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大学受験の漢文勉強法 高得点獲得と志望校別対策のポイント

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執筆:八尾直輝

「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長

漢文を学ぶことは、日本語の成り立ち、文化、思想形成のベースとなり、日本の文化を深く知る機会となり得ます。また大学受験における漢文は、国公立大学志望、共テ利用受験などを考えている人は、対策が必要な科目です。どの科目についても言えることですが、確実に得点をしていくために、しっかり対策していきましょう。

目次

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漢文は短期間で高得点が取れるのは本当か?

漢文は、大学受験の国語科目の中でも比較的短期間で基礎を固めやすい教科として知られています。文章量が少なく、覚えるべき暗記事項も限られているため、効率的に得点を狙いやすい点が大きな魅力です。特に、基本的な句法の習得と書き下しの練習を重点的に行うことで、短期間でも着実に読解力を向上させることが可能です。さらに、共通テストや各大学の入試形式に合わせた学習計画を立てることで、より効果的な対策が実現します。ただし、志望校によっては漢文が受験科目に含まれない場合もあるため、早めに受験科目を確認し、必要な場合は基礎固めを進めましょう。

文章が短く、暗記事項もあまり多くない

漢文の学習を進めている高校生の中には、「古文と比べて漢文の方が読みやすい」といった印象を持っている人が多いでしょう。その理由は、大きく分けて二つあります。第一に、本文の文章量が少ないこと、第二に、覚えておかなければならない暗記事項が少ないことです。

まず、文章量に関して、共通テストの2024年度の例を見てみましょう。古文の本文は1147字にも及ぶのに対し、漢文の本文は漢詩と資料を合わせても188字と、非常に短いことがわかります。短い文章の中で必要な情報を得ることができるため、負担が少なく、読みやすさが感じられるのです。

次に、暗記事項が少ない点についてです。漢文は、使用される漢字が表意文字であるため、普段私たちが使っている現代語の熟語から意味を推測しやすいという特徴があります。例えば、「謝」という字から「感謝」という熟語を連想すれば、「ありがたいと思う」という意味で使われていることが理解できます。このように、漢字の意味をもとに文章の内容をある程度把握することができるため、覚えるべきことが少なく、学習がしやすいのです。

このように、漢文は現代語の知識を活用して文章を理解できるため、古文に比べて比較的読みやすいと言えます。漢文の学習では、このようなメリットを活用していくことが重要です。

句法を覚え、書き下しができれば意味が分かる?!

大学受験に向けた漢文の学習において、最も重要なのは、基本的な句法を覚え、書き下しができるようになることです。この二つをしっかり習得すれば、漢文を読むための基礎が整います。

漢文を読むために必要な句形は、実はそれほど多くありません。基本的な句形は10種類ほど、少し難しいものを含めても15種類程度です。これだけの種類をしっかり覚えることで、漢文のほとんどの文を解釈できるようになります。特に、使役や受身、否定などの句形は、漢文の中でも頻繁に使われるため、一度覚えれば本文を読む際に非常に役立ちます。

次に重要なのは、書き下しができるようになることです。書き下しとは、漢文を日本語として読めるように漢字かな交じりで書き換える作業のことです。書き下しを正確に行うことで、文章の意味を深く理解することができます。書き下しにはいくつかの注意点やルールがありますが、それほど複雑ではなく、すぐに習得できるものが多いです。

もちろん、漢文を理解するためには、句法の知識だけでなく、重要語句の意味や読み方、さらには漢文の背景知識なども必要です。しかし、まずは基本的な句形を覚え、書き下しを正確にできるようにすることが、漢文学習の最も重要な第一歩です。

漢文の学習は、他の科目に比べて比較的短期間で基礎を固めることができます。この基礎をしっかりと身につければ、受験に向けた勉強もスムーズに進むでしょう。

共通テスト国語の1/4の配点だが志望校によっては出番がないことも?

共通テストの国語では、漢文が全体の約1/4を占めているものの、志望校によっては受験科目に含まれないことも増えています。このため、漢文をしっかり学んでおくべきか、事前に調べておくことが重要です。

私立大学の受験においては、特に人文系の学部で漢文が必要とされることが多いですが、その他の学部では現代文と古文だけで受験可能な場合が多くなっています。また、国公立大学では共通テストでは漢文の受験が求められていても、二次試験では漢文が課されないケースもあります。

さらに、最近では私立大学の共通テスト利用入試においても、漢文を含まない現代文と古文だけの科目で受験できる大学が増えてきています。これらの点を踏まえ、大学受験において漢文を学ぶ必要があるかどうか、早いうちに確認しておくことが大事です。

