『学問選び、志望理由のモト』法律・政治・総合政策~これからの時代を担う責任~

監修者:駿台予備学校 教務課

進路はあなたの学びたいこと、将来の夢を軸に選びたいものです。しかし、やりたいことが見つからない、まだ漠然としているという人も多いでしょう。
この記事では、学問選びや目標探しのヒントとなるトピックスを紹介します。

目次

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法律の答えは一つではない?【法学(法律学)】

法学(法律学)の目的・魅力

法学とは法を対象とするさまざまな学問(法哲学や比較法学などを含む)の総称です。それに対して、法律学は法律の解釈や運用など、もう少し限定した意味をあらわすことが多いようです。
法学部で学ぶ目標の一つであるリーガルマインドは、法的思考力・判断力などと解釈され、さまざまな場面に対して法律を正確に適用するための能力や態度を意味します。これは、問題発見能力や論理的思考力、社会的教養など、幅広い場面で必要とされるものです。法律を学ぶことによって、公正な判断力やバランス感覚、言葉を厳密に扱う国語力なども養われます。

令和になって成年年齢が18歳に

民法とは簡単に言うと、市民生活に関する基本的な法律です。明治時代から約140年間、民法によって日本での成年年齢は20歳と定められていました。これが民法改正によって、2022年4月から、成年年齢が20歳から18歳へと引き下げられました。たとえば、親の同意がなくても、携帯電話を契約したり、一人暮らしの部屋を借りたりできるようになったことは、皆さんも学習したことでしょう。
財産(売買・賃貸借・不法行為など)や家族(夫婦・親子・相続)に関して定める法が民法ですが、このように私たちの生活と密接にかかわっています。

ネット社会と表現の自由

SNSにおける誹謗中傷被害に対して、プロバイダ責任制限法の改正により発信者の情報開示請求の仕組みが簡素化されるなど、インターネット上の違法・有害情報に対する対応が進んでいます。
一方で表現の自由は日本国憲法で保障されています。なにより、国民が自由に意見を発することは、民主主義の根幹にかかわる重要な権利です。
では、どこまでが保障されるべき正当な表現の自由かというと、その線引きはなかなか難しいものです。こうした唯一の正解がない問題に対して、過去の事例(判例や裁判例)を積み上げて、納得のいく結論を導き出すのが法律家の役割と言えるでしょう。

LGBTQの議論

法による判断は社会や人々に大きな影響を与えますから、さまざまなプロセスを経て慎重に進められることはもちろんですが、時代とともに「正解」も変化しています。
家族やジェンダーに対する価値観が多様化する中で、個人の性的指向や性自認の問題が盛んに議論されるようになってきました。性的少数者に対する理解を増進する法律が成立したり、同性婚が合憲か違憲かが裁判で争われたり、社会的関心は高まっていますが、まだ議論の途中と言えるでしょう。
このほか、AI(人工知能)や生命倫理など、法律が関わる新たな問題が山積しています。

法律で学ぶテーマ例

いわゆる六法(憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法)を基本に、専門的なテーマに展開していくのが法律の学びです。知的財産、消費者保護、企業活動、社会保障など、扱う問題は多岐にわたります。
次々に起こる新たな問題や社会の変化に対して、現行の法律が十分に対応できているかどうかを考察することも大学の研究テーマになるでしょう。

政治学は政治家のためだけの学問でない?【政治学】

政治学の目的・魅力

政治学は、公平で秩序ある社会を築くために、国家や権力のあり方、社会制度や人々の政治行動などについて研究する学問です。
日本や欧米の多くの国は「民主主義」による政治が行われています。一方で、宗教や政治体制による対立も世界では起こっています。さらに、民主主義とされる国家でさえも、経済格差や人種差別などさまざまな問題を抱えています。
古代ギリシアから考え続けられてきた永遠のテーマですが、豊かで平和な社会を築くためには、政治家や研究者だけでなく、私たち一人ひとりが当事者となって考えるべき学問と言えるでしょう。

選挙を分析する

2015年6月、公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、交付されました。これにともない選挙権年齢が満20歳以上から満18歳以上に引き下げられました。若い世代が政治に関心をもち、政治に積極的にかかわることが期待されています。
さて、最近の政治に大きな影響を与えているのが世論調査です。また、投票日当日の開票開始早々に当選確実と報道されることがあります。このように、調査や選挙の投票行動にあらわれる国民の政治意識や政治行動などを分析するのも政治学の領域です。政治学でも統計や情報の知識・スキルが役立つことは言うまでもありません。

