経済学部で何を学ぶ?将来性・就職先から気になる疑問まで徹底解説!

監修者:駿台予備学校 教務課

経済学部という言葉はよく聞くけれど、実際にどんなことを学ぶ場所なのか、卒業したらどんな道に進めるのか、具体的にイメージできていますか?

この記事では、経済学部の学習内容から、取得を目指せる資格、卒業後のキャリア、さらには経営学部や商学部との違い、よくある質問まで、経済学部に関するあらゆる情報を網羅的に解説します。

経済学部に興味がある高校生や、進路選択に悩んでいるあなたは必見です。この記事を読めば、経済学部があなたにとって最適な選択肢かどうかが明確になるでしょう。

目次

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そもそも経済学とは?社会を読み解く学問の正体

「経済学」と聞くと、多くの人がお金や株価、景気といったテーマを思い浮かべるかもしれません。
もちろんそれらも経済学の重要な一部ですが、その本質はもっと広く、私たちの社会全体の仕組みを解き明かすための「知の道具」です。

この章では、「経済学がどのような学問であり、なぜ現代社会において学ぶ価値があるのか」をご説明します。

経済学の定義と目的

経済学とは、一言で言えば「限られた資源をいかに効率的に使い、社会全体を豊かにするかを考える学問」です。

私たちの周りにある資源(モノ、時間、労働力、お金など)は、残念ながら無限ではありません。これを「資源の希少性」と呼びます。

この「限りある資源」を、誰が、何を、どれだけ作り、どのように分配すれば、社会に生きる人々が最も満足できるのか。この根源的な問いを探求するのが経済学です。

研究対象は非常に幅広く、個人の消費行動や企業の価格設定といったミクロなレベルから、一国の経済成長や失業問題、さらには国と国との貿易関係といったマクロなレベルまで、人間社会のあらゆる経済活動が分析の対象となります。

そして、経済学を学ぶ最終的な目的は、単にお金の流れを追うことではありません。経済のメカニズムを深く理解し、その知識を応用して、貧困や格差、環境問題といった社会が直面する様々な課題を解決し、より良い社会システムを構築するための知恵を探求することにあるのです。

なぜ経済学を学ぶのか?その重要性と現代社会における役割

では、なぜ今、経済学を学ぶことが重要なのでしょうか。その理由は、現代社会が経済と密接に結びついた複雑な問題に直面しているからです。

経済学的な視点を持つことで、日々のニュースの裏側にある「なぜ?」を論理的に解き明かし、社会問題に対する具体的な解決策を考える力が養われます。

また、人・モノ・カネが国境を越えて瞬時に移動するグローバル化の時代において、世界経済の動向を理解することは、将来どのような分野に進むにしても不可欠な教養と言えるでしょう。

経済学部では具体的に何を学ぶ?主要な学問分野と学習内容

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経済学部では、社会を読み解くための多様なアプローチを学びます。その中でも、まずは基本となる「ミクロ経済学」「マクロ経済学」という2つの柱をしっかりと固め、そこからデータ分析の手法や国際的な視点、さらには個別の専門分野へと学びを広げていきます。

ここでは、経済学部のカリキュラムの中心となる主要な学問分野を紹介します。

ミクロ経済学:消費者と企業の行動を分析する

ミクロ経済学は、消費者(個人や家計)や企業といった、経済を構成する個々の単位(経済主体)の意思決定と、それが市場にどのような影響を与えるかを分析する学問です。 まさに、経済学の基礎となる考え方の土台を築く分野です。

皆さんが普段、コンビニで何を買うか、どのアルバイトを選ぶか、といった日常的な選択もミクロ経済学の分析対象です。

消費者は「限られた予算の中で、満足度が最大になるように」商品を選び、企業は「コストを考慮しながら、利益が最大になるように」生産量や価格を決定します。

ミクロ経済学を学ぶことで、「なぜこの商品はこれほどの人気があるのか」「企業の値下げ競争はどこまで続くのか」といった身近な疑問に、論理的な説明を与えられるようになります。

マクロ経済学:国全体の経済の動きを捉える

ミクロ経済学が「木」を見る学問だとすれば、マクロ経済学は「森」全体を見る学問です。 個人や一企業ではなく、国全体といった大きな単位で経済活動を捉え、そのパフォーマンスを分析します。

