文転を迷う人へ いつまでに決める?後悔しないために考えておきたいこと

監修者:駿台予備学校 教務課

高校での進路選択で理系を選んだものの、「やっぱり文系の学部に進学したい…」と思い悩む人もいます。この記事では、進路を理系から文系に変更する、いわゆる“文転”について解説します。文転のメリット・デメリットや、成功させるためのポイントを知り、文転するかどうかを考える際に役立ててください。

目次

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文転とは理系選択から文系学部を志望すること

文転とは、高校での進路選択の際に理系コースを選んだ学生が、文系学部を受験することです。進路選択で理系を選ぶということは、当然志望学部も理系となるのが一般的なので、あえて“文転”という言葉を使うことが多いようです。

なぜ文転が必要になるのか?

進路選択で文系・理系を選ぶとき、多くの学生は高校1年生の段階での成績や、得意・不得意で決めがちです。しかし、学習を進めるうちに、また志望大学や学部を調べていくうちに目指す学部が具体的になり、「行きたい学部が文系だった」となるようなケースもあります。

また、高校の数学は、中学と違ってかなり難易度が高く、学年が上がるにつれて、ついていけないと感じる生徒も出てきます。苦手意識が芽生えた結果、理系学部に進学する気持ちが損なわれるケースもあるかもしれません。

逃げだ、もったいないと言われてしまうこともある?

得意だと思っていた数学や理系科目でついていけないと感じるようになり、そうした科目の勉強を避けられるという理由で文転をすると、同じく理系志望で頑張る周囲から「逃げではないか」「楽をしようとしている」と言われることもあるかもしれません。また、理系学部を受験しないことによって、今まで勉強してきたのに不要になる科目もあり、人によっては「もったいない」と言われることもあるようです。

こうした周囲の声に惑わされないことが、文転を成功させるカギです。最後まで受験勉強をやりきるには、文系学部を志望すると決めた自分の判断に自信を持つこと、貫く姿勢が大切になります。
きっかけは苦手科目であったとしても、文系学部や学科に魅力を感じ、文転をしたのであればそれは一つの正しい選択です。
気持ちが揺らいで、受験勉強に支障をきたさないよう、まずは文転のメリット・デメリットを知り、熟考したうえで本当に文転するか決めましょう。

文系コースを選択した後に、理系進学を考えている人は、こちらの記事を参照してください。

文系から理系コースに変わることは理転

文転を決めるタイミングはいつまで?

文転すると、当然ですが受験科目が変わります。受験勉強のスケジュールも踏まえて、いつまでに決断するべきか確認しておきましょう。

できれば高校3年の4月までに

コース選択のタイミングは、通っている高校によっても変わってきます。進級のタイミングで文系・理系コースに分かれると、各科目の履修範囲や授業進度が変わってきます。理系コースの授業では、文系学部の受験に必要な範囲外に力を入れる場合も多いです。とくに大きな影響があるのは、数学Ⅲを取るかどうか、理科専門科目などがあげられます。効率的に受験勉強を進めるためにも、コース選択の前、数Ⅲを取るかどうかの判断をする高校3年生の4月までに決めた方が良いでしょう。

遅くとも高校3年の夏までに

それでもなかなか決断できない人は、遅くとも高校3年生の夏休みに入るまでに決めましょう。
高校3年生の夏休みは、受験勉強を集中して進める大事な時期。これ以上遅くなると、受験対策が間に合わない科目や単元が出てきます。

同じ文転でも、国公立大学志望と私立大学志望で差が出る

文転をいつまでに決めるべきなのかは、志望校が国公立大学か私立大学かでも変わってきます。

国公立大学志望で学習を進めてきたなら、大学入学共通テスト対策として文系科目の勉強も進めていることもあり、3年生の夏までのタイミングでも間に合うことが多いようです。しかし、私立理系コースを選択していて文系科目に触れていない場合は、文転することで一から文系科目を学ぶ必要が出てきます。私立理系志望だった人が文転をするなら、できるだけ早い段階で決断した方が良いでしょう。

浪人してから文転しても、成功できるか?

浪人してから文転を考えるケースもあるかもしれません。この場合、成功するかどうかは、現役時代に国公立大学・私立大学どちらを志望していたかによっても変わってきます。

現役時代に国公立大学の理系学部を目指していたのであれば、文系科目を一度は勉強しているため、可能性は十分にあるでしょう。一方で、現役時代に私立大学の理系学部を目指していた場合、同様に文系科目を一から勉強しなければならないため、難易度は上がります

大学入学後に、理系から文系に志望が変わった場合には、同じ大学、あるいは別の大学の文系学部に、志望選択を変更する、編入するという方法もあります。

文転のメリットは?

