大学受験では、自身が志望する大学の入試に要する複数の科目が、実際の受験時に目標レベルに達していることが理想です。この記事では、それを満たすために必要となる効率的な勉強の進め方、また複数校受験する場合の受験スケジュールの組み方を解説します。高校3年間で、どの時期までにどの科目をどのように勉強するか、スケジュールをしっかり立てて、勉強を進めていきましょう。
大学受験スケジュールの基本
7~8月頃に、志望大学のWebサイトで選抜要項や募集要項を確認します。デジタルデータで閲覧できるところがほとんどですが、私立大学では、サイトの閲覧に会員登録を求められるケースもあります。
9月には、総合型選抜試験がスタートします。共通テスト受験者は、この時期に出願を行います。
学校推薦型選抜が開始するのは11月からです。総合型選抜・学校選抜型を受ける場合も、不合格になる可能性も考えて、一般入試でリカバリできるよう準備しておきましょう。
2024年度の共通テストは1月13・14日でした。国公立大学の前記試験は2月25日、後期試験は3月12日以降となります。1~2月には私立大学の一般入試も始まるので、その結果を確認しつつ、国公立大個別試験を受けることになります。
参照:大学入試センター「令和7年度試験情報」
国立大学協会「国立大学の2025年度入学者選抜についての 実施要領」
一般選抜の受験スケジュールの管理方法
私立大学の一般選抜は、複数校の受験が可能です。また、国公立大学と私立大学の両方を受験する場合は、私立大学の入試日の合間に、国公立大学の個別試験も受けられます。志望する大学の入試を効率よく受けるために、受験スケジュールはしっかり管理しておきましょう。ここでは、そのポイントを解説します。
連続受験は3日までにする
受験日が重なっていなければ連続受験は可能ですが、試験は1日受けるだけでもエネルギーを使います。連続受験は多くても3日までにしましょう。適度に休憩をして、リフレッシュすることも大切です。
併願校から受ける
どれだけ準備を万端にしていても、受験当日は緊張するものです。特に、初めての受験は緊張して実力が出し切れないケースも多いようです。第一志望試験で最高のパフォーマンスを発揮するためにも、併願校の受験を先に経験しておくと良いでしょう。
入学手続きの日を考慮する
私立大学は受験だけでなく、入学手続きの日程も大学によって異なります。
一般的には、受験の難易度が高くなるにつれて、試験日が後に設定される傾向にあります。発表や入学手続きの締め切りの日も、難関大学の方が遅い時期になることが多いようです。安全校として受けた大学の入学手続きの締め切りが、本命の大学の合格発表の前になることもあります。
本命の大学に合格したら当然、滑り止めは辞退することになりますが、入学手続きで納めた入学金は辞退しても返還されません。入学手続き締切日をきちんと確認し、他の受験校の合格発表日を比べながら、いつの段階で手続きをするかを検討するのが良いでしょう。
エクセルやアプリで可視化、保護者との連携も大事
併願校が何校もあったり、国公立大学と併願していて共通テストも受験したりしていると、それぞれに試験日・発表日・手続きの締め切り日があり、その把握だけでも一苦労です。本人はもちろん、サポートする家族もかなりの負担になるでしょう。
万全の体調で試験日を迎えられるように、また、手続きの締め切りをうっかり過ぎてしまわないためにも、受験スケジュールは保護者と共有して連携を取っておくことをおすすめします。Excel(エクセル)やスプレッドシートなどの表計算ソフトで表を作り、スケジュールを可視化しておきましょう。それを家族の誰もが見えるところに貼ったり、情報共有ができるアプリを使ったりして、家族間で共有しておけば、予定の抜けや漏れも防ぎやすくなります。
受験勉強のスケジュールの立て方と実例
受験勉強に必要な時間は、国公立大学志望なら2500~3500時間、私立大学なら2000~2400時間が必要とも言われています。それだけの勉強時間を確保し、効率よく学習を進めるには、しっかりと考えてスケジュールを立てることが大切です。
高校3年間の受験勉強スケジュール
学校の定期テストとは違い、大学受験では高校3年生までに習ったことすべてが出題範囲となります。学校によっては、習っていないところが出題されるケースもあります。この広い出題範囲に対応するには、高校3年間というスパンで受験勉強のスケジュールを立てることが大切です。
基本的には1年生で基礎学力をつけ、2年生では苦手なところを重点的につぶし、3年生で基礎のおさらいと志望校対策を行うのがセオリーです。志望先が難関大学の場合は、2年生までに基礎力をマスターして、3年生では徹底的に志望校対策をすることもあります。志望校に合わせたスケジュールを立てましょう。
高校の夏休みの勉強スケジュールの立て方
受験において、夏休みをどのように使うかはとても大切です。
