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大学受験の現代文勉強法 学び方で伸びる!4つのポイント

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執筆:八尾直輝

「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長

現代文は日常生活で目にする、使い慣れた言葉なのに、科目になったとたんにわかりにくい、テストで点数が取れないと嘆く学生も多い科目です。一朝一夕では伸びづらい科目でもあり、いつから始めればいいのか?残された時間で成績を伸ばすのは無理なのか?不安になっている学生もいます。ですが、現代文も勉強のやり方次第で、確実に力をつけることができます。自分に合った正しい勉強のやり方を学んでいきましょう。

目次

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現代文、国語は成績が伸びにくい?

英語や数学と比較し、現代文は成績の上げ方がわかりづらい科目と言われます。しかし、適切なやり方を継続すれば、現代文の成績も着実に伸ばすことが可能です。

暗記科目に比べると伸びるタイミングがわかりにくい

現代文は、暗記科目とは異なり、学習の成果を実感しにくい科目だと言えます。その理由の一つは、知識そのものが直接問われることが少ないからです。現代文では、漢字の読み書き程度の知識問題はあるものの、試験の難易度が上がるにつれ、知識を直接問う問題は減っていきます。

また、現代文では、知識や読解技術を学んでも、それを応用できる機会が必ずくるとは限りません。数学や英語のように明確な「単元」がないため、学習成果をそのまま発揮できる問題に出会えるとは限らないのです。

模試や試験の結果に一喜一憂しない

そのため、現代文の学習では、模試や試験の結果に一喜一憂しないことが大切です。特に結果が悪かったときは、点数や偏差値自体を見すぎないようにしましょう。代わりに、大問ごとの得点状況や、設問種別ごとの得点傾向を細かく分析することが重要です。記述問題が苦手なのか、選択肢問題が得意なのかといった、自分の強みと弱みを把握するチャンスだと考え、解答・解説を読む際は、「次回に活かす読み方・解き方の教訓」を得ることを心がけましょう。単に正解を確認するだけでなく、問題の意図を汲み取り、自分の読解プロセスを振り返ることが大切です。

学び方がわかれば、成績は伸びるもの

現代文の学習では、正しい学び方を身につけることが、成績向上の鍵を握っています。
具体的にどのように勉強していけばよいのか、見ていきましょう。

高校現代文 攻略の基礎知識

まずは現代文という科目の特性を知ることから始めていきましょう。

現代文は評論、小説、随筆の3種類

現代文の出題は評論・小説・随筆という三つのジャンルで構成されます。

l  評論文

評論文は、しばしば「説明的文章」と位置づけられ、その核心は筆者によるテーマの徹底的な分析や、論理的に構築された自身の主張にあります。明確な論点が示され、理解の奥深さを問う問題が出題されます。大学受験ではもっとも出題されることの多いジャンルです。

l  小説

一方で、小説は「文学的文章」としての性質を持ち、人間の心情やその変化に焦点を当てます。小説は時代や場面、人物関係に注目し、自分が経験したことのない状況を読み解く力が求められます。ここでの読み解きは、単に共感といった感情的なものではなく、登場人物の心の動きを論理的に追いながら深い理解を求める作業であることに注意が必要です。

l  随筆

随筆は、論理と文学の架け橋のような存在です。筆者の体験や感情を軸にしながらも、その背後にある主張や考えを巧みに展開します。随筆文は評論と小説の読解テクニックをバランスよく駆使して読み解くことが求められます。

筆者の考えを読み解くこと、理解していることを解答すること

現代文の学習を考える上で、文章の理解と設問への解答は分けて考えるのがよいでしょう。文章を理解する読解力は当然必要ですが、文章を理解できたからといって、必ずしも設問に適切に解答できるとは限らないからです。