ニュースでよく聞く「GDP(国内総生産)」「物価」「失業率」「経済成長率」といった指標は、すべてマクロ経済学が扱うテーマです。

国の景気はなぜ良くなったり悪くなったりするのか(景気変動)、政府や中央銀行(日本では日本銀行)は経済を安定させるために何ができるのか、といった大きな問題を考えます。

マクロ経済学を学ぶことで、「なぜ政府は景気対策を行うのか」「円安は日本経済にとって良いことなのか悪いことなのか」といった、国レベルの経済ニュースを深く理解するためのフレームワークが身につきます。

計量経済学:データを使って経済現象を実証する

ミクロ経済学やマクロ経済学で学ぶ理論は、いわば「経済を説明するための仮説」です。計量経済学は、その仮説が現実の社会でも本当に正しいのかを、統計学的な手法を用いてデータで検証する学問です。

例えば、「教育水準が高い人ほど、生涯年収も高くなる」という仮説があったとします。計量経済学では、多くの人々の学歴と年収に関するデータを集め、統計モデルを使って分析し、両者の間に本当に因果関係があるのか、あるとすればどの程度の強さなのかを客観的な数値で示します。

計量経済学を学ぶことで、経済学が単なる空理空論ではなく、データという証拠(エビデンス)に基づいて社会に貢献する実証科学であることが理解できます。

プログラミングや統計ソフトを使う機会も多く、近年重要性が増しているデータ分析のスキルを身につける上でも非常に重要な分野です。

国際経済学:グローバルな経済関係を読み解く

現代社会では、どの国も単独で存在しているわけではなく、互いにモノやサービス、資本(お金)をやり取りすることで密接に結びついています。国際経済学は、こうした国境を越えた経済活動や、それに伴う政策課題を研究する学問です。

この学問は、主に「国際貿易論」と「国際金融論」という2つの大きな分野から成り立っています。

「国際貿易論」では、なぜ国は貿易をするのか、貿易が参加国にどのような利益や不利益をもたらすのかを分析します。

さらに、関税や輸入数量制限といった政府の貿易政策(保護主義)が国内の産業や消費者に与える影響や、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)のような経済連携協定も研究対象となります。

一方、「国際金融論」では、円やドルといった異なる通貨が交換される比率である「為替レート」の決定メカニズムや、その変動が企業の輸出入や国全体の経済に与える影響を分析します。

また、国際的な資本移動や通貨危機が起こるメカニズムを探求することも重要なテーマです。

グローバル化が不可逆的に進む現代において、国際経済学の知識は、国際的なビジネスの舞台で活躍するためだけでなく、世界で起きている出来事を正しく理解するためにも不可欠な教養となっています。

その他専門分野の例(経済史、財政学、労働経済学、環境経済学、行動経済学など)

経済学部の魅力は、その学問領域の広さにあります。基礎となる分野を学んだ後は、自分の興味関心に応じて、より専門的な分野へと学びを深めていくことができます。大学によって設置されている分野は異なりますが、代表的なものには以下のようなものがあります。

  • 経済史: 過去の経済システムや経済事件(例:大恐慌、産業革命)を歴史的に分析し、現代社会への教訓を探ります。
  • 財政学: 税金や公的支出、社会保障制度といった政府の経済活動を専門的に研究します。公平で効率的な税制や、持続可能な年金制度などを考えます。
  • 労働経済学: 雇用、賃金、労働時間、労働組合、女性の社会進出といった「働くこと」に関する問題を経済学的に分析します。
  • 環境経済学: 地球温暖化や公害、資源の枯渇といった環境問題と経済活動の調和を目指す学問です。
  • 行動経済学: 人間が必ずしも合理的に行動するとは限らないという事実に着目し、心理学の知見を取り入れて人々の経済行動を分析する、比較的新しい学問分野です。

これらの多様な専門分野に触れることで、経済学というレンズを通して社会を多角的に見る面白さと、その奥深さを実感できるでしょう。

経済学部の代表的な学科とそれぞれの特色

一口に「経済学部」と言っても、大学によってはその中に複数の学科が設置されており、それぞれに教育の特色や目指す人材像が異なります。ここでは、経済学部の代表的な学科をいくつか紹介し、それぞれの学びの特色を解説します。自分の興味や将来像に合った学科を選ぶための参考にしてください。

