【2023速報】大学入学共通テストの結果分析

監修者:駿台予備学校 教務課

共通テストのイメージ画像

2023年度大学入学共通テスト(以下「共通テスト」)は、前年度と比較すると、数学I・A、数学Ⅱ・Bで平均点が大きくアップした結果、全体としては易化しました。しかしながら、理科②で得点調整が行われるなど、実施3年目ですが、まだまだ各教科・科目の難易度が安定していない部分も見受けられました。これらの状況を分析し、現行課程では最後となる2024年度共通テストへの対策を示したいと思います。

目次

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5教科平均点は大幅アップ。特に数学2科目は20点近い大幅アップ

表1 共通テスト 主要科目平均点一覧 2ヶ年比較

教科 科目 満点 平均点 2ヶ年の
平均点差
2023年度 2022年度
国語 国語 200 105.74 110.26 -4.52
地理
歴史
世界史B 100 58.43 65.83 -7.40
日本史B 100 59.75 52.81 +6.94
地理B 100 60.46 58.99 +1.47
公民 現代社会 100 59.46 60.84 -1.38
倫理 100 59.02 63.29 -4.27
政治・経済 100 50.96 56.77 -5.81
倫理、政治・経済 100 60.59 69.73 -9.14
数学 数学① 数学Ⅰ・A 100 55.65 37.96 +17.69
数学② 数学Ⅱ・B 100 61.48 43.06 +18.42
理科 理科① 物理基礎 50 28.19 30.40 -2.21
化学基礎 50 29.42 27.73 +1.69
生物基礎 50 24.66 23.90 +0.76
地学基礎 50 35.03 35.47 -0.44
理科② 物理 100 63.39 60.72 +2.67
化学 100 54.01 47.63 +6.38
生物 100 48.46 48.81 -0.35
地学 100 49.85 52.72 -2.87
外国語 英語リーディング 100 53.81 61.80 -7.99
英語リスニング 100 62.35 59.45 +2.90

※理科②の化学、生物は得点調整後の平均点

表1は、2月6日(月)に大学入試センターから発表された「共通テスト実施結果概要」における主要科目の平均点一覧です。なお、2023年度は理科②で得点調整が行われたので得点調整後の平均点を示しています。

この結果から駿台とベネッセコーポレーションが推定した5教科900点満点の予想平均点は、5教科8科目文系では532点(得点率59%、対前年度比+24点)、5教科7科目理系では551点(得点率61%、対年度比+38点)となりました。

予想平均点がアップした理由は

予想平均点が大幅にアップしたのは、前年度平均点が大幅ダウンした数学I・A、数学II・B、日本史Bなどが大幅アップしたことに加えて、理系ではほぼすべての受験生が選択する理科②の化学が得点調整によるアップも含めて6点以上もアップしたことが要因でした。

2022年度との平均点の違いは

次に、主要科目の平均点を前年度の最終集計での数値との比較を見ていくことにします。
受験者数が1万人を超える主要科目で平均点がアップしたのは、数学II・B(+18.4点)、数学I・A(+17.7点)、日本史B(+6.9点)、化学(+6.4点)などでした。
一方で、平均点がダウンしたのは、倫理、政治・経済(-9.1点)、英語リーディング(-8.0点)、世界史B(-7.4点)、政治・経済(-5.8点)などでした。
数学I・Aの得点率は前年度38.0点で4割を割り込みましたが、55.7点と5割を超える得点率になりました。それでも数学II・Bよりは低く、6割には達しませんでした。

理科①の結果は

主に文系が受験した理科①(物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎)においては、例年最も多い選択パターンである「化学基礎+生物基礎」と2番目に多い選択パターンである「生物基礎+地学基礎」の平均点の2科目合計の差を見ると5.61点で前年度の7.74点から2.13点縮小しました。