まず、文章を読む際には、筆者の伝えたいメッセージを的確に読み取ることが求められます。説明的文章であれば、筆者の主張や考えを正確に理解し、文学的文章の場合は、作品のテーマや登場人物の心情などを客観的に読み解く必要があります。単に表面的な内容を追うだけでなく、行間を読んで筆者の真意を汲み取る力が試されるのです。

次に、設問に答えることは、出題者との対話だと考えることが大切です。設問の背景にある出題者の意図を推察し、求められている解答を的確に導き出さなければなりません。設問文の一語一句に注意を払い、指示に従って過不足のない解答を心がけましょう。

当たり前に使っている言葉を意識して理解すること

言葉は私たちの生活に欠かせない存在ですが、その意味を深く理解していないことがあります。特に文章読解においては、語彙力の向上が読解の質向上に大きく寄与します。豊富な語彙力を持っていれば、文章の細部まで鮮明に理解でき、著者の意図するところに正確にピントを合わせることができるのです。

例えば、以下の2つの文章を比較してみましょう。

  • 彼女の演技は人物の内面を巧みに表現していた
  • 彼女の演技は上手だった

「彼女の演技は上手だった」という表現だけでは、登場人物の内面の葛藤や成長の過程を十分に理解することは難しいでしょう。一方、「彼女の演技は人物の内面を巧みに表現していた」という表現があれば、読者はその登場人物の心情により深く共感し、物語の主題をより深く理解することができるはずです。

このように、語彙力の差は、表面的な理解にとどまるか、作品の奥にある深い意味や登場人物の内面までを読み取れるかの差につながります。豊かな語彙力を身につけることで、文章の「解像度」が上がり、より深い読解が可能になるのです。

しかし、単語を見て分かると思うことと、単語の意味を説明できることの間には、大きなギャップがあります。テストの手応えと返却された結果にギャップがある場合は、語彙力不足が原因かもしれません。そのような時は、自分の語彙力を見直し、言葉の意味を正確に理解することが大切です。

新しい言葉に出会ったら、辞書で意味を調べるだけでなく、自分の言葉で説明できるようになることを目指して学習しましょう。当たり前に使っている言葉でも、改めてその意味を考えてみると、新たな発見があるかもしれません。言葉への意識を高め、語彙力を向上させることで、読解力だけでなく、表現力も磨かれていくでしょう。

求められる力は読解力、解答力

つまり、大学入試の現代文で求められる重要な能力は、大きく2つに分けられます。

  • 読解力
  • 解答力

読解力を伸ばすには、日々の学習で語彙力や背景知識を身につけることが大切です。それに加え、文章の構造を理解するためのコツも身につけましょう。筆者の主張と具体例の違いを意識したり、比喩や対比、因果関係に注目したりすると、より深く読み取ることができます。わかりやすい参考書や講義を活用するのもおすすめです。

解答力をつけるには設問の意図を正確に理解することが重要です。言葉の定義や文脈をしっかり押さえる練習を積み重ねましょう。また、いろいろな問題パターンに触れて、解法のテクニックを身につけるのも効果的です。

読解力と解答力は、それぞれ学ぶポイントが少し違います。でも、日頃から文章をたくさん読んだり、問題にチャレンジしたりしながら、少しずつ力をつけていくことが大切です。国語、現代文の学習では、この2つの力をバランスよく伸ばしていくことを心がけてみてください。

現代文の勉強法 4つのポイント

ここからは普段の現代文の学習で、読解力、解答力を上げるために、もっとも気を付けてもらいたいポイントを5つに絞って解説します。自分の学習に取り入れられるものがないか、ぜひチェックしてみてください。

1)漢字と語彙力(単語)の習得

現代文学習の基礎となるのが、漢字と語彙の習得です。漢字学習では、個々の漢字の意味だけでなく、熟語としての用法も併せて理解することが重要です。これにより、語彙力が向上し、文章読解の土台が築かれます。

