進路はあなたの学びたいこと、将来の夢を軸に選びたいものです。しかし、やりたいことが見つからない、まだ漠然としているという人も多いでしょう。
この記事では、学問選びや目標探しのヒントとなるトピックスを紹介します。
先進国とは?【国際学】【国際関係学】
国際学・国際関係学の目的・魅力
政治や経済、環境など、現代が抱える問題は単独の国や地域だけで解決できるものではなく、国際社会の相互理解と協力が必要です。そのためにも、国際学を通じて幅広い教養や視点を獲得することが役立つでしょう。
政治や外交など、国家間の関係性に焦点をあてるのが国際関係学で、紛争や対立、難民や貧困といった現実社会とつながる学びが展開されます。
政治体制や宗教の違い、格差を乗り越えて世界が共存できる道を探っていくことが、国際学・国際関係学が担う役割と言えます。
日本のランキングは?
日本のGDP(国内総生産)は、アメリカ、中国に続いて世界第3位(国際通貨基金 2022)。しかし、豊かさを全ての国民が実感しているかというと疑問が残るでしょう。2010年に中国に抜かれ、現在は5位のインドから追い上げを受けています。
日本の相対的貧困率(一定基準を下回る手取り収入しか得ていない人の割合)は15.4%で(厚生労働省 国民生活基礎調査 2022)、G7(主要先進国)の中で最も高いというデータもあります(OECDホームページ)。そのほか、ジェンダーギャップ指数で日本は146か国中125位(世界経済フォーラム 2023)であり、他国と比較すると解決すべき社会課題が山積していることがわかります。
ちなみに、国別の幸福度ランキングでは、日本は137か国中47位ということです(世界幸福度報告書 2023)。
先進国の定義
日本が先進国とされるようになったのはいつからでしょうか?
日本がOECDに加盟したのが1964年、西ドイツを抜いてGNP世界2位になったのは1968年、第1回先進国首脳会議(主要国首脳会議)のメンバーになったのが1975年などの節目が考えられます。先進国の定義は明確にはありませんが、OECDの加盟国や主要国首脳会議の構成国などを指すことが一般的なようです。また世界銀行による高所得国、上位中所得国、下位中所得国、低所得国などの分類もあります。
一般に先進国は、高所得だけでなく、政治や経済、文化や科学・技術、社会制度などが総合的に進んでいる国と理解されています。日本は真の意味で先進国と言えるでしょうか?
国際の学びの始まりは日本から
日本が国際社会と手を携えながら、多くの問題に取り組んでいかなければいけないことは言うまでもありません。そのためには、さまざまな国や地域の人々の異なる価値観、政治や文化、宗教などを理解する必要がありますが、その前にまず日本についてしっかり学んでほしいと思います。
海外留学した学生たちから、日本について質問されてきちんと答えられなくて困ったという声をよく聞きます。映画やアニメ、スポーツ、観光など、日本は海外から注目を集めています。日本のことを自信をもって語れてこそ国際人と言えるでしょう。
国際学・国際関係学で学べる学問分野
国際学や国際関係学は学際的な学問です。政治、法律、経済、文化、歴史、言語、宗教など多岐にわたるアプローチがあります。これらの学びをもとに、SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられているような、貧困、ジェンダー、エネルギー、環境、平和などの社会課題に挑みます。
留学やボランティアなどキャンパス外の活動も貴重な学びとなるでしょう。
会議もアニメも観光ビジネスになる?【観光学】
観光学の目的・魅力
訪日外国人旅行客数もようやく回復の兆しを見せています。観光業は、旅行・交通・ホテルなどが代表的ですが、小売業や飲食業なども含めて、すそ野の広いビジネスと言えます。
経営やマーケティングの知識とともに、地域活性化や環境保全といった社会課題への理解も必要になります。もちろん、語学や異文化理解も不可欠です。
旅やおもてなしは形のない商品だけに、携わる人の力量や個性が大きく影響します。
イベントの経済効果
旅行会社というとツアーの企画・販売・実施や旅行の手配がおもな業務に思えますが、そのビジネスは大きく広がっています。たとえば、大手旅行会社では、企業やスポーツ・文化のイベントの運営・管理を手がけています。国際的な会議やスポーツ大会が開催されると多くの人々の移動や宿泊が発生しますから、ビジネスチャンスです。いわゆるコミックマーケットの経済効果は100億円規模とも言われています。
観光業だけに限りませんが、自社のビジネスとマーケットのニーズをいかに結び付けるかが非常に重要です。
普通の場所が観光地に
アニメの聖地に観光客が殺到といったニュースをよく耳にします。町のありふれた風景でも登場人物やストーリーに同化できると人気です。そして、舞台となった町は人を呼び込む新たな観光資源として、まちおこしに活用しています。このような観光と産業振興のスタイルはコンテンツツーリズムと呼ばれています。
そのほか、農漁村体験や地域の人々との交流を取り入れたグリーンツーリズムや、農業に特化したアグリツーリズムなども特色ある取り組みです。いずれも有名観光地を巡るようなこれまでの旅行とは異なるものです。
顧客は自己実現を重視するというマーケティングの近年の考え方が観光や関連ビジネスでも反映されています。
「旅が好き」は必須じゃない?