経済学科:経済学の理論と応用を幅広く学ぶ

経済学科は、多くの大学で設置されている、経済学部の中心的かつ最もスタンダードな学科です。

その最大の特色は、ミクロ経済学、マクロ経済学、計量経済学といった経済学の基礎理論から、財政、金融、労働、国際経済といった各応用分野までを、バランス良く幅広く学べる点にあります。

特定の分野に偏ることなく、経済現象を多角的に分析するための土台を固め、論理的思考力を徹底的に鍛えることを重視します。

カリキュラムの自由度が高い場合も多く、学生は自分の興味関心に応じて、幅広い講義の中から履修計画を組み立てることができます。

国際経済学科(グローバル経済学科など名称は多様):国際的な視点を強化

国際経済学科は、その名の通り、グローバル化する現代経済に対応できる人材の育成を目的とした学科です。 

経済学の基礎は経済学科と同様に学びますが、それに加えて国際貿易論、国際金融論、開発経済学、各国の地域経済論といった国際関連の科目に特に重点を置いています。

多くの大学では、経済学の専門科目を英語で学ぶプログラムを用意していたり、第二外国語の習得に力を入れていたりと、語学教育が充実しているのが大きな特色です。

また、海外の大学との提携による留学プログラムや、海外でのインターンシップの機会が豊富な場合もあります。

経済情報学科(データサイエンス系学科など名称は多様):情報処理スキルと経済分析を融合

経済情報学科は、経済学の知識と、情報処理技術やデータ分析スキルを融合させた、比較的新しいタイプの学科です。

 経済理論に加えて、プログラミング、統計分析、データベース、ビッグデータ解析といった情報科学系の科目を重点的に学びます。

この学科の目的は、理論と現実のデータを結びつけ、客観的な証拠に基づいて経済現象を分析・予測できる人材を育成することです。

計量経済学の分野をさらに発展させた学科とも言え、卒業研究などでは、学生自身が収集したデータを用いて独自の分析を行うことが求められます。

その他の特色ある学科(例:公共経済学科、環境経済学科、生活経済学科など)

大学の個性や強みを活かし、より専門性の高い特定の分野に特化したユニークな学科も存在します。

  • 公共経済学科・地域政策学科など: 政府や地方自治体の役割に焦点を当て、公共政策の立案・評価や、地域経済の活性化策などを専門的に学びます。公務員志望の学生に特に人気があります。
  • 環境経済学科: 環境問題と経済の関わりに特化し、持続可能な社会の実現に向けた政策やビジネスモデルを探求します。

これらの学科は、自分の興味が特定の分野に明確にある場合に、より深く専門知識を探求できるというメリットがあります。興味のある大学にどのような学科が設置されているか、ぜひ調べてみてください。

経済学部で学ぶことのメリットとは?将来に繋がる5つの強み

経済学部で4年間学ぶことで、単に専門知識が得られるだけでなく、社会人として様々な場面で役立つ普遍的なスキルが身につきます。ここでは、経済学部での学びがあなたの将来にもたらす5つの大きなメリットを紹介します。

メリット1:社会の仕組みを深く理解できる

最大のメリットは、社会の根幹をなす「経済」という仕組みを論理的に理解できるようになることです。

日々のニュースで報じられる物価の変動、企業の業績、政府の経済政策、国際情勢など、一見複雑で無関係に見える出来事が、実は需要と供給、金利、為替といった経済学の基本原理によって相互に関連しあっていることがわかります。

この「社会を読み解く地図」を手に入れることで、断片的な情報に惑わされることなく、物事の背景や本質を見抜く力が身につきます。これは、社会人として正しい意思決定を行う上で、強力な武器となるでしょう。

メリット2:論理的思考力と問題解決能力が鍛えられる

経済学は、厳密な定義と論理の積み重ねで成り立つ学問です。「なぜそう言えるのか?」を常に問い、データや理論といった客観的な根拠に基づいて仮説を立て、検証し、結論を導き出すという訓練を繰り返し行います。