語彙力と漢字力を身につけるためには、日々の地道な積み重ねが欠かせません。これは言うまでもなく重要なことです。
なぜなら、第一に、知識の長期的な定着には時間がかかるからです。試験直前の詰め込み学習では、一時的には覚えられても、すぐに忘れてしまいがちです。
第二に、言葉の力を本当に磨くためには、繰り返しその言葉に出会い、使い、その都度意味を考える必要があるからです。単語の意味を一度覚えただけでは、本当の理解とは言えません。覚えた後に、様々な文脈の中でその言葉に出会ったり、自分でその言葉を使ったりすることで、言葉の意味が腑に落ちるのです。

したがって、語彙力と漢字力を向上させるには、「少しずつ長期的に学習していく」という基本を忘れずに取り組むことが大切です。一朝一夕にはいきませんが、コツコツと努力を続ければ、着実に力がついていくはずです。日々の生活の中で、新しい言葉に出会ったら、辞書で調べたり、人に聞いたりして、少しずつ語彙を増やしていきましょう。そして、その言葉を自分でも使ってみることで、言葉の意味を体得していくのです。地道な努力を続ければ、いつの日か豊かな言葉の力を手にすることができるでしょう。

2)主語、述語を意識する

主語と述語を意識することは、文章、文脈を正確に理解するために重要です。日本語は主語が省略されがちですが、文脈から主語を補足し、把握することが必要不可欠です。特に、複雑な構造の文章では、主語と述語を正しく捉えるために、文章の構造を単純化して考えることが効果的です。

例えば次の文章を考えてみましょう。

「人間の心情は複雑なものであり、その人物の基本的性格にとどまらず、その時々の身体的状況、周囲の環境、他者の言動など様々な要因によって常に揺れ動くものであるということをふまえながら、物語の心情読解を進めることが大切である。」

なかなか難しい文章ですね。このような1つ1つの文章でも、丁寧に主述をおさえて整理することで読みやすくなります。この文章の主述を整理し解釈すると、以下のようにまとめられます。

  • 人間の心情は複雑である。様々な要因で揺れ動く。
  • 複雑さをふまえて、物語の心情読解を進めることが大切。

このように、長い文章を主語と述語に着目して単純化することで、文章の本質を捉えやすくなります。国語、現代文の学習において、主語と述語を意識することは、文章構造や筆者の主張を正確に捉えるためのスキル、読解技術の向上につながります。

3)接続詞に注目する

接続詞に注目することは、短時間で正確な読解を目指すために非常に有効な方法です。接続詞に着目することで、文章の構造を把握することができます。筆者が特に主張したい部分や、対立意見、具体例の部分などを素早く見つけることが可能になります。

具体例をいくつかあげます。

  • 「つまり」「要するに」

この接続詞の後には、筆者の主張が端的に述べられることが多いでしょう。筆者の主張を素早く把握できます。

  • 「しかし」

この接続詞の後には、筆者が強調したい大切な内容が来ることが多いです。「しかし」に注意を払うことで、筆者の主張のポイントを見逃さずに済みます。

  • 「例えば」

この接続詞の後には具体例が続くことが多く、筆者の主張を読み解くのに役立ちます。具体例を通して、筆者の考えをより深く理解することができるでしょう。

このように、接続詞に注目することは、文章の構造を素早く把握し、受験国語のように短時間で正確な読解を行うために非常に有効な方法なのです。

4)解きっぱなしはNG。復習が基本

「答え合わせ」は少し面倒です。特に現代文の記述問題は正誤が一見してわからないことも多く、丁寧に答え合わせをすることを、少し億劫に感じる人も多いようです。

それでも、現代文の学習において、「解きっぱなし」は避けるべきです。現代文は言葉を扱う科目ですが、自分が解けたと思う感触と、実際の問題の正解・不正解との間には、しばしば大きなギャップが生じます。このギャップを放置すると、勘違いを訂正するチャンスを失うだけでなく、誤った言葉の理解や読み方を強化してしまうことにもつながりかねません。これは、スポーツにおいて誤った筋力トレーニングを続けることで怪我のリスクが高まるのと同じです。