1・2年生の夏休みは、基礎力をつけることに使いましょう。とはいえ、実際には部活動や学校の課題で手一杯になり、一日平均2~3時間しか勉強できない人も多いようです。まだ志望校が決まっていなければ、この時期の夏休みにオープンキャンパスに行ったり、いろいろな大学を調べたりして、志望校のイメージを絞り込んでおくといいでしょう。早めに志望校を決めることで対策に使える時間も増え、効率的な受験勉強が可能になります。
3年生の夏休みは、毎日10時間以上勉強する人も出てきます。必ずしも長時間の勉強が良いわけではありませんが、ライバルはそれだけの時間を勉強に費やしていることを考えると油断はできません。1日○時間といった目標を決めて勉強に取り組みましょう。長時間の勉強で飽きないようにするためには、塾や自習室、図書館などを利用するのもおすすめです。
学習内容については、3年生の夏休みが基礎を固める最後のチャンスです。秋からは演習や志望校対策が主になるため、基礎は夏休み中にしっかりおさらいしておきましょう。
浪人生の勉強スケジュールの立て方
浪人生の大まかなスケジュールとしては、夏までに基礎固めをして、秋からは問題演習を行い、応用力や実戦力を磨いていくのがおすすめです。
浪人生は学校に行く必要がないので、現役生よりも受験勉強に時間を割けます。その一方、学校で確保されていた勉強時間は無くなるため、自己管理が大切になります。自分でスケジュールを立てるのが苦手な人や、スケジュール通りに勉強時間が確保できない人は、予備校や塾を利用するといいいでしょう。
東京大学合格者の1日のスケジュール例
ここでは、東京大学に合格した受験者の実際のスケジュール例を紹介します。
東京大学理科一類に合格した北美月さんは、部活があった頃は学校の課題を1~2時間やる程度にしか勉強時間をとれなかったそうです。しかし、部活や授業が休みになってからは空き時間ができ、高校3年生の夏休みには1日10~12時間は勉強するようにしていました。朝型の北さんは、休日は朝5時半には起きて7時には勉強を始めていたそうです。国語の勉強時間は必ず1時間はとるようにするといった、苦手科目の対策も行っていました。
こちらもチェック「駿台から東京大学理科一類へ 受験合格体験記」
志望校別受験勉強のマイルストーン
志望校に合格するためには、いつまでに、何をしなければいけないのか。中間地点の目標(マイルストーン)を設定したほうが、受験勉強のスケジュールを立てやすくなります。ここでは、志望校別に済ませておきたい学習の目安をご紹介します。
東大、京大、難関国公立大を目指すなら
3年生の夏休みまでは、しっかり基礎を固める時期です。基本問題を押さえ、苦手分野を補強しましょう。各教科で必要な知識は、この時期までに覚えておくと後の勉強をスムーズに進められます。共通テストでのみ使う教科は、この時期に対策を終わらせておきたいところです。
9~11月頃には、演習を中心に行い、問題を「解く力」を身に付けます。苦手な問題は繰り返し解いて、解法を身につけましょう。難関国公立大を受験するなら、苦手科目が残った状態はリスクが高くなります。演習を繰り返して、苦手科目でも得点が取れるようにしていきましょう。
12月以降は、共通テストの実戦演習を行い、本番に近い形の演習問題を解いていきます。志望校に合わせた問題演習や、記述式問題の答案作成の練習もやっておきたいです。記述式答案の添削を繰り返し受けることで、その問題に対応するスキルが飛躍的に高まります。
医学部志望なら
医学部は難易度が高く、特に私立大では合格者の半数以上を浪人生が占めます。それだけ勉強量が必要になるので、1・2年生の内容は、2年生が終了する前に完璧にマスターしておきたいところです。また、英単語の暗記や、数学の基本問題の解法の理解などは、3年生になる前にしっかり終えておきましょう。
3年生になってから夏休みまでは、問題演習を中心に行います。問題を解いて基礎に不安があるところはすぐに戻って、苦手なところをなくしていきましょう。志望校の過去問を本格的にやり込むのは冬頃になってからで大丈夫ですが、この時期に一度やっておくと、目標とする合格ラインまでに身につけたい学力レベルが明確に見えてきます。
9~11月頃は、問題演習を繰り返し行い、身につけた知識をすぐに解答としてアウトプットできるようにしておきましょう。志望校によっては、医学部の推薦入試が11月頃から始まるので、早めに過去問に取り掛かっておきたいところです。
12月以降は、志望校の過去問演習を中心に行います。同時に、これまでの総復習を入念に行い、記述式の解答スキルを身に付けることも大切です。新しいテキストに取り掛かるよりも、使っていたテキストや問題集をおさらいして完璧にするほうがいいでしょう。
科目別、受験勉強スケジュールの立て方
科目に合わせたスケジュールを立てることで、さらに効率良く受験勉強を進められます。ここでは、科目ごとの受験勉強スケジュールの立て方を紹介します。