そのため、受験に向けた準備を始める際には、必ず志望校の大学のホームページを確認し、募集要項をチェックすることが大切です。特に、国語の受験科目に「漢文を除く」「現代文と古文のみ」と記載されている場合が多いので注意が必要です。また、国公立大学では、共通テストと二次試験で受験科目が異なることもあるため、二重に確認することをお勧めします。志望校の受験科目に合わせて、効率的に学習計画を立てることが合格への近道です。

いつから始めればいい?大学受験に向けた漢文

大学受験に向けた漢文の学習は、早めに取り組むことが大切です。漢文は、国語の科目の中でも習得すべき内容が比較的少ないため、早期に基礎の学習を終わらせることで、安定して得点しやすくなります。

基本的な句法や書き下しのルールは、高校1年生のうちにしっかりと学んでおきましょう。この段階で基礎を固めておくことで、後の学習が格段に効率よくなります。

高校2年生では読解力を伸ばします。より実戦的な演習を通して、句法やルールを実際の文章に適用する練習を重ねます。特に、文章中の句法の使い方や、文脈に合わせた意味の読み取る力をつけることが大切です。

そして、高校3年生では、志望校対策を中心に演習を重ねます。志望校の出題傾向に合わせた問題集を解き、過去問に取り組むことで、受験本番に備えた実践力を身につけましょう。この時期に他教科の学習の学習をより優先する必要が出てきますので、漢文の学習は早い段階で基礎固めを終わらせることが大切です。

漢文基本の勉強法 5ステップ

漢文は、大学受験において高得点を狙う上で欠かせない科目です。しかし、多くの受験生にとって、その語順や句法、語彙の独特さは大きな壁となりがちです。ここでは、漢文の基本である「書き下し」をはじめ、句法の理解や語彙力の向上、さらに演習や復習といった漢文の勉強の仕方について解説します。漢文は単なる暗記ではなく、文法や語彙、文章構成を体系的に捉えることで効率的な得点アップが可能です。頻出テーマや構成パターンを知り、間違いを見直す習慣をつけることで、着実に実力を高めることが可能です。

書き下しの基本をマスターする

漢文の学習では、書き下しの基本をマスターしておくことは非常に重要です。書き下しとは、漢文を日本語の語順で理解できるように、漢字かな交じりの日本語の文に書き直すことを指します。書き下しは文構造や句形の理解を深めるために欠かせません

書き下しを身につける上で、まず漢文と現代日本語の語順の違いを理解することが肝要です。現代日本語では、一般的に「主語+目的語+述語」の順番で文章が構成されますが、漢文では「主語+述語+目的語」の順になることが多いです。書き下しをする際には、この違いを意識して学習を進めましょう。

また、漢文には日本語の助詞や助動詞に相当する語が、送りがなとして記されています。入試では、送りがなが省略されて出題されることも多いので、送りがながなくても文脈や文構造から適切に補って書き下せるようにしておきましょう。

さらに、漢文の句法についても十分に習得しておくことが重要です。入試では、白文を書き下すことが求められる問題が頻出です。例えば、センター試験の2018年度の漢文では、以下のような設問が出題されました。

これは、傍線部を見たときに、「不若」が「しかず」と読み、「~に及ばない」と訳す比較の句法であること、さらに「未」が「いまだ~ず」と読み、「まだ~ない」と訳す再読文字の句法であることの二点をすぐにわかる必要があります。したがって、どの句法がどのように使われているかを正確に判断し、適切に書き下せる能力を養っておくことが、試験対策として非常に重要です。

漢字の読みや意味を覚える

英語や古文の学習で英単語や古文単語を覚えるのと同じように、漢文でも語彙を増やすことが欠かせません。漢文における語彙とは、漢字の「読みや意味」に相当します。読みや意味の理解を深めるために、現代日本語の熟語を思い浮かべながら学習することが効果的です。

まず、漢字の「読み」についてです。

現代日本語でもよく使われる漢字が登場しますが、漢文においては現代日本語ではイメージしにくい読み方が問われることが多くあります。例えば、「悪」は現代日本語の「悪い」という意味から「あく」と読む用法はイメージしやすいはずです。ただ、漢文では「お」と読む用法がよく問われます。この読み方は、現代日本語で使われる熟語「憎悪」や「嫌悪」などから連想すると覚えやすくなります。

