駿台入試ニュース 2024 VOL.6
- 2024年度私立大学等 入学志願動向について
- 9月13日付で、日本私立学校振興・共済事業団は「令和6(2024)年度 私立大学・短期大学等 入学志願動向」を発表。入学定員充足率が100%未満の大学は59.2%と6割近くになり、過去最高を更新しました。特に小規模大学の充足率ダウンは著しく、大規模大学との間で二極化が進んでいることを示唆する結果となりました。
2024年度私立大学等 入学志願動向について
入学定員充足率が100%未満の大学は約6割で過去最高
9月13日付で、日本私立学校振興・共済事業団は「令和6(2024)年度 私立大学・短期大学等 入学志願動向」を発表しました。集計校数は前年度から2校減少して598校でした。そのうち、入学定員充足率(以下、充足率とする)が100%未満で定員割れをしている大学は34校増加して354校、大学全体に占める割合は5.9ポイントアップの59.2%となり、過去最高を記録しました。
全体の概況としては、志願者数、受験者数、合格者数、入学者数はいずれも前年度から減少しましたが、入学定員は1,239人増加して503,874人でした。その結果、充足率は1.40ポイントダウンの98.19%となりました。その他、概況については表1の通りです。
【地域別の動向】学校所在地ごとの集計では三大都市圏においても未充足
地域別の動向(集計は学校所在地ごと)について、充足率の観点から見ていきます。定員充足率が100%を上回ったのは、「関東(埼玉、千葉、東京、神奈川を除く)」、「東京」、「大阪」、「福岡」でした。また、前年度と比較して定員充足率がアップした地域は、「関東(埼玉、千葉、東京、神奈川を除く)」、 「東海(愛知を除く)」、「大阪」、「兵庫」、「福岡」であり、 「関東(埼玉、千葉、東京、神奈川を除く)」の4.88ポイント、「福岡」の 4.67ポイントアップが目立ちました。一方で、それ以外の地域はいずれもダウンで、特に「四国」(8.20ポイントダウン)、「埼玉」(6.31ポイントダウン)、「東北(宮城を除く)」(5.86ポイントダウン)が目立ちました。
人口の多い三大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫)とその他の地域を比較すると、三大都市圏の充足率は99.87%(1.50ポイントダウン)、その他の地域は92.48%(1.06ポイントダウン)です。三大都市圏においても100%を下回る結果となりました。前年度まで定員が充足していた「愛知」、「京都」がいずれも未充足となったほか、「神奈川」は2年連続、「埼玉」、「千葉」、「兵庫」は4年連続で未充足の状況が継続しています。
【収容定員別の動向】小規模大学の厳しい現状が浮き彫りに
続いて、大学の規模(収容定員)別の動向について見ていきます。充足率が最も高いのは大規模大学(収容定員8,000人以上)で103.45%、続いて中規模大学(収容定員4,000人以上8,000人未満)で101.33%、最も低いのは小規模大学(収容定員4,000人未満)で88.86%でした。前年度との比較ではいずれもダウンですが、大規模大学は0.14ポイントダウン、中規模大学が0.65ポイントダウンだったのに対して、小規模大学は3.76ポイントダウンと大きくなっています。
こうした傾向は地域別に見ても共通しています。三大都市圏とその他の地域、いずれにおいても大規模大学、中規模大学は定員が充足している一方、小規模大学は三大都市圏で90.31%(3.68ポイントダウン)、その他の地域で87.00%(3.83ポイントダウン)となっています。総じて、定員を充足できる大規模大学とそうでない小規模大学との二極化の兆候が見られます。小規模大学は私立大学全体の77.3%を占めていますが、厳しい現状が浮き彫りになりました。
【系統別の動向】「保健系」、「家政学」の充足率は5ポイント以上ダウン
続いて、学部系統別の動向について見ていきます。学部系統別では、充足率がアップした系統はなく、全ての系統でダウンしました。特に「保健系」(5.75ポイントダウン)、「家政学」(5.23ポイントダウン)が目立ちました。女子大に多く設置され、女子受験生の割合が高いこれら学部系統の充足率のダウンは、女子受験生の進路選択の傾向が変わりつつあることを示唆しています。
充足率のダウンが比較的緩やかだった系統として、「教育学」(0.03ポイントダウン)、「社会科学系」(0.22ポイントダウン)、「人文科学系」(0.32ポイントダウン)等が挙げられます。これらの学部系統には充足率が高い大規模大学の学部が多く含まれるため、充足率のダウンが抑制されていると推察されます。
私立大学のこれから
これまで充足率の観点から私立大の動向について述べてきました。中央教育審議会は、8月に公表した資料において「今後は、定員未充足や募集停止、経営破たんに追い込まれる高等教育機関が更に生じることは避けられない」としていますが、まさにそうした状況が進展しつつあることを示す結果といえるでしょう。2023年には恵泉女学園大、神戸海星女子学院大、2024年にはルーテル学院大、高岡法科大の次年度以降の学生募集停止が発表されており、今後も統廃合の流れが続いていくことは想像に難くありません。
中央教育審議会の資料では、こうした状況を踏まえて「規模の適性化」を図るべきとしています。そして、その方策として私立大学の学部等の新設および安易な公立化の抑制、定員未充足や財務状況が厳しい大学等を統合した場合のペナルティ緩和、収容定員を引き下げやすくする仕組みの構築などを挙げています。
私立大学について、同資料において「学士課程学生の約8割の教育を担うなど、多様な社会経済的背景・ニーズを持った学生に対して門戸を開くとともに、地方においてはアクセス確保にも重要な役割を果たしてきた」と述べられているように、私立大学は多様な人材を受け入れることで国民の知的水準の向上、また、地方においては進学機会の少ない地元の受験生の受け皿としての役割を担ってきました。今後、「規模の適正化」が私立大のあり方にどのような影響を与えるのか、注目されます。
(詳細は、別表参照。なお、4年制大学のみを掲載していますので、短大については、下記リンク先の日本私立学校振興・共済事業団HPをご参照ください。)