
執筆:八尾直輝
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長
執筆:八尾直輝
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長
ここまでのコラムでは、学習を学習サイクル(予習→授業→復習→テスト)で捉えることの重要性を解説してきました。今回はこの復習のやり方について解説をしていきます。
学習サイクルにおける復習の意義とは何でしょうか。
と定義しました。
復習はこの授業で「できる」になったことを「定着させる」ことです。復習はやり方次第で差がつきやすい重要なフェーズですが、生徒個人にやり方が任されていることが少なくありません。
適切な復習のやり方を身につけることは、そのままライバルに差をつけることに直結するのです。
それでは有効な復習のやり方とはどのようなものなのでしょうか。
まず復習では「インプット学習」と「アウトプット学習」をバランスよく取り入れることが重要です。英単語や数学の公式を覚えるインプット型の復習だけでは結果につながりません。実際に問題を解いて(アウトプットして)初めて、できる状態をキープできていると言えます。
学習サイクルの観点から考えると、復習はテストに備えるものです。つまり復習が完了するとは、テスト対策が完了することを意味します。そういう意味で、復習に「アウトプット学習」を取り入れることは極めて重要です。
例えば理系科目(数学・理科)では復習時に実際に問題集に取り組むなど、アウトプット学習を習慣化させていくのがよいでしょう。
復習の質を上げるポイントは「回数」と「タイミング」にあります。
人間の記憶に関する研究はたくさんありますが、有名なものにドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの研究があります。エビングハウスは2000個以上の無意味な音節を作り、それをグループに分けて覚え、記憶に要する時間を計測しました。時間経過と再学習に必要な時間を測定したのです。
この研究からわかることは3点です。
1.特に意味のない事柄に関する記憶は、時間の経過と共に忘れてしまう
2.一度記憶したことの再学習は、初めて学習するときよりも時間を節約できる
3.繰り返し学習をすることで、記憶は強固なものになる
人は忘れる生き物ですが、再学習を繰り返すことで、記憶を呼び戻すまでの時間が短くなることが指摘されています。
1回の復習で完璧を目指すよりも、短時間でよいので複数回学習することが、記憶を強固にするための有力な手段の1つと言えるのです。
また復習は、「どの時期まで復習した内容を覚えていたいか」によって最適なタイミングが異なることが知られています。
ある別の研究(2008 Nicolas J. Cepeda “Spacing effects in learning”)によると1か月後に記憶を保持しておくためには、復習を1週間後に、3か月後に記憶を保持しておくためには、復習を2~3週間後に実施することがベストであることが示唆されています。
ベストな 復習のタイミング | テストの タイミング |
---|---|
1週間後 | 1か月後 |
2~3週間後 | 3か月後 |
以上をまとめると、
ことを基準に計画をつくるのがよいと考えられます。
「氷山の一角」という言葉があります。目に見えない部分が大部分で、目に見えるものはごく一部に過ぎないことを示した言葉です。
勉強も同じです。テストの結果は目に見えますが、重要なのは目に見えない普段の学習習慣です。
テストの振り返りは、この目に見えない部分を改善することが重要なのです。
もちろんテストで自分の苦手を発見し、克服することは大切です。テストの復習は可能な限り早くするべきです。
しかし、目に見える苦手を克服するだけでは不十分です。その単元が苦手なのは、「正しいやり方」ができていないことが原因であり、その原因を解決しなければまた同じように苦手な単元ができてしまうからです。
例えば数学で「平面図形」が苦手なのであれば、学習サイクルに則り以下のように考えてみるのがよいでしょう。
1.指示された通り予習はできているだろうか?/自分なりに、予習のやり方を改善することはできないだろうか?
2.授業内容を理解できているだろうか?/より復習がやりやすい方法に、授業の受け方を改善できないだろうか?
3.十分に復習はできているだろうか?/タイミングと回数の観点から、より効果的な復習のやり方はないだろうか?
試験返却後はもっともモチベーションが向上するタイミングです。
しかしそのモチベーションは残念ながら一時的な高揚になってしまいがちです。「次の試験こそは…」と決意したものの、三日坊主という経験をしたことがある人も少なくないでしょう。
モチベーションに左右されないためにも、実行可能な「ミニマル」な行動改善を考えることが大切です。
上の例で言えば、例えば以下のようなことを考えることができます。
● 授業前日の夜に3分、教科書を読む
● 授業中の口頭説明も、ノートに書くようにする
● 授業後1分間、自席で復習をしてから休憩に入る
● 授業当日に1問だけ、該当する問題を解く
● 週末に、1時間進んだ範囲の問題演習をする
特に「When」「What」を明確に決めることで、小さな改善が進みやすくなります。
まず1つからでよいので、自分の学習サイクルを改善する行動に取り組んでみてください。
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「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。
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