次に、「意味」についても注意が必要です。

漢字の意味も、現代日本語ではイメージしにくい用法を問われることが多いです。例えば、「謝」という漢字は、現代日本語の「謝罪」から「あやまる」、「感謝」から「お礼を言う」という意味を思い浮かべることは容易です。ただ、漢文では「謝絶」から「ことわる」の意や、「代謝」から「おとろえる」の意を知っておくことで、大きなアドバンテージとなります。

句法を覚える

英語で文法を学ぶことが重要であることと同様に、漢文の学習においても、句法を正確に覚えることは必要不可欠です。句法の知識は本文の内容を正しく読み取るための基礎であり、理解が不十分だとそもそも漢文を読むことができません。句法はまた直訳をするだけではなく、句法の活用を積極的に読解に活かすことが読解力向上にもつながります。

たとえば、反語の句法を考えてみましょう。「~か、いや~ではない」という訳し方は多くの受験生が知っていると思います。訳の重要性は言わずもがなですが、読解をする上で後半部分、すなわち「いや~ではない」という部分を注意深く読むことが大切です。ここに筆者の主張や物語の主題が書かれていることが多いという知識があるだけで本文の要点をより効率的に把握できるようになります。

さらに、設問を解く際にも句法の知識は大きな武器となります。特に白文に返り点をつけ、書き下し文に直す問題では、再読文字や使役などの句法の知識を活用することで、不自然な読み方をしている選択肢をいくつも排除することができます。こうした「明確な根拠」を持って選択肢を絞ることができれば、解答の正確性が格段に上がるのです。

演習問題を繰り返しやる

大学受験に向けた漢文の学習では、「演習問題を繰り返し解く」ことが成功への大きな鍵です。もちろん、演習を重ねることはどの教科でも大切ですが、特に漢文ではどのような効果があるのでしょうか。

第一に、本文全体の構成理解が深まる点が挙げられます。漢文では、単なる主張を述べるだけでなく、具体的なエピソードや過去の出来事を引用して説得力を持たせる構成の文章が多いです。同じような構成パターンを何度も経験することで、文章の展開を予測する力が養われ、読解がスムーズになります。

第二に、頻出テーマについての理解が深まります。特に「諫言(かんげん)」は漢文でよく取り上げられるテーマの一つです。君主が過ちを犯した際に、臣下がそれを諫めることが理想的な姿であり、君主もその諫言を真摯に受け入れるべきだという思想が繰り返し描かれます。演習を通じてこうした頻出テーマに触れることで、内容への理解が深まり、問題を解く際に余裕が生まれます。

このように、演習問題の繰り返しは漢文特有の構成やテーマを理解し、読解力を高めるために不可欠です。演習を「ただ解く」のではなく、「理解を深める訓練」と捉えて取り組むことが、合格への確かな一歩となるでしょう。

間違えた問題をその場で確認する

他の科目同様、漢文の学習でも間違えた問題の復習は重要です。以下では、特に漢文の学習で重要になるのは、本文の見直しと設問の見直しの2点です。

1つ目は本文の見直しです。必ず「現代語訳」を確認しましょう。漢文は直訳だけでは意味が通じにくい表現が多いため、自分で読み解いた内容と現代語訳を照らし合わせることが大切です。どこにズレがあったのかを確認し、その部分を重点的に見直すことで、理解の精度を高めることができます。例えば、漢字一つ一つの意味や語順の解釈に違いがないか確認し、意訳されている部分も把握して、自分の読み方を微調整しましょう。

2つ目は設問の見直しです。設問を解くのに必要な知識をその場で確認することが、間違いを繰り返さないためには欠かせません。漢文の設問では、漢字の読みや意味、または句法に関する知識が問われることが多いです。間違えた問題を見直す際には、「どの知識が足りなかったのか」を明確にすることがポイントです。

特に頻出の句法、例えば「使役」や「受身」など、よく出題される句形は毎回見直して覚える習慣をつけてください。その場でしっかり理解し、次回以降の問題で活用できるようにしましょう。

おすすめの漢文学習ノートの取り方

効果的なノートの活用は成績向上の鍵を握ります。特に予習・授業の両方で活用できるノート術は、効率よく知識を定着させ、試験での得点力を高める重要な手段です。ここでは、漢文を苦手とする受験生にも役立つ、具体的なノートの書き方、予習から授業中に活用できるオススメのノートレイアウトを紹介します。

予習編

漢文の予習で行うべきポイントは3つです。

  1. 本文をノートに書き写す

    ボールペンで、漢文の本文をノートに丁寧に写しましょう。これにより、漢文の文章に対する集中力が高まり、文の構造を自然と把握しやすくなります。返り点や送り仮名も正確に書き写しましょう。