したがって、問題を解いた後は、必ず丸付けをして正解を確認するだけでなく、解説をしっかり読んだり、先生に添削を依頼したりして、自分の解答の妥当性をチェックすることが重要です。また、理解できなかった言葉や知らなかった背景知識は、ノートにまとめておくことをお勧めします。そうすることで、後から復習したり、テストに備えたりすることができます。

国語の力を着実に伸ばすためには、「解く」だけでなく、「復習する」ことが欠かせません。自分の理解のギャップを見つめ直し、誤りを訂正していく地道な努力こそが、国語力向上の近道なのです。日々の学習の中で、復習を習慣づけていきましょう。

読書、新聞など多読は効果があるか?     

読書や新聞を多く読むことは、語彙力や背景知識を身につける上で一定の効果があります。しかし、ただ漫然と読んでいるだけでは、「受動的な読み」になってしまう可能性があります。

自力で読んでいるだけでは、一つ一つの文の意味を丁寧に考えたり、文章全体の構造を把握するような視点が欠けがちです。そのため、読書や新聞を多く読むことが直接的に国語、現代文の成績アップにつながるとは限りません

受験が迫っている場合や、国語が苦手で読解に困難を感じている場合は、自分に適したレベルの問題集や参考書を使って、効果的に学習を進めることをおすすめします。問題集や参考書では、要点がコンパクトにまとめられており、演習問題を解くことで弱点を把握し、重点的に学習することができます。

読書や新聞を読むことは大切ですが、受験勉強においては、限られた時間を有効に使うことが何より重要です。自分に合った学習方法を見つけ、着実に実力をつけていきましょう。

現代文の参考書の選び方

問題集や参考書で弱点を把握し、重点的に学習することができるとお伝えしましたが、参考書の選び方も重要です。自分に適したレベルとはどのように選べば良いでしょうか?

現代文の参考書には大きく分けて3つのタイプがあります。

  • 漢字や語彙知識を練習するもの
  • 背景知識やテーマを学習するもの
  • 読解問題の演習を積むためのもの

現代文の学習に役立つ参考書選びで悩む人は少なくありません。 現代文には明確な学習単元や「学年相当の進度」がないため、参考書選びは一筋縄ではいかないからです。「誰にでも有効な、絶対的なお勧め」があるわけではないのです。実際に問題や解説を見て、自分に合うものを選ぶことが不可欠です。

そこで大切なのが、学習進度や語彙の習得度に合わせた選び方です。志望校や試験形式などの「ゴール」だけではなく、自分の語彙力や知識、解答力などの「現在地」をふまえつつ選びましょう。解説が充実しているもの、背景知識・テーマ学習を重視するもの、入試形式別の対策を重視するものなど、目的を見極めて選ぶことが大切です。

自分で見て判断がつかない時は先生に相談してください。自分のことを知っている先生であれば、語彙力や読解力、そして志望校別の対策などを総合的に判断してもらえるでしょう。

関連リンク:駿台文庫 国語の参考書

現代文の定期テスト対策

定期テスト対策がもっともやりづらいのは、もしかしたら現代文かもしれません。ただし、自己流で適当にやってはいけません。適切なやり方を身につけることは、定期テストの得点向上だけではなく、入試にも直結するからです。

教科書を読み込む

テスト勉強は「ノートを見返す」だけでは不十分です。 まずは教科書の文章に戻り、丁寧に読み込むことから始めましょう。文章を読み込むことで、「どこにどんな情報が書いてあったか」を思い出せるようになります。これは選択肢問題の解答根拠を探したり、記述の要素や抜き出し問題の解答を文章中から見つけ出したりするのに役立ちます。