文転をするのであればなるべく早めが良いということはお伝えしましたが、続いて、本当に文転するかどうか、その判断をするために、文転することのメリット、デメリットを具体的に見ていきましょう。
文転をするメリットは、大きく分けて3つあります。

数学、物理を受験科目からはずせる

高校の数学、物理は中学の頃に比べぐっと難易度があがります。比較的得意だと思っていたが、学習を進めるうちに、ついていくのが難しい、苦手意識が強くなってしまうこともあります。文転することで、受験科目から数学Ⅲや応用理科科目を受験範囲から外すことができ、他科目に注力できるようになります。

数学が武器になる

一方で、大学入学共通テストを受けるなら、数学(数学Ⅰ・数学A、数学Ⅱ・数学B・数学C)は国公立大学志望者には必須科目です。「もともと数学は得意だった」という人は数学が得点源となり、ほかの文系学生に対して差をつけられるかもしれません。
また私立大学文系学部でも、地歴公民の代わりに数学で受けられるところもあります。地歴公民で受験する学生数に比べ、数学で受験する学生は比較的少なくなるので、アドバンテージになるかもしれません。

選択できる学部範囲が広い=併願できる大学・学部が多い

文系学部は、理系学部に比べて学部・学科のバリエーションが豊富です。
現在の日本の学位取得者の65%は文系学部です。
そのため、文系学部の方が、理系学部よりも併願できる大学・学部が多くなります。選択肢が多いことで、併願先の大学の難易度のレベル幅も広くなり、自分のレベルに合わせた大学を選びやすいのもメリットと言えるでしょう。

文転のデメリットは?

当然ですが、文転はメリットだけではありません。決断する前に、デメリットも把握しておきましょう。

受験で使えない科目でも定期テスト対策は必要になる

高校で習う授業の中には、多くの文系学部の受験に不要な教科もあります。たとえば、数学Ⅲ、物理などです。ただし、定期試験は通常どおり受けることになるので、受験に必要ないからといって勉強しないわけにもいきません

就職の時に、就きたい職業につけない可能性もある

就職の際に、理系学部に進まないと選択できない職種や業種もあります。研究職や開発職などに就きたい場合、理系学部の修士が必要な場合もあります。文転するのなら、将来希望する職種や業種も踏まえて考えましょう。

理系科目で受験しやすい学部、入学してからも文転できる大学

数学が苦手というわけではないけれど、理系を選択しているが、文系学部を受験したい。あるいはぎりぎりまで文理で悩んだが、理系で大学に入学し、入学後、やっぱり文系学部で学びたいと思いいたった、そんな人は、受験生であれば理系科目で受験できる文系学部を目指す、入学後であれば進級時に文転するということも可能です。ただし、そのためには大学にそうした制度があることが前提になるので、注意が必要です。ここでは入学してから文転できる大学の例をご紹介します。

東京大学には進学選択制度がある

東京大学には、「進学選択制度」と呼ばれる制度があります。東京大学に入学すると、すべての学生が教養学部前期課程に2年間所属し、1~2年次の成績をもとに3年次から専門的な学部に分かれるというものです。所属している科類に応じて選択できる学部は基本的には決まっていますが、すべての科類からどの学部にも進学できるという枠も設けられています。大学入学後の2年間で、自分が本当に進みたい学部をしっかり見定められます。

参照

東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部 前期課程教育と進学選択

早稲田大学、慶應義塾大学で入学後に文転できる学部は?

早稲田大学・慶應義塾大学において、2023年8月時点で入学後に転部・転科できる文系学部や総合科学部をまとめました。いずれも在学生を対象とし、試験を受けられる学年は学部によって異なります。

<早稲田大学>

政治経済学部、法学部、文学部、教育学部、スポーツ科学部

参照

早稲田大学 入学センター 学部入試情報

<慶應義塾大学>

文学部、経済学部、法学部(法律学科・政治学科)、商学部、総合政策学部、環境情報学部

参照

慶應義塾大学 塾生サイト

文転におすすめの学部はある?

途中まで理系の勉強を進めていたことを考えると、数学も素養として求められる経済・経営学部や、商学部、情報系学部、人間科学系学部などは受験しやすい、あるいはアドバンテージが取りやすい学部と言えるでしょう。
ですが、大切なことは勉強したことを活用できるかということよりも、まず目指す先が“自分が興味を持てる学部かどうか”です。目指す先があって、そこで理系コースで学んだことが活用できるか?と考えるようにしてください。

文転を成功させるポイントは”ポジティブな、揺るがぬ意志”

ここまでに文転のメリット・デメリットを解説してきましたが、最終的に文転を成功させるポイントは、ネガティブな理由ではなくポジティブな理由で決断することです。理系が得意という武器は、文転しても活かせます。また、文転することで周囲からさまざまな意見を言われることもあるかもしれませんが、揺るがない意志を持つことも大切です。

苦手だからではなく、学びたいことをきちんと見つける

「理系科目が苦手だから」という理由だけで文転するのは、あまりおすすめできません。仮に、志望校を私立大学理系学部から文系学部に変更した場合、文転したタイミングによっては独学で文系科目を勉強する必要が出てきます。そうなると、興味のない文系科目の勉強を進めることがきついと感じる人もいるかもしれません。

苦手だから、と消去法で文転すると、モチベーションが保てなくなる恐れもあるのです。

志望校と受験科目をしっかり把握しておくこと

文転を決意したら、志望校の受験科目や受験要項をしっかり確認し、受験勉強のスケジュールを練り直しましょう。「理系科目が得意」「ある程度、理系コースの授業を受けた」という点を活かして、他の学生と点数に差をつけるのも戦略の1つです。

一度決めたら受験まで貫くこと

一度文転すると決めたら、最後までその意志を貫くことが大切です。文転をした時点で、周りよりもスタートのタイミングが遅れていることを自覚しましょう。「やっぱり理系学部を志望しておいた方がよかったかな」と、くよくよ悩む時間はありません。「あの学部で学びたい!」という強い意志を胸に受験勉強に励めば、成果はあとからついてくるはずです。

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