大学受験の出願ガイド~願書の取り寄せから提出・注意点まで徹底解説

監修者:駿台予備学校 教務課

大学受験の「出願」とは、受験生が志望する大学に対して正式に受験を申し込むための、非常に重要な手続きです。

出願が大学側に受理されなければ、いかなる理由があろうとも試験を受ける資格は得られません。そのため、学力や合否以前に、受験生にとって最も重要な最初のプロセスだと言えるでしょう。

この出願手続きは、一律ではなく、大学ごとに入試要項や願書の形式、提出方法が異なります。出願に必要な書類の準備や、受験料の支払い方法も多岐にわたるため、受験生はまず出願の基本的な意味と全体像を正確に理解しておくことが大切でしょう。

本記事では、大学受験の出願を成功させるために必要な、すべてのステップを徹底的に解説します。

目次

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出願の準備|何をいつ始めるべきか?

出願手続きの準備は、夏頃から本格的に始めるのが理想的な流れです。まずは、志望校の入試要項を入手し、「出願資格」「出願期間」「出願方式」といった基本情報を確認するところからスタートすべきでしょう。

これらの確認が遅れてしまうと、必要な書類の発行が間に合わなかったり、出願期間を逃してしまったりといった、取り返しのつかない事態を招くリスクがあります。ここでは、出願前に必ず押さえておくべき基本的な準備について整理いたします。

出願条件・出願資格の確認

大学の学部課程へ出願するためには、文部科学省が定める「大学入学資格」に基づき、各大学が定める一定の出願資格をクリアしている必要があります。

この資格は、入学時点で条件を満たしていることが前提であり、もし満たしていなければ出願は認められません。一般的な受験生(高校3年生または既卒者)に適用される主な出願資格について、詳しく見ていきましょう。

ほとんどの大学において、出願資格の確認は受験生自身の責任で行うべき最も基礎的な作業であり、募集要項の該当箇所を熟読することが求められます。

高等学校卒業者または卒業見込みの者

最も広く適用される出願資格は、日本の高等学校(中等教育学校後期課程を含む)をすでに卒業しているか、または卒業する見込みであることです。

現役の高校3年生の場合、卒業見込み証明書の提出を通して出願が可能になります。この証明書や成績を記した調査書は、在籍する高校が発行する公式文書です。

発行には学校事務の手続きが必要なため、出願期間から逆算して、担任の先生や事務室に早めに発行を依頼しておくことが必須です。

また、大学によっては、卒業要件を満たせずに入学資格が取り消される可能性を指摘しているケースもあります。そのため、在学中の成績や単位取得状況の管理にも最後まで気を配り続けることが重要になります。

既卒者(浪人生など)の場合、すでに高等学校を卒業している場合は、卒業証明書と調査書(または成績証明書)の提出が必要です。

卒業から時間が経過している場合、高校によっては調査書が発行できないことがあります。その際は、大学に代替書類(成績証明書など)について確認し、指示に従う必要があるでしょう。

通常の課程による12年の学校教育を修了した者

日本国内の高校卒業者に限らず、海外を含めた12年間の一貫した初等・中等教育課程を修了している場合にも、大学入学資格が認められる場合があります。

この要件は、主に帰国子女や外国人留学生などが該当することが多いでしょう。各大学が指定する、12年間の教育課程を証明するための書類の提出が求められます。

また、外国語で発行された証明書の場合、大学によっては公的な翻訳機関による日本語訳の添付を義務付けていることが少なくありません。出願前に翻訳の準備期間も見込んでおく必要があるでしょう。

高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)合格者

高等学校卒業程度認定試験(高卒認定、旧:大学入学資格検定)は、高校卒業と同等の学力を証明するための国家試験です。

この試験に合格することで、年齢や高校の在籍歴にかかわらず、大学への出願が可能になります出願には合格証明書の提出が必須です。

高卒認定試験は年に2回実施されていますが、出願書類として利用するためには、出願期間に間に合うように合格していることが前提となります。試験日程や証明書の発行手続きを早めに確認しておくべきです。

その他の例

上記以外にも、特別支援学校高等部を卒業した者、高等専門学校(高専)の3年次を修了した者、国際バカロレア、アビトゥア、バカロレアなど、国際的な大学入学資格を保有している者など、大学入学資格が認められるケースはいくつか存在します。

これらの資格を持つ受験生は、個別の大学入学資格審査(個別の資格認定審査)を受ける必要がある場合も少なくありません。

詳しくは各大学の入試要項の「出願資格」欄を詳細に確認し、ご自身のケースが複雑である場合は、必ず入試課に直接問い合わせて指示を仰ぐようにしてください。

出願期間・締切の確認

出願期間は、大学や入試方式によって大きく異なります。総合型選抜は夏から、推薦型選抜は秋から、そして一般選抜は年明けの1月から2月に集中する傾向があると言えるでしょう。