このプロセスを通じて、感情や思い込みに流されず、筋道を立てて物事を考える「論理的思考力(ロジカルシンキング)」が徹底的に鍛えられます。

また、複雑な社会問題に直面した際に、問題を構成する要素を整理し、何が本質的な課題なのかを特定し、そして最も合理的な解決策は何かを考える「問題解決能力」も養われます。

これらの能力は、どのような業界や職種に進んでも高く評価される、非常に汎用性の高いスキルです。

メリット3:データ分析スキルが身につく

現代は「ビッグデータの時代」と言われ、あらゆる分野でデータに基づいた意思決定(EBPM: Evidence-Based Policy Makingなど)が重視されています。

経済学部、特に計量経済学や統計学の授業では、データを正しく扱い、分析し、そこから意味のある知見を引き出すためのスキルを体系的に学びます。

具体的には、統計ソフトやプログラミング言語(RやPythonなど)を使い、データの収集・加工から、統計モデルを用いた分析、そして結果の解釈・報告までの一連のプロセスを実践的に習得します。

このデータリテラシーは、マーケティング、金融、コンサルティング、政策立案など、多様な分野で直接的に活かせる専門スキルとなります。

メリット4:幅広い分野で活躍できるキャリアの選択肢が広がる

経済学部で得られる知識やスキルは、特定の職業に直結するものばかりではありません。しかし、だからこそ非常に汎用性が高く、社会のあらゆる分野への扉を開く可能性を持っています。

金融の知識は銀行や証券会社で、国際経済の知識は商社やメーカーの海外部門で、データ分析スキルはIT企業やコンサルティングファームで、財政の知識は公務員として、というように、学んだことを活かせるフィールドは無限に広がっています。

特定の専門職に縛られず、自分の興味や適性に合わせて多様なキャリアパスを描けることは、経済学部の大きな魅力です。

メリット5:グローバルな視点が養われる

国際経済学や各国の経済事情を学ぶことを通じて、自国だけの視点にとらわれず、世界全体の動きの中で物事を捉えるグローバルな視点が自然と身につきます。

なぜ国によって豊かさが違うのか、世界的な金融危機はなぜ起こるのか、といった問いを探求する中で、国際社会が抱える問題への理解が深まります。

また、異なる歴史や文化を持つ国々が、経済を通じてどのように結びついているかを知ることは、異文化への関心や理解を高めるきっかけにもなるでしょう。このグローバルな視野は、国際化が進む社会で活躍するための重要な素養となります。

経済学部で取得を目指せる主な資格

経済学部での学びは、様々な資格取得に直接的・間接的に役立ちます。資格は専門知識を客観的に証明するものであり、就職活動を有利に進めたり、キャリアの専門性を高めたりする上で強力な武器となります。

ここでは、経済学部生が目指しやすい、親和性の高い資格をいくつか紹介します。

日商簿記検定

簿記は、企業の経営活動を記録・計算・整理し、財務状況や経営成績を明らかにするためのスキルです。 日商簿記検定は、その能力を証明する最もポピュラーな資格の一つです。

経済学部では会計学や財務分析に関連する講義が開講されることも多く、学んだ知識を直接活かすことができます。

企業の財務諸表(貸借対照表や損益計算書)を読み解く力は、経理や財務といった専門職だけでなく、営業職が取引先の経営状況を把握したり、企画職が新規事業の収益性を評価したりする際にも役立ちます。

ファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定

FPは、個人の夢や目標を叶えるために、貯蓄、投資、保険、税金、不動産、相続といったお金に関する包括的な知識を用いて、資金計画を立て、アドバイスを行う専門家です。

経済学部で学ぶ金融論、社会保障論、税制などの知識が、試験範囲と大きく重なります。金融業界(特に銀行や証券、保険会社)を目指す学生にとっては、顧客のライフプランに寄り添う提案力をアピールできるため、非常に人気の高い資格です。

