志望理由書は、学校推薦型選抜や総合型選抜を受験する際に提出する出願書類の一つです。大学を選ぶ理由や大学で学びたいことなどを述べ、入学したい意欲をアピールします。受験生の主体性等の評価が広がる中で、志望理由書の重要性は高まっています。
志望理由書とは? その重要性は?
学校推薦型選抜や総合型選抜では提出が必須と言える出願書類
志望理由書では、
① 大学で学びたいこと
② 自分のアピールポイント(学びたいことにつながる経験や活動)
③ 志望大学を選ぶ理由
④ 将来の目標、
などを述べるのが一般的です。
書式や文字数は大学によって異なります。また、自己推薦書と呼ぶ大学もあります。
近年では、一般選抜でも提出を求める大学が見られます。
選抜にあたって重要な判断材料の一つと考えよう
志望理由書は、
① 入学意思を確認する
② 一次審査の判断材料とする
③ 面接時の参考資料とする
などの利用が考えられ、選抜方式によって重視するポイントが異なります。
学校推薦型選抜や総合型選抜では、受験生の意欲(志望動機)が特に重視されます。
加えて、学校推薦型選抜では、第一志望(専願=合格したら入学を前提とする)かどうか、総合型選抜では、入学意欲と大学が求める学生像への理解ができているかが、入試科目の得点と同等に評価されると考えて良いでしょう。
志望理由書の記述をもとに面接が行われますから、学びたいことや将来の目標など自分のビジョンを書き始める前に固めておくことが大切です。
志望理由書で問われること

大学で学びたいことが明確か
大学で学びたいことが具体的であるほど入学したい意欲を強くアピールできます。
「なぜその学問を学びたいか」を、興味をもった動機、学びたい内容、自分の将来や社会にとってどのように役立つかなど、さまざまな角度から考えて、説得力のある文章に仕上げましょう。
動機やきっかけ、大学で学びたいこと、そして将来の目標が一貫していることも説得力を高めるポイントです。
志望大学を選ぶ理由が明確か
大学ごとに、教育理念や校風、教育内容や環境は違います。詳しく調べたうえで、自分に合っていると判断して志望している受験生が評価されることは言うまでもありません。
そのためには、大学案内やウェブサイトなどを参考にすることはもちろん、オープンキャンパスに参加したり先輩から話を聞いたり、積極的に情報収集することが重要です。
大学で学ぶためにふさわしい資質や能力を備えているか
高校までの学習と異なり、大学ではいっそう自主性をもって学ぶことが求められます。
高校時代に熱中できることを見つけて取り組んだり、学びたい学問について詳しく調べたり、日ごろの行動の積み重ねがアピール材料になります。
また、大学ではレポートやプレゼンテーションなどで発信する能力が重要になります。
志望理由書では、自分の主張を筋道立てて伝える表現力も問われます。書くことや話すことに苦手意識がある人は、先生のサポートを受けながら、この機会に練習に取り組みましょう。
志望理由書の書き方のポイント