  2. 本文の左隣に書き下し文を書く

    本文を読み進める中でわからない句法があれば、その都度教科書や参考書で調べ、リストにまとめます。これを繰り返すことで、句法に関する知識が着実に定着します。

  3. 現代語訳に挑戦

    可能な限り自分で本文の現代語訳をしてみましょう。この作業は鉛筆を使い、後で訂正できるようにしておくとよいです

授業編

授業中は以下の3つのポイントを押さえてノートを活用しましょう。

  1. 漢字や句法の解説を、本文に赤字で書き込む

    先生の説明を聞きながら、ノートの本文に赤字で単語や句法の解説を書き込みます。色を使うことで、復習時に見やすくなります。

  2. 正しい現代語訳を書く

    授業で教わった正しい現代語訳をノートにまとめ、自分の予習と比較しましょう。これで自分の訳の改善点が明確になります。

  3. 板書をメモする

    重要な情報やポイントは、先生の板書を見逃さずにメモしておきましょう。特に、時代や作品に関連する背景知識や、本文内容に関わる故事成語など、派生する内容は必ずおさえておきましょう。

このノートの取り方を実践すれば、漢文の理解がぐっと深まるはずです。ぜひ、日々の学習に取り入れてみてください。

高校漢文の定期テスト対策

大学受験における漢文対策は、効率的な学習方法を理解し実践することが鍵となります。ここでは、定期テスト対策を通じて基礎力を固め、入試本番に向けた応用力を養うための具体的なアプローチを紹介します。教科書の内容を理解する重要性、句法や語句の習得法、漢詩の押韻や対句への注目、さらには書き下し文の音読の効果など、多角的な視点から学習のポイントを解説します。

テスト範囲の文章の意味、ストーリーを把握しておく

高校漢文の定期テスト対策で大切なのは、テスト範囲の文章のストーリーをしっかりと把握しておくことです。この作業は、単に点数を取るためだけでなく、漢文の読解力を高めるために必要な重要なステップです。ここでは、その意義を再確認してみましょう。

一つ目は、漢文の文章に共通する流れや構成を理解することで、初めて見る文章にも対応できる力を養うことができる点です。漢文には、具体的な例やエピソードから主張に至る構成がよく見られます。教科書に載っている文章でも、そのような構成のものが多く、そうした文章を数多く読んでいくことで、自然と読解力が身に付きます。こうした基礎力を固めておくことは、テスト本番での文章の読み解きに大きく役立つでしょう。

二つ目は、教科書に載っている漢文の文章が多くの有名作品から抜粋されている点です。これらの作品は、後の日本の古典文学にも大きな影響を与え、しばしば引用されています。例えば、『枕草子』の「雪のいと高うふりたるを」の段では、中宮定子の問いかけに対し、清少納言が白居易の漢詩をふまえて対応する場面が描かれています。このように、漢文の名作は後の日本の文学にも色濃く影響を与えており、漢文やその内容を理解することは、他の文学作品の理解にも繋がります。

教科書の脚注、フリガナがついている漢字の読み、意味をチェック

漢文の定期テスト対策において、教科書の脚注やフリガナがついている漢字の読み・意味をしっかり確認することはとても重要です。

脚注には、本文中の語句の意味の説明だけでなく、読解の手助けとなる貴重な情報が多く含まれています。たとえば、故事成語の背景や、作者や作品の時代背景といった情報は、直接テストで問われる機会は少ないかもしれません。しかし、漢文の読解力を向上させる上で、これらの知識は大きな助けとなります。また、有名な漢文の背景知識は他の文章を読む際にも応用可能です。学ぶほどに理解が深まり、スムーズな読解ができるようになります。

さらに、フリガナがついている漢字の読みや意味を確認し、覚えていくことも大切です。高校1・2年生の段階では注釈付きで学ぶ内容も、最終的には自分の力で読めるようになることが求められます。特に難関大学の入試では、漢文に関する知識の多さが合否を分ける要因となることも珍しくありません。そのため、定期テスト範囲の漢字や語句をコツコツ覚え、基礎力を固める習慣をつけることが、大学受験に向けた大きな一歩となります。

範囲内で出てくる句法はしっかりマスターしておく

漢文の学習では、定期テストの範囲内に出てくる句法を確実にマスターすることが重要です。範囲内の文章には、ほぼ必ず句法が含まれています。その句法を一つひとつ着実に習得していくことが、漢文の基礎力を固め、応用力を高める鍵となります。

まず、教科書を活用しましょう。多くの場合、本文の末尾に句法の解説がまとめられています。この部分をしっかり確認し、例文とともに理解を深めることが大切です。特に学習初期の文章では、一つの文章に一つの句法が含まれていることが多く、例えば「虎の威を借る」という文章では使役表現など、基本的な句法を効率よく学べるよう工夫されています。