また、自分自身の人生設計や資産形成を考える上でも非常に役立つ、実践的な知識が身につきます。

公認会計士

公認会計士は、企業の財務情報が正しく作成されているかを、独立した第三者の立場からチェック(監査)することを独占業務とする、会計分野の最高峰の国家資格です。

試験は会計学、監査論、企業法、租税法、経営学など多岐にわたり、非常に難易度が高いですが、経済学部で学ぶミクロ・マクロ経済学も試験科目に含まれています。

論理的思考力や分析力が求められる点でも、経済学の素養が活きる資格と言えます。監査法人に就職するのが一般的ですが、その後はコンサルタントや企業のCFO(最高財務責任者)など、多様なキャリアパスが開かれています。

税理士

税理士は、個人や企業に代わって税務署への申告を行ったり、税務に関する相談に応じたりする、税務の専門家です。これも高度な専門性が求められる国家資格です。

必須科目である会計学に加え、税法に関する深い知識が求められます。経済学部で学ぶ財政学や法学関連の科目は、税の役割や法体系を理解する上で基礎となります。

企業のタックスプランニングや個人の節税対策を通じて、経済社会に大きく貢献できる、やりがいの大きい仕事です。

銀行業務検定

銀行業務検定は、銀行や金融機関で働く上で必要となる実務知識やスキルを測るための民間検定試験です。 法務、財務、税務、外国為替、証券、年金アドバイザーなど、非常に多くの種目に分かれているのが特徴です。

経済学部では、金融市場論、金融政策論、企業会計、マクロ・ミクロ経済学といった、銀行業務の根幹をなす知識を体系的に学習します。

これらの知識は、多くの試験科目の基礎となるため、日々の学習がそのまま試験対策に繋がりやすいというメリットがあります。金融機関への就職を目指す学生が、自身の専門性や学習意欲をアピールするために受験することが多いです。

証券アナリスト(CMA)

証券アナリストは、証券投資の分野において、高度な分析技術と専門知識を駆使して、個別企業の価値評価や投資判断を行うプロフェッショナルです。 日本証券アナリスト協会が認定する民間資格(CMA)です。

試験では、経済学(特にミクロ・マクロ、金融論)、財務分析、証券分析、ポートフォリオ・マネジメントなど、高度な知識が問われます。

経済学部で学ぶ統計学や計量経済学の知識は、将来の株価予測モデルを構築したり、投資リスクを分析したりする上で不可欠です。金融機関のアナリスト部門や、資産運用会社、投資会社などで活躍を目指す学生にとって、必須とも言える資格です。

経済学部卒業後の主な就職先とキャリアパス

経済学部で培った汎用性の高い知識とスキルは、特定の業界に限定されることなく、社会のあらゆる分野で求められます。

卒業生は多種多様なフィールドで活躍しており、そのキャリアパスは非常に幅広いのが特徴です。ここでは、経済学部卒業生の代表的な就職先と、そこでどのように学びが活かされているのかの例を紹介します。

金融業界(銀行、証券、保険など)

経済学部卒業生の代表的な就職先が金融業界です。お金の流れを直接扱うため、経済学の知識が業務に密接に関わります。

銀行では融資先の財務分析や金利・為替の動向予測に、証券会社では企業の価値評価や投資戦略の立案に、保険会社では統計学を用いた商品開発やリスク管理に、学んだ知識が直接活かされます。

マクロからミクロまで幅広い経済学的視点が求められる分野です。

製造業(メーカー)

自動車や電機、食品といったモノづくりを行うメーカーも主要な就職先です。経済学の知識は多様な部門で活かされます。例えば、市場調査に基づき需要を分析して新商品を企画したり、景気動向を読んで効果的な営業戦略を立案したりします。

また、原材料の価格変動を予測して調達コストを管理したり、海外市場の経済状況を分析して事業を展開したりと、企業の根幹を支える重要な役割を担います。

商社(総合商社、専門商社)

国内外で幅広い商品のトレーディングや事業投資を手がける商社も、経済学部生に非常に人気の高い就職先です。グローバルな市場を相手にするため、国際経済や各国の地域経済に関する深い知識、高い語学力、異文化理解力が求められます。

また、世界経済の大きなトレンドを読み解き、新たなビジネスチャンスを発見する力や、大規模なプロジェクトを管理・遂行する能力も重要です。

IT・情報通信業界

成長が著しいIT・情報通信業界でも、経済学の素養を持つ人材の需要は高まっています。

膨大なユーザーデータを分析して新たなサービス開発に繋げるデータサイエンティストや、変化の激しい市場で事業戦略を立案する経営企画、ITを用いて顧客の課題を解決するコンサルタントといった職種で活躍できます。