具体的なやり方としては、教科書の文章を読み、不明な言葉を調べるのがお勧めです。また、教科書の内容を段落分けして概要をメモする方法で理解を深めるのも効果的です。

さらに、教科書を読み込むテスト勉強は、大学入試の準備にも役立ちます。大学入試では自力で新しい文章を読解する力が求められますが、ノートを覚える勉強だけでは、この力はなかなか鍛えられません。文章を読む経験を通じて自力での読解力を養うことが大切なのです。教科書を直接読み込む勉強法を取り入れて、テストだけでなく大学入試に向けた読解力も身につけていきましょう。

定期テストの得点アップ? ノートのとり方

定期テストで高得点を取るためには、授業内容を効果的に復習することが重要です。そのためには、ノートのとり方を工夫することが欠かせません。 ノートの役割は、復習するための記録です。記録しておくべきものは、文章の内容、構造、記者の主張やその論理的な展開、そして語彙や背景テーマです。文章内容やその構造の復習は、授業の板書を忠実にノートに取ることで効果的に行えます。個人的に理解が難しい、あるいは大切だと感じた文・言葉には、板書の隙間に自分で詳細を書き加えることで理解を深めることができるでしょう。

復習では「見出し付け」をするのがおススメです。まず文章全体を意味段落に分け、各段落に簡単に見出しをつけます。そうすることで、文章全体の流れを整理することができます。見出し付けのあとに、文章全体の要約までできると完璧です。

また、明確に覚えておくべきものに関しては、辞書ノートにまとめるのも良い方法です。単語や背景知識などの復習がしやすいようにすることで、テスト前の復習がスムーズに進むはずです。

この例のように、理解を深めるべき単語の意味と例文を1冊のノートにまとめます。主体的にまとめることで記憶に定着させやすくなりますし、試験前の復習も効率よくできるようになります。

問題の解き方の順番は

問題の解き方の順番は、個人の学習定着度や得意・不得意に合わせてアレンジすることが重要です。

大問ごとの解答順序は、知識量や得手不得手、また個人の受験戦略に合わせて決めるとよいでしょう。例えば、受験する大学では古典を使わない場合は古典を後回しにしたり、評論文で得点を稼ぎたい場合は評論文を優先したりするなど、自分に合った順序で解答することが効果的です。

小問の解答順序については、様々な戦略が語られています。「文章全体を最初に読む」「先に小問に全て目を通す」などの方法がありますが、原則は「文章を読んで問いに答えること」だと押さえておくことが大切です。

実際、大問の最初には必ず「文章を読んで問いに答えなさい」という指示があります。これは、個々の持っている知識だけに頼らず、文章と筆者の主張や意見を踏まえた解答をすべきという意味です。 どの解答順序を選んでも、文章内容の正確な理解に基づいて解答をすることが重要なのです。自分に合った解答順序を選びつつ、文章の内容を正しく理解し、それに基づいて解答することが、問題解決の鍵となるでしょう。

大学入試 共通テストの現代文

共通テストの現代文は文系だけではなく、多くの理系の受験生も受験科目になります。国語力に加え、独特の形式に慣れることも必要なテストであり、十分に対策することが求められます。

共通テストの現代文の特徴は?

共通テストの現代文では、受験生の読解力と思考力が厳しく試されています。特に目立つのは、文章量の多さと解答時間の制限です。受験生は限られた時間内で大量の文章を読み解き、設問に答えなければなりません。

また、「複数テキスト」形式の問題が登場することも大きな特徴です。メインの文章に加えて、関連した内容の短めの文章を読み、両者の関連性を見極めながら思考力を発揮することが求められます。このような問題では、本文をまとめたノートやメモ、あるいは内容的に本文に関連した別の文章などが出題されます。つまり、受験生には文章どうしの関連を見抜く思考力と、素早く情報を処理する情報処理力が必要とされるのです。

独立行政法人大学入試センター 2024年度大学入試共通テスト国語大問2の本文

現代文では本文に加え、他に複数のテキストを読む必要がある
出典:独立行政法人大学入試センター 2024年度大学入試共通テスト国語大問7の本文

読解すべき情報量は多いものの、問題数自体は多くありません。その代わり、読解問題の配点が1問につき7~8点と非常に高く設定されています。したがって、1問正解できるかどうかによって得点が大きく左右されることになります。