理科②の結果は

主に理系が受験した理科②(物理、化学、生物、地学)においては、理系の理科の代表的な2つの選択パターンである「物理・化学選択」と「化学・生物選択」の平均点差は、得点調整後でも11.91点から14.93点に拡大しました。特に、生物は前年度48.81点でしたが、得点調整による得点引上げがあったにも関わらず48.46点と2年連続5割を下回りました。生物は物理、化学と比較すると教科書に最先端の内容が盛り込まれており、こういった高度なレベルの分野への理解不足という影響もあります。ちなみに理科②4科目ののべ受験者数に対する生物受験者の割合は現行課程となった2016年度は17.3%でしたが、2023年度は15.0%にダウンしており、「生物離れ」の傾向が見られます。

5教科全体だとどうだったか

次に、5教科型900点集計の得点帯ごとの得点変動をみると、文系、理系ともにすべての得点帯でプラスとなっています。文系では、今年度の630点~735点は前年度の600点~700点にあたり、前年度よりも約30~33点プラスとなっています。理系では、今年度の625点~745点が前年度の580点~700点にあたり、前年度よりも約44~47点プラスとなっています。

平均点ダウンが目立った科目の出題の特徴は

それでは、今回の共通テストで大幅に平均点ダウンした科目の出題にはどういった特徴があったのでしょうか?

表2 2023年度共通テスト 難化した主要科目の出題の特徴

科目 出題の特徴
英語
リーディング
様々な場面や状況に応じた題材による出題。
国語 全大問で複数テキストを比較・関連付ける思考力を問う出題。
世界史B 資料読解から一歩踏み込み、吟味・活用する力を要求。
倫理 選択肢数や文章量が増え、正確な判断に時間を要する出題。
政治・経済 正確な知識をもとに多様な資料を読解し、考察・判断する力を要求。
倫理、
政治・経済
正確な知識と資料読解を組み合わせて考察力を問う問題が増加。
生物 さまざまな切り口の実験考察問題が見られ、高い思考力を要求。

表2に難化した主要科目の出題の特徴についてまとめました。やはり、共通テストの特徴といえる複数の文章や多様な資料を示すことで、高い「思考力」や「判断力」が必要な出題が目立っています。このような出題方針による作問では、どうしても問題文の分量の増加が避けられず、しっかりとした読解力が身についていないと解法の糸口さえ見つからないといった状況に陥ってしまいます。また、実生活に則した実用的な内容を題材とした問題は、過去のセンター試験の問題にはあまり例がないことから、受験生にとっては馴染みがなく、単純にパターンに当てはめていくような解法が通用しません。さらに、対話形式の文章を示して考えさせる問題も大きな特徴です。
一方で、数学I・Aや数学II・Bは易化しましたが、出題傾向には大きな変化はなく、計算量が少なくなったり、解法の糸口がわかりやすかったことが平均点アップした要因です。次年度については、少し計算量が増加するだけで平均点がまたダウンすると思われるので、基本的な学力養成を怠らないようにしてください。

2024年度共通テストに向けての対策は

2022年度、2023年度と大きく平均点が変化した共通テストですが、かつての共通一次試験、センター試験の導入当初を振り返ると、3年目の平均点レベルでほぼ安定していった経緯があります。今後は、2023年度並の難易度を想定して対策を行うことが大事です。国語では、試行調査で見られたような本格的な「実用的な文章」や古文と漢文の融合問題はまだ出題されていませんが、出題されれば受験生にとっては厄介な問題となるので、要注意です。

これから何をすればいいのか

それでは、どのような対策が有効なのでしょうか?
共通テストでも必要とされる知識はあくまでも高校教科書の範囲内です。ですから、まずは早期に基礎事項の徹底と確認を行うべきです。その際には、かつてのセンター試験の問題も活用できると思います。しかし、過去問演習で終わってはいけません。必ず、模試や共通テスト対策の実戦型問題集で新作問題にチャレンジしてください。本番では、見たことのない新作問題にうまく対応できるかがポイントとなります。そのためには新作問題の演習が必要条件なのです。これを忘れずに対策をしっかりすれば、共通テストでの高得点確保は可能です。日々の努力を続けられることを期待しています。

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