郵送提出の場合は「必着」か「消印有効」かで提出期限の扱いが異なります。この違いを理解することが、締切を守る上で極めて重要です。

締切日の種類意味注意点
必着締切日までに大学に書類が到着している必要がある。郵便にかかる日数(通常2〜3日程度)を考慮し、余裕を持った発送が必要です。
消印有効郵便局の窓口で押される「消印」の日付が締切日以内であれば、大学への到着が締切日を過ぎても受理される。締切日の営業時間内に郵便局窓口での手続きを完了させる必要があります。ポスト投函では消印が当日にならないリスクがあるため、避けるべきです。

台風や大雪といった天候不良による遅延、あるいは年末年始の郵便業務の縮小なども想定し、締切日ギリギリでの提出は、不確実性を高めるため避けるのが賢明な対応でしょう。計画的に手続きを進め、締切日の数日前には発送を完了させることを目指すべきです。

最近ではインターネット出願が主流ですが、証明書を後送するなど、ネットのみで完結しない場合があるので注意が必要です。

出願校を決めるための追加チェックポイント

出願校を決める際、学問内容や偏差値といった要素だけでなく、受験戦略に関わる実務的なポイントも考慮に入れる必要があります。複数の大学・学部を併願する場合、これらのチェックポイントを基に計画を組み立てることで、合格機会を最大化できる可能性が高まります

全学部統一入試、学部個別入試、共通テスト利用入試など、多様な入試方式が用意されていることが多いです。

それぞれのメリット・デメリットを比較し、ご自身の得意・不得意に合わせて選択肢を検討しましょう。

また、同一大学内で複数の学部・学科に併願できるかどうか、その場合の優遇措置(受験料割引など)があるかも確認します。

志望度の高い大学の試験日程が重複していないかを確認するために、過去の試験日程をチェックし、併願計画を一覧化することが極めて重要となります。

日程が重複している場合は、どちらか一方を諦めるか、別の入試方式(例:共通テスト利用)での出願を検討しなければなりません。

さらに、ご自身の得意科目の配点が高い学部や、苦手科目を避けて受験できる科目選択制度があるかどうかを確認します。

これにより、合格の可能性を戦略的に高められるでしょう。そして、合格後の進学の可能性を現実的に考慮し、初年度納付金や自宅からの通学時間・手段、立地条件なども検討材料に加えるべきです。

願書の入手方法

願書の入手や必要書類の準備は、出願プロセスの基本中の基本となります。大学によって入手方法が異なってくるため、志望する大学がどの方式に対応しているかをまず確認することが、スムーズな出願の第一歩となるはずです。

現在は、紙の願書とWeb出願の二つの方式が主流です。

紙の願書を入手する場合

従来の紙の願書は、大学の公式サイトや、進学情報サイト経由で資料請求を依頼するのが一般的です。

ただし、郵送で願書が到着するまでには、数日〜1週間程度の時間が必要となります。出願期間が迫ってからの請求では間に合わない可能性があるため、十分な余裕を持って請求しましょう。

多くの高校では、主要な大学の願書をまとめて取り寄せています。現役生は、進路指導室や担任の先生に確認してみるのが最も早い方法かもしれません。

大学が実施するイベント(オープンキャンパスなど)で、願書一式を無料または有料で配布していることもあります。

紙の願書は、オンラインでの手続きが苦手な受験生には安心感がある一方で、記入欄が多く、一度間違えると訂正が難しくなるのがデメリットです。

修正液や修正テープの使用を認めない大学も多いため、下書きをしてから黒のボールペンで丁寧に清書する、といった慎重な対応が推奨されます。

Web出願を利用する場合

Web出願は、インターネット上で志願者情報の入力、受験方式の選択、そして受験料の支払いまでを一貫して行える、近年主流となりつつある便利な方式です。

Web出願のメリットは、24時間いつでも出願手続きが可能であり、時間の制約が少ないことです。

また、複数の学部・学科に出願する際、一度入力した基本情報を再利用できるため、記入の負担を大幅に軽減できますし、紙の願書に比べ、受験料が割引される大学も少なくありません。

一方で、オンライン特有のミスが発生しやすいという点には留意が必要です。入力内容の誤り(氏名、生年月日、住所など)、メールアドレスの間違い、アップロード写真の不備などが挙げられます。

Web出願を利用する場合、入力フォームの指示に沿って正確に入力を進め、提出ボタンを押す前に必ずすべての内容を再確認することが非常に重要です。

願書の記入と出願書類の準備

願書の記入工程において、大学側が最も重視するのは「正確性」と「丁寧さ」です。出願書類に不備があった場合、最悪のケースでは受理されないこともあり得ます。そのため、細心の注意を払って準備を進める必要があるでしょう。

