理解とは-暗記との違いを理解しやり方を知ろう-

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執筆:八尾直輝

「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長

目次

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理解に関する理論

暗記と理解の違いとは

「暗記ではなく、理解することが重要だ」といった言葉を聞いたことがある人も少なくないと思います。確かに意味を理解することなく丸暗記をしてもなかなか記憶に定着しないのは間違いなさそうです。

一方で暗記と理解の境界線を明確に決めるのは難しいものです。理解や応用力といったものは、そもそも暗記に立脚しています。強いて言えば、「暗記」はインプットがメインであるのに対し、「理解」はアウトプットの割合が大きいというところに違いがあるのかもしれません。このコラムでは暗記した内容をアウトプットすることで、理解を深めていく方法を紹介します。

テスト効果

そもそもアウトプットが重要と言われるのはなぜでしょうか。またアウトプットとは具体的に何を「アウトプット」と呼ぶべきなのでしょうか。

ある記憶の定着に関する研究(注)では、記憶を保持するためのやり方として「テキストの読み直し学習」と「テスト」の効果を比較しました。短期的に記憶を保持するためには「テキストの読み直し学習」が有力でしたが、長期的には「テスト」を用いた復習が、圧倒的に記憶の定着率を向上させるという結果になりました。

これをテスト効果(testing effect)と呼びます。テストで「自力で思い出す」ことが、記憶強化させることにつながるのです。「アウトプット学習」でもこのテスト効果を活用し、「自力で思い出す」仕掛けを勉強の中に作っていくことが重要でしょう。

(注): 2006 Henry L. Roediger, Ⅲ , Jeffrey D. Karpicke “Test-Enhanced Learning: Taking Memory Tests Improves Long-Term Retention”

なりきり動画先生

やり方

「なりきり動画先生」は、先生になりきって問題を解説することで、自分の理解を確認する方法です。解説の様子を動画に収め、自分で客観的に振り返ることで理解が曖昧になっている点を認識することが可能になります。また自分の言葉で解説するプロセスを通して、さらに理解を深めることにもつながります。

◆ 「なりきり動画先生」3つのステップ

1.問題解説を動画で撮る
1週間後の自分に向けて解説するイメージで撮影します。カメラを持って、手元を映しながら解説をしましょう。
解説の途中で多少間違えても、そのまま最後まで撮影しきってください。

2.動画をすぐに見返す
説明に詰まったところに該当する答案部分に下線を引きます。解き方を説明することで、「理解出来ていないところ」「整理出来ていないところ」を見つけることができるはずです。

3.説を読み直す
もう一度解説を読み直し、時間が許せば解説動画の録り直しに挑戦してみましょう。

より効果的な取り組みのためのワンポイントアドバイス

  •  解説は模範解答の朗読にならないように、解説の冒頭で問題全体のポイントをまとめたり、式変形等の理由をコメントをいれたりしてみましょう。
  • 慣れないうちは、下記テンプレートに則って解説してみましょう。

◆「なりきり動画先生」解説のテンプレート

「では、この問題の解説をします。まず求めたいのは■■です。
■■を求める上で、大事なポイントは〇〇と△△です。特に〇〇は必ず覚えておきましょう。」

「答えを求めるまでの流れは
①□□を求める。
②求めた□□を使って〜〜を求める。
③最後に〜〜を✕✕に当てはめて答えを求める。
です。」

「では実際に、一つ一つの式を見ながら①〜③までの流れを確認していきます。
(①〜③の流れに沿って書いた式を読みながら解説)

最後に、この問題のつまずきポイントはXXです。自分はXXを忘れてしまうので、ここに注意です。」

ランダム学習

やり方

同じ種類の問題を連続して学習(ブロック学習)するよりも、適度に異なる内容を混在させて学習(ランダム学習)する方が学習効果が高まる可能性があることを示唆した研究があります。(2008Kelli M. Taylor “The Benefits ofInterleaving Different Kinds of Mathematics Practice Problems)

異なる問題が混在されていることにより、都度その問題の解法を主体的に考える必要があり、その結果定着率が向上すると考えられます。

より効果的な取り組みのためのワンポイントアドバイス

● 問題集の2周目
問題集の2周目の演習では、1周目で間違えた問題のみを解き進めるやり方をする人もいると思います。その際、解く順番をランダムにすることで、自分の理解を確かめることができます。

● 定期試験の前の総仕上げ
定期試験の前日など、試験範囲の問題をランダムに解くことで、自分の苦手を発見できるかもしれません。解くべき問題番号を書き出し、上の図のように単元がランダムになるように解くのがおすすめです。

著者プロフィール

八尾直輝の写真 八尾直輝 株式会社プラスティー教育研究所

「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。

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