共通テストの現代文では、受験生の読解力と思考力、情報処理力が総合的に問われています。限られた時間内で大量の情報を正確に読み解き、適切に解答することが求められる、難易度の高い試験だと言えるでしょう。

マークシートならではの解き方のコツ

マークシート形式の試験、特に大学入試共通テストの国語では、選択肢が非常に長いのが特徴です。しかし、これは受験生にとって必ずしもハードルが高いわけではありません。むしろ、選択肢の長さをうまく活用することで、正解のヒントを得ることができるのです。

共通テストの選択肢は、本文の表現をそのまま使うのではなく、言い換えや抽象度の調整が施されています。つまり、選択肢を読み解くには語彙力が問われるのです。ここで重要なのは、長い選択肢を適切に区切り、各要素が問題文の求めるものに合致しているかを確認することです。これにより、不要な選択肢を削ぎ落とし、正解へ近づくことができるでしょう。

ただし、選択肢の分析だけでは不十分です。問題文の正確な解釈こそが、マークシート形式の国語試験で求められる最も重要なスキルと言えます。設問が問うているのは、傍線部の言い換えなのか、傍線部の理由なのか。こうした問題文の要求を正しく理解することなくして、正解にたどり着くことはできません。

実際に共通テストでも、選択肢は本文に即した内容であるものの、問いに沿う内容(傍線部で聞かれている内容)になっていない選択肢が出題されたこともあります。文章と選択肢の照合のみに気を取られて、問いを丁寧に解釈せずに答えると、間違いになるという典型例です。 受験生の中には、設問を読み込まずに選択肢と本文内容を直接突き合わせて解答を選ぶ人もいるようですが、これは危険な方法です。問われていることに適切に答えていない選択肢を選んでしまうリスクが高いからです。

現代文7割、8割、9割の正答率を分けるもの

現代文で7割、8割、9割の正答率を分けるものは何でしょうか。その境目にある「壁」を乗り越えるためのポイントを見ていきましょう。

7割の壁を超えるには

基礎の習得とテスト形式に慣れるための演習が必要です。まずは基本的な語彙の理解と文章構造を読み解く力が求められます。指示語や接続詞がどのような役割を果たしているのかを理解することで、文章内容を正確に読解できるようになります。また基礎を習得した後、繰り返し共通テスト型の演習をし、実戦経験を積み上げることが必要です。

8割の壁を突破するには

正確性を伸ばしていく必要があります。設問に正確に解答するための方法を身につけましょう。問題文が問う内容を的確に理解し、選択肢の細部にまで着目する技術が求められます。また問題文の理解だけではなく、選択肢の分析力を高めることが、8割への道につながります。

9割の壁を突破するためには

ミスを減らすことが必要です。9割とは、1~2問しか間違えないレベルです。文章の完璧な理解と、高度な設問対応技術に加え、細部を見落とさない・細かい誤読をしないなど、ミスを減らすことが求められます。8割は取れるのに9割に届かない人は、文章や選択肢の細部の情報を読み落とす、見落とすようなパターンが多いようです。
また読解速度を上げるために、背景知識の強化も有効です。幅広い知識を身につけることで、文章の内容をスムーズに理解できるようになります。

模試、二次試験の現代文

模試や二次試験の現代文は難解な文章が出題されることに加え、記述式の問題も多く出題されます。適切な学習を積み上げることと、模試や大学ごとの傾向を踏まえ、形式に慣れていくことも重要です。

設問から抜き出す、解答のコツ

国語の設問から解答を抜き出すためには、いくつかのコツがあります。まず、問いをしっかりと解釈し、自分なりに解答のイメージを持つことが重要です。単に設問文に書かれている言葉を探すのではなく、記述式で答えるつもりで、求められている内容を具体的に考えましょう。