提出に必要な書類

出願に必要な書類は、志願票(Web出願の場合は印刷したもの)、調査書、写真票、推薦書(推薦型選抜の場合)、資格証明書など、大学や入試方式によって多種多様です。

調査書の発行と取り扱い

調査書は、高等学校での学業成績や活動記録が記された公的な書類です。学校での発行には時間がかかるため、出願期間が始まるより前に、必要な部数を担任の先生や事務室に依頼しておくことが必須となります。

多くの大学で、調査書は「厳封」された状態での提出が義務付けられています。学校側が封をし、封印(割印など)を施したものは、誤って開封しないよう、厳重に取り扱う必要があります。

また、発行日からの有効期限が定められている場合があるため、既卒者(浪人生)は特に注意し、期限切れの場合は再発行を依頼しましょう。

証明写真の規定と撮影

証明写真は、受験資格を証明する重要な要素であり、大学ごとの細かいルールを遵守する必要があります。

「撮影時期(通常3ヶ月以内)」「背景色(白または青・グレーが多い)」「写真のサイズ(縦×横の寸法)」など、大学ごとの規定を要項で細かく確認すべきです。

Web出願の場合は、デジタルデータのアップロードが必要です。ファイル形式やファイルサイズに不備がないか確認しましょう。

写真の明るさ、影の写り方、表情などもチェックし、画質が粗すぎないように配慮することが求められます。

証明写真機のアプリ機能を利用すると、データ保存やサイズ調整ができて便利です。紙の願書の場合、写真票に貼付する際は、指定された位置に丁寧に貼り付け、裏面に氏名や志望学部を記入するなどの指示があれば、それに従う必要があります。

願書への基本情報の記入

氏名、住所、生年月日などの基本情報は、公的書類(住民票など)と一言一句違わず一致している必要があります。

漢字の旧字体や新字体、表記ゆれ(例:「番地」と「番」)には特に注意を払いましょう。略字やクセ字で記入すると、大学側でのデータ入力時に誤解が生じたり、処理ミスにつながったりする可能性があります。

枠の中に丁寧な楷書体で記入することが基本です。紙の願書の場合、指定された箇所に鮮明に押印するルールがある場合もあります。滲みや欠けがないよう、丁寧に取り扱うことが大切です。

受験料の支払い方法

受験料の支払いは、出願を完了させるための最終ステップです。決済が正常に完了したことを確認することが極めて重要となります。

大学によって、クレジットカード、コンビニ支払い、銀行振込など、多様な支払い方法が用意されています。ご自身にとって最も確実で便利な方法を選びましょう。

コンビニ支払いであればレシート、銀行振込であれば振込受付票、クレジットカード払いであれば決済完了メールなど、支払い後の控えや確認メールは、受験料を支払ったことの確固たる証明になるため、必ず大切に保存しておいてください。

指定された支払い期限を過ぎてしまうと、出願が無効となるケースがあります。必ず支払い期限を厳守し、決済が完了していない状態で書類を提出しないよう注意が必要です。

出願書類の提出方法と出願後の流れ

提出方法は郵送・Webアップロードなど、大学ごとに選択肢が異なります。ここでは、各提出方法の特徴と、出願後の重要な流れについて整理します。

郵送(簡易書留・速達)の場合

出願書類は、追跡が可能で万が一の際の補償がある「簡易書留」で必ず送るように指定されることが一般的です。

郵便局の窓口で手続きを行い、追跡番号が記載された受領証を受け取ることが必須となります。締切日が迫っている場合は、簡易書留に加えて「速達」のオプションを付けることで、より確実に期日内に到着させられるでしょう。

封筒の封は、のり付けなどでしっかりと閉じ、中身が抜け落ちる心配がないようにすべきです。重量によって切手料金が変わる場合があるため、料金不足を防ぐためにも、必ず郵便局の窓口で重量を確認し、正確な料金で発送すると安心です。

ポスト投函は、簡易書留の扱いができないため、絶対に行わないでください。

Web提出のみの大学の場合

完全にオンライン提出を採用している大学では、写真データやPDF書類の不備があると出願が成立しません。

アップロードするすべてのデータについて、大学が指定するファイル形式(例:PDF、JPEG)や、サイズ・解像度といった規定を正確に守る必要があります。

Web提出後は、大学の出願用マイページにログインし、書類が正しくアップロードされ、「出願確認中」や「出願受理」といったステータスになっているかを定期的にチェックしましょう。

