大学受験では、特定の資格を持っていることで有利になる場合があります。使える資格や条件などを早いうちから把握して、対策を進めておくといいでしょう。この記事では、大学受験で活用できる資格の種類や取得するときの注意点などを解説しますので、参考にしてください。
大学入学資格(入学資格)について
はじめに、大学受験するために必要な資格についてです。
大学入学資格は、文部科学省によって規定されています。規定されているのは入学資格であり、受験時に満たしている必要はありませんが、この条件を入学時に満たす見込みがなければ、受験はできません。
大学入学資格の内容は、おもに高等学校・中高教育学校の卒業や特別支援学校の高等部、高等専門学校の3年次を修了、高等学校卒業程度認定試験(旧「大学入学資格検定(大検)、高認)に合格などがあります。帰国子女の場合は、外国での学校教育で12年の過程を修了していることや、それに相当する学力認定試験に合格していることなどが定められています。年齢に上限はありませんが、18歳以上である必要があります。
参照:文部科学省「大学入学資格について」
ただし、一部の大学では、特定の分野で優れた資質を有する学生に、飛び入学/飛び級(高校を卒業しなくても大学に進学可能)を実施しているところもあります。大学ごとに受験資格や実施試験内容が異なるので、希望する人は調べておきましょう。
参照:文部科学省「大学への飛び入学について」
受験に資格が役立つ理由
つづいて、大学受験に役立つ資格についてです。
大学受験の試験内容は、多様化しつつあり、志望学部によっては特に英語の資格検定試験を中心に資格保有が求められることもあります。より実践的な知識や考える力を問う試験が多くなっている中で、その前提となる基礎知識を持っているかを判断するのに、外部資格を活用する大学も増えてきています。
受験資格を得るため
大学によっては、推薦入試などの受験資格に、外部資格の取得や英語検定の成績を設けている場合があります。以下は、2023年度入試において受験資格に外部資格の取得や検定の成績を設けている大学・学部の例です。
大学名 | 入試種別 | 受験資格に含まれる外部資格・検定 |
一橋大学 商学部 | 推薦入試 | ・英検1級またはTOEFL・IELTSで規定以上のスコア取得 ・独検準1級以上またはヨーロッパ言語共通参照枠(GER)が定めたB2以上のレベルの資格を取得 ・仏検準1級以上またはヨーロッパ言語共通参照枠(CECRL)が定めたB2以上のレベルの資格を取得 ・中検準1級以上又はHSK6級200点以上のスコア取得 ・数学オリンピックで予選通過又はBランク上位 ・応用情報技術者試験に合格 ・日商簿記1級取得 上記のいずれか1つ以上 |
上智大学 各学部 | 推薦入試 | 英検、TOEFL、TOEIC、国連試験、IELTS、TEAP、TEAP CBT、GTEC、ケンブリッジ英検、独検、Goethe-institutのドイツ語検定試験、oesd、仏検、DELF・DALF、TCFのいずれかで規定のスコア/級を取得 |
法政大学 経済学部 | 英語外部試験利用自己推薦入学試験 | 英検、TOEFL iBT、IELTS・TOEIC®L&R・TOEIC®S&W、TEAP、TEAP CBT、GTEC CBTタイプ、ケンブリッジ英語検定のいずれかで規定のスコア/級を取得 |
- 参照
-
入試制度・選抜要項・募集要項|一橋大学商学部
推薦入学試験(公募制) | 入試案内 | 上智大学 Sophia University
入学試験要項|法政大学 総合型選抜・学校推薦型選抜等 入学試験ガイダンス
試験免除になるため
英語の検定試験を活用するケースとして、入試の英語科目を検定試験のスコアで代用する大学も増えています。
たとえば上智大学では、一般選抜のTEAPスコア利用方式を選択すると、TEAPまたはTEAP CBTのスコアを英語の得点として利用できます。
立教大学では、2021年度入試から大学独自の英語試験は行わず、TOEFL iBT、TEAP、TEAP CBT、ケンブリッジ英語検定、実用英語技能検定、GTEC、IELTSの7種類の検定のスコア、もしくは共通テストの成績を英語の得点として利用するようになりました。
アピールポイント・やりたいことの証明になる
総合型選抜においては、高校時代に頑張ったことや、大学に入ってからやりたいことのアピールが重要になります。資格の取得は、その方面に探求心を持ち、大学でも勉強したいという意欲を十分に証明するものです。
気象予報士や公認会計士といった国家資格は、年齢制限がなくなったことで高校生でも取得可能になりました。こうした難易度の高い資格の取得も、大きなアピールポイントになるでしょう。
大学受験に役立つ資格は?