次に、解答の文末表現を推測してみてください。例えば、登場人物の「心情」を問う設問であれば、「安堵した」や「焦燥感を覚えた」といった表現が文末に来ると予想できます。このように、求められている解答の形を意識することで、本文中の該当箇所を見つけやすくなります。

さらに、解答となる表現が書かれている部分に目星をつけておくと効果的です。文章の構造や段落の役割を理解し、そこから解答の在処を推測する力を養いましょう。例えば、心情を問う設問であれば、登場人物の心の動きが描写されている段落に注目するといった具合です。

抜き出し問題で高得点を取るためには、解答がある場所を予測する力が欠かせません。この力は、文章構造の理解と密接に関わっています。段落ごとの役割や文章全体の流れを把握できれば、自ずと解答の在処が見えてくるはずです。日頃から多様な文章に触れ、構造や展開パターンを学ぶことが、国語の抜き出し問題で良い結果を出すための近道と言えるでしょう。

記述式解答は、まず構成を考えてから書く

記述式の問題に取り組む際、限られた字数の中で的確に解答することが求められます。そのためには、いきなり答案用紙に書き始めるのではなく、事前に解答の構成を考えることが不可欠です。

慣れないうちは、答案を書きながら内容を考えがちですが、これでは指定字数に収まらなかったり、逆に字数が足りずに必要な要素を盛り込めなかったりするリスクがあります。そこで、答案作成前に問題用紙の空きスペースを活用し、箇条書きで必要な内容をメモしておくと良いでしょう。

その際、最も重視すべきは「どの要素を入れるべきか」という点です。設問の要求に沿って、押さえるべきポイントを過不足なく列挙することが肝要です。字数が足りないからと安易に内容をカットするのはNGです。むしろ、記述への慣れや語彙力の向上によって、徐々に字数調整ができるようになることを目指しましょう。

要するに、記述式問題では、書く前の準備が成否を分けると言っても過言ではありません。限られた字数の中で的確に答えを構成する力は、国語の実力向上に直結する重要なスキルです。日頃から意識的に訓練し、着実に身につけていきたいものです。

東大、京大、早稲田大の 二次試験(個別試験)の例    

東京大学、京都大学、早稲田大学は、いずれも難関大学として知られていますが、その二次試験の現代文問題には、それぞれ特徴があります。

東大の現代文は、難易度・長さともに入試現代文としてはオーソドックスなレベルです。全問記述式で、約60字の記述問題が多くを占めています。ここでは、文章の論構造を整理しつつ、言葉一つ一つの意図を明確に読み取り、理解した内容を正確かつ端的に表現する力が求められます。

一方、京大の現代文は、出題される文章自体が凝縮され無駄のない簡潔なものが多いのが特徴です。全問記述式で記述力勝負ですが、求められる字数は東大よりも長めです。京大では、問題に対してどれだけ豊富な要素を持って答えられるかが問われています。比喩の説明や、本文に書かれていない内容、筆者の言わんとする内容を行間から推測して答える問題などがあり、本文の表現だけでなく、自らの理解を補った自分自身の言葉で解答を書かなければならない点で、非常に難しいと言えるでしょう。

早稲田大学の現代文は、学部によって傾向が異なりますが、概して抽象的で難解な課題文が出題される傾向にあります。文章読解の難易度は、東大や京大以上であることも少なくありません。設問はマーク式の問題が多いですが、学部によっては記述問題が含まれることもあります。難解なテーマを読み解くための高度な語彙力と背景知識が求められる点が、早稲田大学の現代文の特徴と言えます。

以上のように、東大、京大、早稲田大学の現代文は、それぞれ異なる特徴を持っています。しかし、いずれも高度な読解力と表現力が求められる点では共通しており、受験生には日頃からの地道な訓練が欠かせません。これらの大学を目指す皆さんには、各大学の出題傾向を意識しつつ、幅広い文章に触れ、多様な問題に取り組んでいくことが大切だと言えるでしょう。

関連リンク:共通テスト模試、第一回東大模試、京大模試 を受けてみよう

学年別、現代文の習得目標は?