数学…理系は数Ⅲまで、文系は共通テスト対策を
共通テストは数ⅠA、数ⅡBのみですが、理系の学部は個別試験に数ⅢCが含まれるところが多いです。
また、理系は数学の配点が大きく、問題も難しくなるので、数学対策は早めに進めておきましょう。数ⅠA、数ⅡBは2年生までに終わらせて、3年生の1学期から数Ⅲ対策をするのが一般的ですが、難関大学を目指すなら2年時に数Ⅲを先取りして学習しておくとよいでしょう。3年生では早い時期から応用・発展の演習に取り組み、後半には実践力をつけるようにしましょう。
文系の数学は、共通テスト対策が中心になります。難関国公立大学では、文系の学部でも個別試験に数学が必要なところも多いですが、数ⅢCは含まれません。よって、共通テスト対策にもなる数ⅠA、数ⅡBをしっかりやっておきましょう。夏休みまでに基礎固めを行い、2学期以降は演習と過去問題をやり込みます。
国語は、現代文・古文・漢文の順に
現代文・古文・漢文は、基本的に並行して勉強を進めますが、それぞれの特徴に合わせた勉強スケジュールを立てるとよいでしょう。
現代文は短期間で仕上がるものではないので、早めに取り組んで文章の構造を読み解いたり、要点を押さえたりできるような読み方を身につけましょう。夏休み明けから演習問題を通して、得点につながる解答が書けるようにしていきます。
古文と漢文は、暗記が有効な科目です。古文は単語、漢文は句法を中心に、夏休みまでに覚えてしまいましょう。とくに覚えるべき量が多い古文に、多く時間をとるのがおすすめです。
特に東大、京大や一部医学部などでは、個別試験でも国語が必要になりますので、理系科目だけではなく計画的な学習が必要です。
英語は、積み重ねがポイント
大学受験の英語では、かなりボリュームのある長文のリーディング問題が出題されます。最近の傾向としては、長文を読んで理解するだけでなく、図表と組み合わせて情報を理解したり、プレゼンテーションを完成させたりと、多様なリーティング能力が必要となっています。受験本番までにそのレベルに対応できるように、ベースとなる英単語・文法はできるだけ早い時期からスタートさせておきたいところです。
英単語や文法は、3年間を通して積み重ねることが大切です。できれば1・2年生の段階である程度の基礎は身につけておき、高3からは長文読解のトレーニングを進めていくといいでしょう。
リスニングにおいても、単語力はとても大切です。知らない単語は聞き取れないので、リスニングの勉強はある程度単語力がついてから行います。リスニングをスムーズに進めるために、単語は必ず正しい発音で覚えることが大切です。聞き取る力をつけるためには、ディクテーションと呼ばれる「書き取り」が有効でしょう。3年生の秋以降には、リスニングの問題を何度も解いて、聞き取るだけではなく、得た情報を整理・判断して問題を解く力もつけておきましょう。
理科は、暗記だけではない
物理・生物・化学・地学の理科は、確実に得点を稼ぐためにも、暗記するところはしっかり押さえておきましょう。文系は共通テストのみで基礎科目が範囲なので、1・2年生では習ったところを確実にマスターして、3年生の夏休みまでに基礎固め、その後は演習をします。理系は共通テストでも専門科目までが範囲なので、高3で初めて履修する分野がありますが、その学習のためにも同じように高1・2生で習ったところの完全理解は必要です。
ですので、文系理系とも、3年生になってからあまり暗記に時間をとられないためにも、2年生までの範囲は3年生になるまでにマスターしておきたいところです。暗記だけでは対応できない、資料を読みとって考える問題も増えているので、その練習もしておきましょう。
地歴公民は、効率よく暗記を
共通テストでは地歴公民は地理や歴史など10科目から2科目を選択して受験しますが、基本的にはどれも暗記中心の科目です。効率よく暗記をするためにも、単に語句を覚えるだけでなく、そのつながりや背景などを理解しながら覚えるとよいでしょう。地歴公民は暗記の量が得点につながる科目なので、1・2年生で習ったところはその都度しっかり覚えておくことが大切です。3年生ではそのおさらいと、さらに深い知識をつける暗記に取り掛かりましょう。
文系の東大、一橋大、京大などでは個別試験で地歴が必要で、高度な論述対策が必要です。そのためにも、基礎事項は高2までにしっかりと身につけておきましょう。
自分に合った志望校合格のスケジュールを立てよう
受験勉強のスケジュールは、自分の志望校や得意科目、性格、生活スタイルに合わせてカスタマイズすることが大切です。志望校によって必要な科目・配点は異なるので、配点の大きい科目を中心に、苦手な科目を作らないように、スケジュールを組んでいきましょう。
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