計量経済学で培った分析能力や論理的思考力が特に重視される分野です。

コンサルティング業界

企業の経営者に寄り添い、経営上の様々な課題を解決するための支援を行うコンサルティング業界では、経済学部で鍛えられた能力が最大限に活かされます。

コンサルタントには、複雑な事象を構造的に理解し、データに基づいて分析し、論理的な解決策を導き出す能力が求められます。これはまさに、経済学の学習プロセスそのものです。

若いうちから多様な業界のトップと仕事ができるため、知的好奇心が旺盛な学生に人気があります。

公務員(国家公務員、地方公務員)

国や地方自治体で社会全体の利益のために働く公務員も、人気のキャリアパスです。国家公務員として財務省などで経済政策の立案に携わる道や、地方公務員として地域の経済データを分析し、産業振興や都市計画といった地域に根差した政策を担う道があります。

経済学の知識が直接的に活かせる分野が多く、公務員試験の「経済区分」は経済学部生にとって有利な選択肢となります。

経済学部とどう違う?経営学部・商学部との比較

文系の学部選びで、多くの人が悩むのが「経済学部」「経営学部」「商学部」の違いです。この3つの学部は学ぶ内容が重なる部分も多く、混同されがちですが、研究の対象となるスコープやアプローチに明確な違いがあります。

それぞれの特徴を理解し、自分の興味に最も近い学部を見つけましょう。

経営学部:企業の効率的な運営と成長戦略を探求

経営学部が研究の対象とするのは、個別の「企業」や「組織」です。 その組織をいかに効率的に運営し、競争の激しい市場で生き残り、成長させていくかという、実践的な方法論を探求します。

学ぶ内容は、「経営戦略論」「組織論」「人的資源管理論」「マーケティング論」「会計学」といった、企業経営の具体的な機能に関するものが中心となります。いわば、会社を動かすための「マネジメント」を科学する学部です。

経済学が社会全体の視点(マクロ)や市場メカニズム(ミクロ)といった、より大きな枠組みを分析するのに対し、経営学部はよりミクロな視点で、個々の企業の利益追求や価値創造に焦点を当てるという違いがあります。

商学部:商品やサービスの流通・取引を科学する

商学部が研究の対象とするのは、モノやサービスが生産者から消費者に届くまでの「商取引(ビジネス)」とその「流通過程」です。

具体的には、「マーケティング」「貿易」「金融」「会計」といった、ビジネスの実務に直結する分野を重点的に学びます。

経済学や経営学と重なる分野も多いですが、商学部の特徴は、理論だけでなく、実際のビジネス現場で起こっている現象や事例を重視する点にあります。

経済学部が社会全体の「大きな仕組み」を、経営学部が企業という「組織」を対象とするのに対し、商学部はその中間領域に位置し、「商い」という活動そのものに焦点を当てた、より学際的な学問領域と言えます。

自分に合うのはどの学部?興味関心と将来像から考える選び方

経済、経営、商学部のどれを選ぶかは、あなたの興味の方向性で決まります。

例えば、景気変動や国の政策といった社会全体の大きな仕組みに関心があり、将来は公務員やシンクタンクで社会課題の解決に貢献したいと考えるなら、経済学部が適しているかもしれません。

一方で、特定の企業の成長戦略や、どうすれば魅力的な組織を作れるかといったマネジメント手法に興味があるなら、経営学部が学びの場として最適です。

さらに、商品の流通や販売戦略、金融の実務といった、よりビジネスの現場に近い分野への関心が強い場合は、商学部が将来のキャリアに直結する知識を提供してくれます。

もちろん、各学部がくっきりと学ぶ内容が分かれている訳ではありません。大学によって特色は異なるため、最後は自身の目で確かめることが重要です。

経済学部に関するQ&A|よくある疑問をスッキリ解消!

最後に、高校生やその保護者の方からよく寄せられる、経済学部に関する素朴な疑問にお答えします。進路選択の不安を少しでも解消できれば幸いです。

Q1. 経済学部は文系?理系?数学はどのくらい必要?