入試に向けた現代文の学習の目標はどのように設定すればいいのでしょうか。大学入試に向けて適切に段階を踏むために、学年別の目標を確認しておきましょう。          

高校1年の目標は?

高校1年生の現代文学習では、まず高校レベルの語彙・知識に慣れることが大切です。中学生で求められるものとは一段違う語彙・知識レベルになるため、この面での底上げが必要となります。

次に、現代文の勉強法を確立することも重要な目標です。高校1年生の間に、語彙力をつける方法や読解技術の学び方を身につけておきましょう。ノートの取り方を工夫するなど、自分なりの学習スタイルを確立することが、将来の受験勉強につながります。定期試験対策だけでも、基本的な勉強法が身についていれば、本格的な受験勉強への準備になるのです。

高校2年の目標は自力で解く経験を積むこと

高校2年生になると、勉強方法が確立し、大学受験に向けた目標や志望校のイメージが明確になってきます。この時期は、1年生で身に付けた学習習慣を強化し、本格的に語彙力、背景知識、読解技術の向上に努めることが大切です。

また、「初見の文章を週に1題」の演習を開始するのもおすすめです。授業で解説された文章の学習だけでなく、自力で読む練習を始めましょう。理解が難しい単語が多い場合は、現代文単語のテキストで語彙力を鍛えることが有効です。逆に、もっと得意になりたい人も、現代文単語のテキストで背景知識や頻出テーマの議論を覚えていくとよいでしょう。

高校3年、受験生の場合は後回しになりがち…?!

高校3年生は、全教科で知識の習得が重要になるため、現代文の学習がつい後回しになりがちです。得意な人は「読めるから、力を入れなくてもいい」、苦手な人は「読めないからやっても仕方がない」と考えてしまうことがあります。

しかし、現代文の学習は体力づくりと同じで、急にやっても伸びるものではなく、継続しないと力は落ちてしまいます。そのため、「一定のペースでコンスタントに」をキーワードに学習を進めることが大切です。週に1~2問の演習を継続的に行い、解答や解説を読んで自分の思考を検証する習慣を身につけましょう。一喜一憂せず、着実に学習を積み重ねることが、現代文の得点力アップにつながるのです。

高校1年生から3年生までの現代文学習では、その時期に応じた目標を持ち、計画的に学習を進めることが重要です。語彙・知識の習得、勉強法の確立、継続的な演習など、バランスよく取り組むことで、現代文の実力は着実に伸びていくでしょう。

全ての科目に通じる学び

現代文の学習は、他教科への応用が可能な汎用性の高い学習だと言えます。語彙習得や意味調べの習慣は、他教科においても専門的な言葉の定義を重視し、用語の意味を知ろうとする姿勢につながります。また、読解技術の習得は、教科書や問題集の解説を「読む」力を直接的に向上させます。

さらに、現代文学習は「言葉を磨き、世界がより良く見えるようになる」営みだと言えるでしょう。言語学者ソシュールは「言葉が存在する前に物事や観念は存在しない」と述べています。つまり、言葉を知らないということは、世界を十分に認識できていないことと同義なのです。物理的に見ていても、認識していなければ、見えていないのと同じなのです。

現代文学習における語彙力は「見えるもの」を増やし、文章構造を把握する論理力は、世界の「解像度」を上げる働きがあります。現代文は、短期的な効果は感じにくい科目かもしれませんが、コンスタントな努力を重ねることで、現代文以外の様々な点での力につながる教科でもあるのです。現代文の学習を通じて培った力は、学習者の人生全体を豊かにしてくれるでしょう。

著者プロフィール

八尾直輝の写真 八尾直輝 株式会社プラスティー教育研究所

「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。

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