具体的にどのような資格が、大学受験において役立つでしょうか。代表的ないくつかをご紹介します。
英語関連の資格
英語の検定試験は共通テストへの導入も検討されていましたが、現在は導入が見合わされています。ただし、各大学の入学試験においては、検定や資格を英語の試験の代わりにしたり、加点したりするところも増えつつあります。
大学によって採用している検定は異なるので、早めに確認しておきましょう。
以下に、各試験の成績表示形式と特徴をまとめました。
試験名 | 成績表示形式 | 特徴 |
英検(実用英語技能検定) | 1級・準1級・2級・準2級・3~5級の合否判定 | 年3回実施 文部科学省公認の検定 3級以上は面接でのスピーキング、準2級以上はライティングもあり |
ケンブリッジ英語検定 | スコアに応じて5つのレベルに認定。測定可能スコア下限を下回ると、スコア報告はなし | コースによって実施回数・日程が異なる。各コースとも年3回程度。世界130か国以上で実施されていて、大学・企業・省庁などで採用されている CEFR(※1)準拠で「使える英語力」を評価 |
TOEFL iBT | 120点満点のスコア | 回数制限なし。再テストまで待機期間3日あり。 公認センターで受験するほか、パソコンを使って自宅での受験も可能 Reding、Listening、Speaking、Writing各30点 |
IELTS (International English Language Testing System) | 1.0から9.0までのバンドスコア | コンピューター形式は毎日実施。 国際的な認知度が高く、留学や移住の際にも使われる 世界で年間300万人以上が受験。 大学入試に使われるのは一般的にアカデミック・モジュール |
TEAP | 400点満点のスコア | 年3回実施。 日本英語検定協会と上智大学の共同開発により、大学入試を想定して作られた検定 用紙への回答がメインで、ライティングは記述、スピーキングは対面 |
TEAP CBT | 800点満点のスコア | 年3回実施。 日本英語検定協会と上智大学の共同開発により、大学入試を想定して作られた検定 パソコンでの回答がメインで、ライティングはタイピング、スピーキングは録音 |
GTEC | CBT:1400点満点 | 検定版年3回、CBTタイプ年3回(年2回まで受験可能) ベネッセの運営する英語検定 大学入試で使われるのは、ほとんどがCBTタイプタイプ 「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を測定 |
TOEIC | L&R 990点満点 S&W 200点満点 | L&R、S&Wいずれも月1回程度実施。 世界160か国で実施される世界共通テスト。L&R(聞く、読む)、S&W(話す、書く)の2種類で4技能を測定 |
参照:文部科学省「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」
漢検(日本語漢字能力検定)
漢検とは、公益財団法人日本漢字能力検定協会が運営する、漢字能力を測定する技能検定です。漢字の「読み」「書き」はもちろん、意味や使い方まで総合的な能力を測定します。1級・準1級・2級・準2級・3~10級に分かれていて、高校卒業程度が2級の設定です。
総合型選抜においては、漢検があると有利になることも多く、実際に50%以上の大学において入試で漢検を評価するという調査結果もあります。大学によって「入試の点数に加算する」「合否判定の際に考慮する」など使い方はさまざまで、推薦入試の出願条件に漢検準2級以上などと定めている場合もあります。
数検(実用数学技能検定)
数検は、公益財団法人日本数学検定協会が運営する技能検定です。数学の実用的な技能を測り、論理構成力を測定するもので、文部科学省が公認しています。1級・準1級・2級・準2級・3~5級に別れていて、準1級が高校3年程度の設定です。
個人試験は年に3回、提携会場受験は年に12回程度開催されます。大学によっては、入試の点数に加算されたり、自己アピールとして参考にしたりと、理系以外の学科でも優遇されるところが多いので、取得しておくといいでしょう。
理検(実用理科技能検定)
理検は、一般社団法人日本理科検定協会が運営する技能検定です。級で分けて合否で判定する理検STEPと、点数評価をする理検SCOREがあります。
理検STEPは、2級以上になると物理・化学・生物・地学に分かれていて、それぞれ2級が高校基礎、1級は高校応用の範囲です。理検SCORE100は、高校3年までの範囲となり、1000点満点のスコアで結果がでます。
大学入試では、大学によって推薦入試の点数に加点されたり、自己アピールとして参考にしたりといった優遇が受けられる場合があります。
ITパスポート試験
ITパスポート試験は、ITに関する基礎的な知識があることを認定する国家資格です。セキュリティやネットワークを含めたITに関する知識だけでなく、経営全般や、新技術、プロジェクトマネジメントなど幅広い知識が問われます。
大学入試でも、ITパスポート有資格者を優遇するケースが増えています。220以上の大学で入試の際に優遇措置があり、大学に入学してからも単位の認定などで有利になる場合があります。
調査書(内申書)に書ける資格は、いつからいつまでに取得したもの?