なお、教科書ワークや傍用問題集などが手元にある場合には、そちらも活用していきましょう。それらの教材には、句法の知識を確認するための練習問題がついているはずです。その練習問題を解き、書き下しと現代語訳が正確にできるようになるまで、繰り返し訓練していきましょう。

ちなみに、句法の知識をさらに強化したい場合には、学校で使用している教材とは別に、句法習得用の問題集を活用してみましょう。別の問題集で、定期試験の範囲の句法の問題演習を行うことで、さらに理解を深めることができるうえに、模擬試験や入試問題などの初見の問題にも対応できる力をつけることができます。

書き下し文を音読する

書き下し文を音読したことはありますか?方法は知っていても、実際に取り組んだことのある人はあまりいないかもしれません。しかし、特に定期テストの対策として、この方法は非常に効果的です。今回はその理由と具体的な取り組み方を解説します。

まず、音読をすることで漢文特有のリズムや文体に慣れることができます。書き下し文は古文の文法に基づいて書かれており、現代日本語とは異なる読み方やリズムがあります。これを目で追うだけではなく、声に出して読むことで、漢文独自のリズム感を体得することができます。

さらに、音読を通して漢文特有のルールを自然に反復し、句法や漢字の使い方を定着させることが可能です。定期テストに出題される文章には、重要な句法が必ず含まれています。それらを確実に定着させるためにも、音読を通じて何度も確認し、知識を自分のものにすることが重要です。

慣れてきたら、少しステップアップした勉強法にも挑戦してみましょう。書き下し文を見ずに、漢文の原文だけを見て頭の中で書き下しを行い、その上で音読する練習です。この方法を行うと、句法やルールが曖昧な箇所やミスに気づけるため、定期テスト前の総仕上げとして非常に役立ちます。

漢詩の場合は、詩の種類、押韻・対句などもチェック

漢文の学習では、漢詩の理解が重要なポイントになります。特に定期テストや大学入試では、詩の形式やルールに関する問題が頻出です。ここでは、漢詩を学習する際に押さえておくべき3つのポイントを整理していきます。

1つ目は漢詩の種類を覚えることです。

たとえば、五言絶句や七言律詩といった形式の名称は必ず覚えましょう。テスト範囲の漢詩については、授業で形式の説明があるはずです。形式ごとのルールや特徴をしっかりと理解し、暗記しておくことが大切です。

2つ目は押韻のルールを覚えることです。

漢詩では、偶数句末(2句目・4句目など)の音が韻を踏むように作られています。この「韻を踏む」というルールは、漢詩の基本中の基本です。ただし、注意すべき点は、音読みで考えるという点です。書き下しを行う際は訓読みで読むことが多いので、音読みに変換して考えることを忘れがちです。必ず自分で音読みに変換する練習をしておきましょう。

3つ目は対句の活用です。

対句とは、文構造や意味が対応する句が並んでいる状態を指します。特に律詩では、3句目と4句目、5句目と6句目が対句になっていることが多いです。対句を意識することで、返り点や文意の理解がしやすくなります。これを活用すると、読解がスムーズに進むだけでなく、テストや入試問題の得点アップにもつながります。       

漢文学習のための参考書の選び方

大学受験において漢文は、多くの受験生にとって得点源となる重要な科目です。しかし、その特有の文構造や句法の理解、さらに実践的な読解力を身につけるためには、効率的かつ継続的な学習が求められます。ここでは、基礎知識の習得から実践問題への取り組み方まで、効果的な漢文対策のポイントを解説します。

基礎固め、基礎知識のインプットのために

漢文の学習において、基礎知識として身につけるべき内容は、漢文特有の文構造、句法の知識、古文文法との違い、そして漢詩のルールなどが挙げられます。以下、基礎の定着に適した教材を紹介します。

基礎固めを効率的に進めたい人には、古典文法10題ドリル 漢文編をおすすめします。この教材は、これから漢文の学習を始める人はもちろん、受験生で基礎知識の抜けを補いたい人にも最適です。受験に必要な漢文の基礎知識が丁寧に整理されているだけでなく、ドリル形式の短文で基礎を確認した後、「チャレンジ問題」で応用力を養う構成になっています。「チャレンジ問題」の解説内容が充実しているため、句法の学習だけでなく、漢文読解の基礎を固める目的で使用することもできます。同様の目的で、さらに演習量を増やしたい場合には、『基礎からのジャンプアップノート 漢文句法 演習ドリルも活用していきましょう。