A. 一般的には「文系」に分類されますが、「理系的な素養も大いに活かせる学部」というのが実態です。

経済学では、社会の複雑な事象を論理的に分析するために、数式モデルを使ったり、統計学的な手法でデータを扱ったりする場面が非常に多くあります。特に、大学レベルの経済学を本格的に学ぶ上では、高校数学の「数学Ⅱ・B」で学ぶ微分・積分や、「数学A」で学ぶ数列などの知識が基礎として必要になります。また、より専門的な研究では線形代数(行列)も使います。

最も大切なのは、数学が得意かどうかよりも、数学的な考え方、つまり「物事を筋道立てて論理的に考える力」です。

社会の出来事への強い関心と、その裏側にある仕組みを解き明かしたいという知的好奇心があれば、数学はあくまでツールとして乗り越えていけるはずです。

Q2. 経済学部はどんな人に向いている?

A. 一言で言えば、「知的好奇心が旺盛で、社会の『なぜ?』を探求するのが好きな人」です。

具体的には、ニュースや新聞を読み、社会の出来事の背景に関心を持つ人、物事を感情論ではなくデータや根拠に基づいて客観的に分析したい人、そしてパズルのように複雑な要素を整理して論理的に考えるのが好きな人が、経済学部での学びを楽しめるでしょう。

さらに、貧困、環境、格差といった社会問題の解決に貢献したいという強い思いを持つ人や、特定の分野に縛られず、将来幅広い分野で活躍できる可能性を追求したいと考える人にも最適です。

多様な視点から物事を捉えようとする柔軟な姿勢も、経済学を学ぶ上では大切な素養となります。

Q3. 経済学部の授業は難しい?ついていけるか不安…

A. 正直に言うと、簡単な学問ではありません。しかし、段階的に学べるように設計されているので、過度な心配は不要です。

初めて学ぶ専門用語や抽象的なグラフ、数式モデルに戸惑うこともあるでしょう。特に、論理の積み重ねで成り立つミクロ・マクロ経済学は、一度つまずくと理解が難しくなりがちです。

しかし、授業についていくためのコツはあります。まず、分からないことは放置せず、すぐに教授に質問したり友人と教え合ったりして解決する習慣が大切です。

また、学んだ理論を日々のニュースと関連付けると、理解が深まり学習が楽しくなります。数学に不安があれば、入学前に高校の教科書で復習しておくと安心です。何より、主体的に学ぼうとする意欲があれば、必ず乗り越えられます。

Q4. 経済学部のゼミではどんなことをするの?

A. ゼミ(ゼミナール・演習)は、経済学部の学びの集大成とも言える場です。

通常3年次から始まり、10~20人程度の少人数で特定の専門分野を深く研究します。活動は多岐にわたり、専門的な文献を読んで議論したり、自らデータを収集・分析して実証研究を行ったりします。

また、テーマに沿ったディベートを通じて論理を戦わせ、最終的には4年間の学びの成果として卒業論文を執筆します。教授や仲間との密な対話を通じて、専門知識はもちろん、プレゼン能力や協調性といった社会で必須のスキルも養われます。

まとめ:経済学部で社会を読み解き、未来をデザインする力を手に入れよう!

この記事では、経済学という学問の本質から、学部での具体的な学習内容、将来のキャリアパス、そして多くの人が抱く疑問に至るまで、経済学部に関する情報を包括的に解説してきました。

経済学は、単にお金の計算をする学問ではありません。それは、複雑で変化の激しい現代社会を生き抜くための「羅針盤」であり、より良い未来を自分たちの手でデザインしていくための「設計図」を与えてくれる、ダイナミックで実践的な学問です。

経済学部で得られる論理的思考力、データ分析能力、そしてグローバルな視野は、あなたが将来どのような道に進むとしても、必ずや大きな財産となるでしょう。

ぜひ、この記事を参考に、興味のある大学のオープンキャンパスに参加したり、学部のウェブサイトを訪れたりして、さらに理解を深めてみてください。あなたの輝かしい未来に向けた、最適な進路選択ができることを心から応援しています。

【参考コラム】
大学受験勉強法 何から始める?いつから始める?

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