現在の調査書は高校の先生が学習指導要録に沿って作成するので、学校側で管理している取得資格を記載されるものですが、現在の高校1年生からは受験生自身が、活動歴報告書を自身で作成し提出する形となります。その際に、記載する資格について、いくつかの注意点があります。
実は資格を保有していたら良い、というわけでもありません。せっかく資格を取得したり、検定を受けたりしていても、そのタイミングによっては調査書に書けないことがあります。
大学によって定められているケースも
大学によっては、取得のタイミングに制約を設けられている場合があります。
たとえば、広島大学の学校推薦型選抜においては、ケンブリッジ英検や、英検、GTECなどの英語民間試験の成績が活用できますが、検定結果の有効期限に関わらず、検定を受けた日に制約があります。2023年度の募集では、2020年4月1日以降の検定のみ認められています。
多くの英語検定は有効期限が2年程度なので、有効期限内であれば検定を受けた日はさほど気にする必要はないでしょう。ただし、ケンブリッジ英検などは有効期限がないので注意が必要です。数年以上前に取得した検定や資格が認められるかは大学によって異なりますので、必ず募集要項で確認しましょう。
調査書に間に合うタイミングで取得する
資格や検定は、頻繁に受けられるものもあれば、年に数回しかチャンスがないものもあります。試験を受けてから結果の到着までの期間も考えて、調査書に間に合うタイミングで受けるようにしましょう。
英検は1~2月、5~6月、9~10月の年3回試験日があり、日程は年度によって異なります。総合型選抜の調査書提出は9月なので、最後に受けられるのは高校3年の5~6月です。学校推薦では調査書提出が11月なので9~10月の試験でも間に合う場合もあります。
まずは志望大学の出願内容をチェック
大学によって、求められる資格や検定は異なります。まずは、自分の志望大学の募集要項を確認し、必要な資格や、調査書に書くことで有利になる資格を確認しましょう。
求められているレベルを確認する
大学や学部・学科によっては、受験資格として資格の取得や検定で指定の等級以上の認定を受けていることが求められます。また、大学によっては資格などの評価を明確に開示しているところもあります。
たとえば、京都産業大学では、どの資格でどれだけの評価点が得られるかを公式サイトで公開しています。これを参考にして、評価点の高い資格にチャレンジするのもおすすめです。
入試区分によってスケジュールを組む
提出期限までに資格や検定の結果が届かないと、調査書に書くことはできません。
出願の時期は、一般的に総合型選抜は9月ごろ、学校推薦型選抜は11月ごろです。
先述の英検だけでなく、ケンブリッジ英検では結果ステートメントが届くのは2.5カ月後と、検定によって結果が届くタイミングも異なります。
志望大学への受験を、どの入試区分で受けようと考えているのか?予定している入試区分に合わせて、早めにスケジュールを組んでおきましょう。
資格なしでも大丈夫?
英語試験の代わりに外部の英語検定を使用している大学では、指定の英語検定を受けている必要がありますが、そうでなければ、受験資格として設けている所でも、ほとんどは推薦入学で、一般入試はほぼどの大学でも受験できます。
大学で何を学びたいか? 自分の強みになるか?
大学受験に臨む前に、大学で何を学びたいかを考えてみましょう。
大学で学ぶ方向性を早く見つけることで、そのための努力をより多く注げます。商業を学びたいなら簿記を勉強して資格を取得したり、英語の勉強をしたいなら英検を取得したりするのもいいでしょう。
学ぶ内容に合わせた資格取得は、目指す分野の知識をつけるだけでなく、努力の証として大学入試でも評価される強みとなるので、積極的にチャレンジするといいでしょう。
ただし、資格取得はあくまで「大学入試で優遇されることがある」もので、それだけで合格できるわけではありません。基本となる日々の学習や、受験勉強が疎かになっては、本末転倒になってしまいます。
受験勉強を進めつつ、どういった資格をいつ取れば良いか?といった受験期間の計画も、駿台予備学校なら、進路アドバイザーに相談することもできます。迷っているようであれば、一度相談してみてはいかがでしょうか?