なお、これらの教材を使う時には、1周目はテキストに掲載されている句法の基本情報を参照しながら問題を解いて構いません。実際の文章中での句法の使われ方を確認しながら、まずは句法の基本となる形を習得していきましょう。そのうえで、2周目は句法の基本情報を参照せずに自力で解いてみましょう。より確実に句法の知識を習得するために、このようなやり方で取り組んでみてください。

実践問題を繰り返しやる

漢文の読解力を向上させるためには、頻出テーマに基づいた文章を多く読み、背景知識を深めることが重要です。例えば、宰相としての理想的な在り方を説く文章や、道徳的な教訓を含む文章は、入試問題でよく取り上げられる分野です。こうしたテーマは繰り返し出題されるため、過去問や問題集で何度も触れることで、解答のスピードと精度を上げることができます。教材を選ぶ際には、こうした背景知識やテーマについての解説が充実したものを選びましょう。同様のテーマについての類似問題に対応する力を身につけることができます。

具体的な教材として、難関大突破 新漢文問題集がおすすめです。この問題集は、頻出テーマに基づいた「演習編」15題で基礎を徹底的に固め、その後「実戦問題編」10題で難関大レベルの問題に挑戦できる構成となっています。句法を一通り学び終えた段階で取り組めば、基礎から応用まで無理なくレベルアップすることが可能です。また、問題には丁寧な解説がついており、自分の弱点を確実に克服できます。さらに高いレベルの演習を積み重ねていきたい場合には、得点奪取 漢文《記述対策》-改訂版-がおすすめです。国公立大学を受験する場合には、この教材を活用することで、既習の頻出テーマに関する知識を記述問題での得点力につなげることができます。

駿台文庫 漢文 参考書

共通テストの漢文対策

共通テストの漢文で9割以上の高得点を狙うには、句法の習得、訓読スピードの向上、白文対策の3つが重要です。句法は「再読文字」「使役」などの基礎から「比較」「詠嘆」などの応用まで幅広く抑え、問題解答への応用力を高めることがポイントです。また、共通テストの厳しい時間制限を考慮し、返り点や背景知識を活用して訓読スピードを向上させましょう。さらに、白文対策では、句法の知識と文構造の理解を深めることが鍵です。

句法をしっかりマスターしておく

漢文の共通テストで高得点を目指すなら、句法の習得が不可欠です。句法をしっかり身につけることで、問題文をスムーズに理解し、設問への対応力が格段に上がります。

まずは「再読文字」「使役」「受身」「疑問・反語」といった基本的な句法をマスターすることが重要です。これらは漢文の読み方の土台となるため、得点がまだ5割から6割程度にとどまっている人は、まずこれらの句法の学習から始めるのが効果的です。

さらに、高得点を狙うなら「比較」「限定・累加」「抑揚」「詠嘆」といった応用的な句法にも取り組む必要があります。このレベルまで抑えることで、問題文が一通り理解できるようになり、8割程度の得点が見込めます。

ただし、高得点を取るためには、単に句法を覚えるだけでは不十分です。重要なのは、それを実際の問題でどう活用するかです。たとえば、傍線部の解釈を問う設問では、一見すると文脈判断が求められるように思えても、句法の知識を駆使することで選択肢を効率的に絞り込むことが可能です。共通テストで9割以上を狙う人は、この「句法の応用力」まで磨くことが必要です。過去問演習を繰り返す中で応用力を身につけ、安定して得点できる状態を目指していきましょう。

訓読のスピードをあげられるようにする

共通テストの漢文のポイントはスピードです。特に、訓読のスピードを上げることが対策の重要なポイントです。共通テストの国語は制限時間が厳しく、現代文や古文の分量が多いため、漢文はなるべく短い時間で済ませたいものです。訓読スピードを向上させるために、以下の4つのポイントを紹介します。

  1. 返り点の用法をマスター

    まず基本となるのが、返り点の正確な理解です。レ点や一二点はもちろん、上下点を含む複雑な文構造でも瞬時に対応できるまで練習しましょう。これができていないと、スピード以前に正確な読解が困難です。

  2. 句法の知識を習得

    「再読文字」「使役」「受身」「疑問・反語」など、頻出の句法は必ず押さえておきましょう。これらを見た瞬間に意味や文構造を把握できることが理想です。普段から例文を使って練習し、定着を図りましょう。

  3. 背景知識を活用

    背景知識を持つことも重要です。例えば、儒教的な価値観の影響で、親孝行を表す「孝」という概念が重視されることを知っていると、文章の内容が予測しやすくなります。この予測が訓読スピードを大幅に上げる助けになります。

  4. リード文や注釈を活用

    設問に付随するリード文や注釈の情報を見逃さないこともポイントです。これらの情報を活用することで、本文の内容がよりスムーズに理解でき、全体のスピードアップにつながります。

白文対策はどうする?