皆さんの中で将来は国際的に活躍したいと考えている人には、観光業は有望な選択肢の一つになるのではないでしょうか?
観光分野を志望する人が「旅が好き」ということをよく理由に挙げます。それはもちろんよいことですが、大学の勉強や実社会での仕事として旅を選ぶのであれば、社会課題の解決につながるか、ビジネスとして成立するかといった視点は必要でしょう。
期待や困りごと(ニーズ)が学問やビジネスのヒントになることは観光も例外ではありません。
観光学で学べる学問分野
観光学は、経営、社会、文化、語学など関連科目を学ぶとともに、旅行業の専門知識や資格に関する科目・講座が用意されている場合があります。もちろんITや情報の知識も役立ちます。
そのほかホテルをめざす人は、サービスや人材マネジメントなどについても学んでおくとよいでしょう。さらに、ホテルや航空では高い語学力が求められます。
SNSはコミュニケーションを活発にした?【メディア学】
メディア学の目的・魅力
メディア学は、簡潔に言えば、情報の伝え方や情報が与える影響などを研究する学問です。文章、画像、音声、音楽、動画などを生成できるAIの登場によってクリエーターの仕事が大きく変わろうとしています。
また、情報によって世論形成が影響を受けたり、対立が生じたりする中で、メディアの社会的役割が問われています。
メディアリテラシーを身につけておくことは、専門や進路にかかわらず大事なことです。
誤った情報が拡散するわけ
メディアではSNSなどで誤った情報(フェイクニュース)が拡散されることがあります。特に災害や新型コロナウイルス感染症など、生命にかかわることで誤った情報に惑わされたら影響は深刻です。
その根底には不安や恐れといった人の感情があります。あるいは、大事な情報だから広めなければいけないという善意もあるかもしれません。
一方で客観的な根拠を示して情報の誤りを指摘する投稿もあります。ただこうした人たちは正しい情報を伝えればその後は必要以上の行動をしないのに対して、デマを信じてしまう人は新しい情報を見つけるたびに過敏に何度も拡散する傾向があるようです。
磁石のように引き合う、反発する
インターネットやSNSが普及することで、いっそう多様な意見が発信され、議論の活性化が期待されました。他のメディアと比べて、ネットが双方向のコミュニケーションに優れていることは間違いありません。
ただ、こうした期待に反して、興味や意見が近い集団の中でのやりとりに限定され、分断を生んでしまっているという指摘があります。
これは、利用者が望む望まないにかかわらず、検索エンジンが閲覧履歴をもとに情報を提供し、関心が低い情報を排除していることも背景にあるとされています。
ネット社会で変化したこと
インターネットによって、これまでのメディアとは比較にならないほどの膨大な情報を私たちは得ることができるようになりました。それと同時に、私たちも容易に情報を発信できるようになりました。そして今回の記事で紹介したように、誤った情報の拡散や異なる意見による分断、そのほか誹謗中傷などのトラブルが起きています。
メディアリテラシーとは「メディアを主体的に読み解く力」「メディアにアクセスし、活用する能力」「メディアを通じコミュニケーションする能力」を複合した能力とされています(総務省)。
言い換えれば、クリエイティブな活動でも、情報のやりとりでも、新たな価値を提供したり、相手を尊重したりするために、メディアの学びでは創造力・想像力が求められています。
メディア学で学べる学問分野
メディアの学びは、音声や映像、コンピュータグラフィックス、コンテンツ制作といったクリエイティブな分野と、メディアの特性や役割について、社会学やコミュニケーション学などと融合しながら考察する社会科学としてのテーマがあります。
またジャーナリストなどをめざす人は、社会情勢やメディアのあり方について批判的に読み解く視点も必要になるでしょう。
まとめ
国際学・国際関係学、観光学、メディア学ともに、今の社会と密接に関係したテーマを扱います。
ニュースや流行(トレンド)にアンテナを張って、自分なりの意見をもつことが学びに役立ちます。
ネットだけでなく、人と出会い、ともに学ぶ経験も大切にしましょう。