政治とマスメディアの役割

たとえば、戸籍に記載のない無戸籍者(児)の問題は、マスメディアの報道によって国会でも取り上げられるようになりました。DVや離婚の増加が背景にあるとされています。
この問題は民法改正(嫡出推定の見直し)につながりました。マスメディアには、監視、議論、教師の機能があると言われています。表にあらわれにくい問題に焦点を当て、議論すべき問題を提起し、解決に至ることができれば理想です。マスメディアのあり方にはさまざまな議論がありますが、政治や社会、世論の動きを左右する存在なのは確かです。
まずは新聞やニュースで取り上げられている話題について、問題意識をもつことから始めましょう。

今を読み解き、未来に活かす学び

SNSや動画投稿サイトによる情報発信も、政治活動の主要な手法になりました。一般の人々も意見を広く発信できます。多様な意見が交わされることは望ましいですが、一方で同じ考えや価値観をもつ人々同士が集まり、対立や分断が進む懸念もあります。不安や閉塞感が高まるとポピュリズムが台頭しやすくなり、問題を難しくすることもあるでしょう。
政治学は社会科学系の学問を横断した総合学という側面があります。政治学の「知」は、情報や根拠のない噂に惑わされることなく、世の中を読み解き、未来に向けてより正しい判断をするための手がかりになるはずです。

政治学で学ぶテーマ例

政治学では、政治の理論や原理、思想や歴史、政策などについて、体系的に学びます。研究対象も国家から地域、国際まで扱い、グローバル、ローカルを問わずアプローチできます。
国際関係が複雑化する中で、おもに地理的条件から国家や民族について考察する地政学も注目されています。

議員のなり手がいなくなったらどうする?【総合(公共)政策学】

総合(公共)政策学の目的・魅力

法学(法律学)、政治学、経済学、経営学、社会学などの社会科学系の学問を基礎として、社会の問題解決に総合的にアプローチしていくのが総合政策学です。情報や環境といった理系分野、語学や異文化といった国際分野とも融合し、多角的な学びが展開されます。
明確な区別はありませんが、総合政策学が社会の問題を広く扱うのに対して、公共政策学は政府や地方自治体、地域やNPOなどによる政策や活動をおもに扱うことが多いようです。

高まる地方自治の危機感

総務省の統計によれば、今年行われた統一地方選挙では、町村長選挙で5割超、町村議会選挙で3割超が無投票(立候補者が少なく、有権者による投票を行わず当選となること)となりました。地方自治体の首長や議員のなり手不足は深刻な問題になっています。無投票になると、選挙によって民意を反映できないことはもちろん、議会に対する信頼や関心がさらに薄れていくことが懸念されます。
議員報酬の増額や夜間・休日議会などの試みも行われていますが、なにより住民に議会への関心や自治意識を高めてもらうことが必要です。
政策学では立案だけでなく、問題解決に向けて能動的に行動することが求められます。

持続可能な社会へ

ソーシャルビジネス・コミュニティビジネスとは、地域社会の課題解決に向けて、住民、NPO、企業など、さまざまな主体が協力しながらビジネスの手法を活用して取り組むものです(経済産業省)。このようなビジネスの担い手を社会起業家と言います。
たとえば、空き家を活用して経済的に困難な人向けにシェアハウスを提供したり、食品ロス削減のため規格外食品を扱うショッピングサイトを運営したり、きめ細かい活動を展開しています。海外と連携しフェアトレード(開発途上国と公平・公正な条件で行う貿易)の普及に努める団体もあります。社会課題の解決のチャネルは行政や議会だけではないのです。政策形成過程へ住民が参加する動きも広がっており、従来の枠組みにとらわれない新しい形で問題と向き合っていくことが期待されます。

総合(公共)政策学で学ぶテーマ例

行政や政策、経済や経営などの理論を学ぶとともに、子育て、介護、労働、格差、地域創生、環境、エネルギーなど、国内外の諸課題に取り組みます。
フィールドワークや産学官連携活動なども取り入れ、問題の本質をつかみ、解決方法を考え、実行するまでのPDCAサイクル(Plan→Do→Check→Action)を学生が主体的に実践します。

まとめ

法律や政治は、社会で自分を守るための知識です。さらに、総合(公共)政策は世の中をよりよい方向に自ら主体的に変えていこうというアクションと言えます。未来は皆さんの力で変えることができます。法律や政治は堅苦しいものではなく、アクティブな学びなのです。

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