大学入試の共通テストで出題される漢文では、傍線部のみ「白文」(返り点や送り仮名が付されていない状態の漢文)の状態で出題される問題が頻出です。このため、白文に慣れ、正確に理解する力を養うことが重要です。

白文対策として、まず何よりも句法の知識が重要です。たとえば、「使役」、「受身」、「疑問・反語」のような基本的な句法は、白文の状態で出題されていても見抜くことが求められます。問題を解く際、句法を知っているだけで選択肢を大幅に絞ることができます。例えば、共通テストの漢文の白文問題では、傍線部に「使役」の句法が含まれていると判断できるだけで、5個ある選択肢のうちの2~3個は明らかに「使役」の句法を含んでおらず、それらの選択肢を消せるようになっていることが多くあります。また、意外と忘れがちな返読文字にも注意しましょう。返読文字は、文字通り必ず返り点がついて返読することが求められる漢字ですが、共通テストではしばしば、選択肢問題の「誤選択肢」として、返読されていない形で登場することに注意が必要です。

次に、文構造の理解を深めることも欠かせません。漢文は「主語→動詞→目的語」という文の構造を基本としていますが、選択肢にはこの構造を無視したものが含まれることがあります。たとえば、「主語→目的語→動詞」といった順序の選択肢があれば、誤りと判断できます。文構造の正確さをチェックする力を養うことが、白文問題を解く鍵となります。

白文対策の鍵は、「句法の暗記」と「文構造への理解」の二本柱をバランスよく強化することです。練習を積み、これらの力を磨くことで、共通テストの漢文に自信を持って挑めるようになるでしょう。

東大、京大、早大 志望校別漢文対策     

大学受験における漢文対策は、志望校ごとの特徴を理解し、それに合わせた学習を行うことが成功の鍵です。東大では設問の高度さが特徴で、漢字の多義性や文構造の理解、文脈に即した自然な現代語訳の力が求められます。一方、京大では古文との融合問題が中心であり、文脈を活用した柔軟な対応が重要です。早稲田大では学部ごとに形式が異なり、特有の高難易度な出題形式に対する徹底した演習が必要です。

東大入試の漢文対策

東京大学の入試における漢文は、本文自体の難易度はそこまで高くありません。しかし、設問のレベルが非常に高く、正確な答案を作成するには、総合的な知識と技能が必要です。以下に、効果的な対策について解説します。

まず重要なのは漢字の知識です。東大の漢文では、現代語でも使われる漢字が、意外な意味で用いられることがあります。例えば、「服」という漢字が「(薬を)服用する」、あるいは「衆」が「多い」という意味で使われた過去の出題があります。このような一見分かりにくい意味を正確に理解するため、過去問や問題集で漢字の多義性に慣れておきましょう。

次に、句法と文構造の理解が鍵となります。東大では、傍線部に返り点は付いているものの送り仮名が省略された状態で設問が出される傾向が近年続いています。この形式は、句法に加え、傍線部の文構造を正しく捉える力を問うものです。

また、毎年必ず出題される現代語訳の設問にも注意が必要です。東大の入試では、ただ単に本文を訳すだけでなく、前後の文脈や本文全体の趣旨を踏まえ、必要な補足を加えて分かりやすく表現する力が求められますです。普段の練習から、文脈に即した自然な訳を心掛けましょう。

さらに、数年に一度出題される漢詩への対策も欠かせません。漢詩が単独で出題される場合もあれば、漢文と組み合わせて出題されることもあります。漢詩では、押韻や対句といった基本ルールの理解はもちろん、内容を深く解釈する力が求められます。過去問や問題集を活用し、詩を解釈する練習を積むことが重要です。

東京大学を志望校としている方はこちらも参照してください。

東京大学合格への道

京大入試の漢文対策

京都大学の入試では、漢文が単独で出題されることはありません。文系では古文との融合問題として数年に一度出題される程度で、理系においては2011年以降、漢文を含む問題は出題されていません。そのため、京大志望の受験生にとって漢文は大きな負担ではありませんが、最低限の対策は必要です。

古文との融合問題の場合、古文の内容に関連する漢文や、古文中で引用されている漢文が出題されることが一般的です。このような問題では、漢文の内容が古文の前後に説明されていることが多いため、古文の文脈を手がかりに解けば十分対応可能です。融合問題だからといって難易度が特別高いわけではないので、過度に構える必要はありません。