メール通知が届く設定になっているかも確認し、トラブルを早期に発見することが大切です。

受験票の到着確認

出願が受理されると、いよいよ受験票が発行されます。受験票は試験会場に入るための「パスポート」であり、その到着確認は非常に重要です。

受験票は、郵送されるケース、PDFでダウンロードするケース、Web上で情報が掲載されるのみのケースなど、形式が異なります。

PDFで提供される場合は、指定された期間内にダウンロードし、印刷して大切に保管する必要があります。

受験票に記載されている氏名、志望学部、試験日、試験会場などの情報に誤りがないかを、受け取り次第、すぐに確認しましょう。

万が一、誤りがあった場合は、早急に大学の入試課に問い合わせてください。受験票を紛失した場合の再発行手続きの案内についても、事前に要項で確認しておくことが望ましいでしょう。

出願時の注意点

最後に、出願の際に受験生が押さえておきたい注意事項や、スムーズなスケジュール管理のポイントをまとめます。不備なく出願を完了させ、試験当日に万全の状態で臨むために、以下の点に留意して行動してください。

締切日を必ず確認し、計画的に行動する

出願期間の最終日が「必着」なのか「消印有効」なのかを、志望校ごとに細かく確認することが非常に大切になります。

このルールに応じて、願書の入手、記入、提出までを逆算してスケジュールを組み立てるべきです。

願書受付開始直後は比較的余裕がありますが、締切直前は出願が集中し、郵便局やWebサイトが混み合う可能性があります。「間に合わない」といった事態を防ぐためにも、余裕を持った計画的な行動を心がけてください。

提出書類の控えを取り保管しておく

出願時に提出した願書や調査書、志望理由書などは、すべてコピーを取り、必ず自分用に保管しておかなければなりません。

これにより、万が一、書類の不着や内容の確認が必要になった際に、提出したことの証明や内容の確認を行うことができます。

特に面接を伴う入試では、書類の内容について質問されることが予想されます。提出書類の控えは、面接対策のための重要な資料ともなるでしょう。

封筒の宛名マナーに注意

大学側から支給された宛名ラベルや、印刷した宛名に「○○大学行」と印刷されている場合があります。このまま送るのは大学職員に対する礼儀としてマナー違反にあたります。

「行」の部分は定規などを使って二重線で丁寧に消し、「御中」と書き換えてから郵送することが、社会的なマナーとして求められる行動です。

厳封書類の開封厳禁

調査書や推薦書など、学校側によって封がされた状態で交付された書類は、開封せずにそのまま提出することが原則です。

誤って開封してしまうと、その書類の公式な効力が失われ、無効となる可能性があるでしょう。万が一、誤って開封した場合は、速やかに学校に連絡し、再発行を依頼する必要があります。

再発行には時間がかかるため、出願遅れにつながらないよう、取り扱いに最大限の注意を払ってください。

願書は必ず本人が記入する

たとえ字に自信がなかったとしても、願書は必ず志願者本人が記入することが大前提です。保護者などによる代筆は、不正行為と見なされる恐れがあります。

特に、推薦入試などでは面接の際に、書類の内容だけでなく筆跡についても確認が入る場合があります。のような状況でも、自分の言葉で丁寧に書く姿勢が、大学からの信頼につながるはずです。

複数校出願のスケジュール管理

併願校が多い受験生は、大学ごとに出願期間、必要書類、支払い方法が異なっているため、混乱が生じやすいのが実情です。

出願の締切遅れや書類提出ミスを防ぐため、出願カレンダーや一覧表を作成し、提出期限や試験日程を一元管理することが賢明な方法でしょう。

特に、調査書の発行依頼日や受験料の支払い期限など、外部との連携が必要な日付を明確にすることで、出願ミスを大幅に減らすことができます。

まとめ

大学受験の出願は、合格へと続く道のりのうち、最も確実性が求められる最初の手続きです。願書の入手、正確な書類準備、確実な受験料支払い、そして決められた方法での提出など、どのステップも欠けてはなりません。

これらの手続きのどこか一つでも不備があると、試験を受ける機会を失う可能性があります。

特に、郵送提出における「必着」「消印有効」の厳密な違いを正しく理解すること、そしてWeb提出におけるデータ不備に細心の注意を払うことが肝要です。

また、調査書や証明写真の準備には、予想以上に時間がかかることが多いものです。出願期間が始まってからではなく、それより早くから行動を開始することで、スケジュールに余裕が生まれ、あらゆるトラブルを未然に防げる可能性が高まります。

志望大学の公式サイトや募集要項を必ず確認し、落ち着いて、一つひとつ確実に手続きを進めていくことこそが、受験本番で実力を発揮するための第一歩となるでしょう。受験生の皆さんが万全の体制で出願を完了し、その後の学習に集中できることを願っています。

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