の入口に用いる標準レベルの問題集。基礎事項の活用を学ぶ問題集です。問題を見て、適切な解法選択をする力を育みます。
入試対策の完成に用いる発展レベルの問題集。実際の入試問題など、複数の単元の融合問題です。一見して解法がわからないものも多く、試行錯誤するなかで正解にたどり着く実戦力を磨きます。
解答解説は問題集によって大きく異なります。自分に合ったものを選ぶようにしましょう。シンプルに解答が載っているものから、複数の別解、さらには背景知識や類題にまで触れる問題集もあります。また解説も、一行一行丁寧に書かれているものもあれば、行間を省略した上級者向けのものまであります。相性も出る部分なので、実際に書店でいくつかの問題集の解説のスタイルを確認し、自分に合ったものを選ぶことをお勧めします。
夏休みなどの長期休暇は、復習とさらなる実力アップの大チャンスです。しかし、何から手を付ければよいのか具体的な計画を立てるのは意外と難しいもの。多くの学生がこの貴重な時間を十分に活用できずにいます。ここでは、夏休みを最大限に活用するための具体策を紹介します。
夏休みは大学受験をするすべての人にとって重要な時期です。学期中は普段の学習に追われてできないことに取り組むことができるからです。また決まったルーティンがない分、自分で計画的に学習する必要があり、差がつきやすいという点にも留意しておく必要があります。
夏休みに取り組むべき重点項目は次の3つです。
1つ目は苦手単元を克服することです。前期(1学期)の苦手をすべて克服しておきましょう。夏休みの前にやるべきことを漏れなくリスト化し、具体的な学習計画を立てておきます。問題演習であれば、具体的に取り組むべき問題数を具体化しておきましょう。必要に応じて参考書や映像授業を用いた戻り学習も取り入れます。
2つ目は網羅的な演習で総復習をすることです。通常の学期では、各単元に特化した学習が主となります。夏休みには総合的な演習を通じて、学習全体の理解を深めましょう。一つの問題集を完全に理解することを目指し、毎日少しずつでも取り組むことが重要です。
3つ目は発展的な内容に挑戦することです。基礎学習が順調に進んでいる場合は、さらに高度な内容に挑戦してみましょう。入試レベルの問題に取り組む、発展的な講習に参加するなど、方法はさまざまです。また、実力試しとして過去問に挑むのも良いでしょう。入試の傾向を早期に把握することで、夏休み後の学習計画をより効果的に立てられます。
模試や定期試験、さらには大学入試本番の直前など、限られた時間で数学の試験対策を考える必要があることも少なくありません。限られた時間内で数学力を劇的に向上させることは難しいかもしれませんが、直前期に工夫をすることで、成績に大きな変化をもたらすことは充分に可能です。
最も推奨したいのは、「間違い直しノート」の見直しです。自分が苦手とする問題の解法を再度確認することは、限られた時間を最大限に活用する上で非常に効果的な学習法です。特に、特殊な解法が必要な問題には、あらかじめ印をつけておくと、試験前の対策がよりスムーズに進みます。受験生は、過去問の演習とその解き直しノートを作成しておくことで、試験直前の復習に大いに役立てることができます。
出題傾向を確認し、時間配分の計画を見直すことも、ぜひ実行してください。数学試験では、時間配分の誤りが致命的なミスにつながりかねません。可能であれば、直前期に本番と同じ時間配分で、過去問題やそれに類似した問題セットを解く練習を行うことが望ましいです。
ある程度の準備ができている人は、「ランダム学習」を取り入れることで、最後の仕上げを行うと効果的です。範囲内の問題をランダムに選んで解くことで、解法を思い出す良い練習になります。基本は実際に問題を解くことですが、時間が足りない場合は、頭の中で解法を思い出し、模範解答で確認するだけでも一定の効果が期待できます。
数学を深く理解することで、「わかった!」の喜びを得ると同時に、問題解決能力や論理的思考力といった、人生に役立つ多くのスキルを養うことができます。そのために、日々粘り強く取り組み、学びを積み上げていくことも求められる学問でもあります。コツコツ毎日の学習を継続する上で、参考になる部分をぜひ取り入れてみてください。
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「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。
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