文系の受験生は、まず過去問を解き、漢文が含まれる年度の出題形式や感覚を掴むことが重要です。その後、『国公立標準問題集 CanPass 古典』などの教材を使い、標準的な国公立大学の問題に慣れておくと安心です。一方、理系の受験生は、漢文が共通テストで必要となるため、その対策をしっかり行えば十分対応可能です。京大の問題も共通テストの延長線上で解けるレベルに収まっています。

全体を通じて、漢文の学習に多くの時間を割く必要はありませんが、基本的な読解力を養うことが重要です。融合問題に取り組む際は、古文と漢文の関係性を意識しながら、柔軟に対応しましょう。

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早稲田大入試の漢文対策

早稲田大学は学部ごとに出題の形式が大きく異なります。法学部、文学部、人間科学部、教育学部(文系)、商学部で単独の大問として出題され、文化構想学部や社会科学部では現代文もしくは古文と融合した形式で出題されます。一方、政治経済学部やスポーツ科学部、国際教養学部では国語がそもそも受験科目に含まれていません。まずは志望学部の入試要項を確認し、国語の有無や漢文の扱いを把握することが大切です。

早稲田大学の漢文は、他大学と比べて難易度が非常に高いのが特徴です。本文や設問には注釈がほとんどつかず、高い語彙力が要求されます。傍線部の解釈を問う選択問題では選択肢が意訳されており、正確な判断が難しい場合が多いです。傍線部の表現を直訳して考えようとしても、選択肢に書かれている解釈があまりにも直訳からかけ離れているため、どれも誤りの選択肢であるように思えてしまいます。

また、書き下し文を選ぶ設問では全ての選択肢がひらがなで書かれており、選びにくさを感じるでしょう。さらに、古漢融合文や現古漢融合文では分量が多く、現代文と漢文、古文と漢文の文章で述べられている内容の共通点や相違点を自分で把握しながら読解する力も求められます。

このように、早稲田大学の漢文は独特で、高い実力が求められる試験です。まずは共通テストで8割以上を安定して取れる基礎力を固め、その後、過去問演習を徹底的に行うことが重要です。市販の参考書では早稲田大学特有の形式に対応しきれないため、『早稲田の国語[第9版]』など、専門の問題集で演習量を確保しましょう。

早稲田大学と並んで評される慶應義塾大学は、国語の代わりに小論文での入試となるため、古文、漢文が入試科目にありません。

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漢文を勉強するメリット

漢文を学ぶことには、日本の文化や歴史、そして日本語そのものを深く理解するという大きな意義があります。一見すると中国の古典である漢文がなぜ日本と関係するのか、不思議に思うかもしれませんが、その関わりは日本の歴史を紐解くことで見えてきます。

日本では、かな文字が生まれる以前、漢字のみが文字として使われていました。そのため、公的な文書はすべて漢文で記録されており、国の運営に欠かせないものでした。たとえば、奈良時代に編纂された『日本書紀』は、すべて漢文で書かれています。

かな文字の普及後も、漢文はその公的な役割を失うことはなく、特に貴族や知識人にとって必須の教養であり続けました。たとえば、平安時代に書かれた、藤原道長の『御堂関白記』や藤原実資の『小右記』は、「変体漢文」と呼ばれる、漢文に日本語の要素を取り入れた独自の文体で記され、当時の貴族社会や政治の様子を知る貴重な資料として現代に伝えられています。

さらに、漢文は明治時代においても重要な役割を担いました。近代化に伴い、西洋の思想や言葉が日本に導入された際、それらを適切に翻訳し、日本語として定着させるために漢文の知識が活用されました。例えば、「society」に「社会」という訳語をあてられたのには、近代日本の知識人たちの漢文の素養が重要な役割を果たしました。「society」という日本語にはなかった概念の用法を取り入れる際、さまざまな新しい言葉が考え出されましたが、どれも的を射た表現にはなりませんでした。しかし、古い時代から漢語として用いられていた「社会」を「society」の訳語としてあてたことで、その概念と用法を受け入れることができたのです。このようにして、漢文が新たな思想形成や文化受容に貢献したのです。

このように漢文は、古代から近代に至るまで日本の文化や歴史、日本語の形成に深く関わっています。漢文を学ぶことで、日本の文化や言葉がどのように形成され、私たちの日常生活に影響を与えているのかを知ることができます。

著者プロフィール

八尾直輝の写真 八尾直輝 株式会社プラスティー教育研究所

「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。

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