全体の見通しを考えて書く
「情報を整理する」→「書くべき情報を選ぶ」→「構成を考える」→「文章化する」→「推敲する・添削を受ける」のように、プロセスに従い進めましょう。特に情報収集や情報選びをおろそかにすると内容が浅くなります。
志望理由書に記述する要素は、
① 学びたいことの要点
② 自分のアピールポイント(学びたいことにつながる経験や活動など)
③ 大学まで学びたいことの具体的な説明
④ 志望大学を選ぶ理由
⑤ 将来の目標
などです。
それぞれメモなどに書き出して、精査します。
記入スペースや文字数を考慮して、書くべき情報を取捨選択します。
①~⑤の要素や順番は一例ですが、構成を考えてから書き始めます。
書き出しと終わりの締め方
志望理由書の書き出しは、①の学びたいことの要点や、④の志望理由を簡潔に述べるところから始める良いでしょう。
例えば、①の学びたいことから始める場合は
「大学で学びたいことは・・・である。具体的には・・・」のように、要点から書き始め、詳しい説明に展開していく流れがわかりやすく説明するポイントです。
将来の目標⑤は、結論(まとめ)として、目標に向けて大学で学業や諸活動に励んでいく意欲を伝えて締め括ると好印象です。
志望理由の書き終わり、締め方には特にルールはありません。「以上」と書くべきかどうかと悩む人がいますが、例えばその後に少し余白が残ってしまうなどであれば、途中ではなくこれで終了であるという意味を示すために、改行して右詰めで「以上」と記載しても良いですし、最後に「上記の理由から、貴学を志望いたします」と書いても良いでしょう。
これらを書くために大切な内容が削られてしまっては本末転倒ですので、無理に書く必要はありません。
指示されている設問をよく読む
「入学後に、何を学び、どのようなことに取り組みたいか、大学卒業後を見据えた到達目標とあわせて具体的に記述しなさい」など、大学によっては、記述内容について指示されている場合があります。
その場合、指示された内容をもれなく述べる必要があります。また、「自己紹介」「高校時代の経験」など、設問を分けて記述を求めるケースもあります。
学部・学科・専攻やコースごとに志望理由書の様式や設問が異なる場合もありますので、入試要項や出願書類を十分に確認してから取りかかりましょう。
模範解答でなく自分の言葉で具体的に書く
本やウェブサイトのマニュアルに頼った志望理由書は避けたいものです。サンプルと同じような志望理由書では当然良い評価は得られません。部活動でどのように頑張ったのか、学問分野の中でどのようなテーマに興味があるのかなど、振り返りや情報収集を十分に行って、具体的で独自の記述を心がけましょう。
学びたい学問に関する情報やデータを盛り込むことは具体的で良いですが、論文や公的な発表など信頼できる資料を参考にしましょう。面接で資料の出典を質問されたときに答えられるよう記録しておくことも必要です。また、資料の引用(丸写し)が多い書き方は避け、資料をもとにした自分なりの考察も述べましょう。
指定された文字数のどれくらいの長さにするか
記述量は、概ね指定された文字数の8割以上を埋めるのが望ましいです。
また、指定された文字数によって書き方を工夫すると良いでしょう。
例えば、目安として400字未満であれば段落を分けない(段落ごとに改行しない)、400字以上であれば段落ごとに改行して読みやすくするなどです。
100字~200字程度と短い場合は、前述したように、要点から書いて詳しい説明を省く要領で、伝えたいことを書き洩らさないように注意しましょう。
志望理由書の提出用紙は、原稿用紙のようにマス目が印刷されている場合とノートのように罫線のみが引かれている場合があります。特に原稿用紙の場合は、句読点・数字・括弧など、原稿用紙のルールを守って書きましょう。
読み手の立場で読みやすく書く
書きあがったら、読み手の立場に立って、推敲して仕上げます。
- 誤字脱字がないか
- 文体を統一しているか(です-ます、だ-である)
- 漢字とかなを、適切に使い分けているか?
- 1つの文が長くないか
- 話し言葉を使っていないか
など、しっかりチェックしましょう。
作文におけるマナーや基礎的な文章力もチェックされるポイントです。
第三者のチェックを受ける
自身の目では完璧と思える志望理由書も、読みやすいか、一貫性があるか、独自性があるかなどの判断は、第三者の目で見てもらうことでさらに磨き上げることができます。できるだけ大学受験を良く知る高校の先生や予備校のスタッフのチェックを必ず受けましょう。
そのためにも、出願締切直前に書き終えるのではなく、計画的に余裕をもって取り組みましょう。
面接での志望理由、志望動機の答え方

事前準備
先に述べたように、事前に提出した志望理由書を元に、面接での質疑応答がなされます。面接での受け答えが提出した志望理由書と異なってしまうことがないようにしましょう。
事前の準備として、志望理由書を読み込んでおくことは大切ですが、暗記しても、面接会場に入ったら頭の中が真っ白ということもありえます。また少しひねった質問のされ方をした時に、対処できなくなります。
まずは、志望理由書の内容を声に出して読むことをお勧めします。
次に質問を想定して、声に出して、回答する練習をしておきます。それによって、志望理由書に書いたことが自分の言葉になっていきます。
回答をしていくうえで、もう少し説明の必要がありそうだ、と感じるところは、情報収集して補足する準備もしておきましょう。
話し方…要点から始める
要点(結論)から話し、詳しい説明を続ける流れは志望理由書を書く場合と同じです。
面接の場合、1分で、3分でと回答時間を指定される場合があります。そのためにも「これだけは伝えたい」というポイントを整理しておきましょう。時間指定がない場合も、ダラダラとまとまりのない話し方は禁物です。
かと言って、ワンフレーズだけの短すぎる回答も意欲が伝わりません。1つの例として「結論」+「理由や具体例」+「まとめ」といった3つ程度の文で話すことをここらがけるのも一つの方法です。
「私が志望している理由は…ためです。(結論)
なぜなら、…(理由や具体例)
そのため、貴学を志望いたしました。大学生活では…したいと考えています(まとめ)」
こんなときはどうする?
- ・「志望動機は?」と聞かれて、「志望理由書の記載と同じです」という回答はありか?
-
この質問は、面接官があらためてあなたの言葉で志望動機を語ってほしいという意図があります。志望理由書をしっかり考えて書いているか、本当に第一志望かどうかを確認する質問と考えましょう。ですので、「志望理由書の記載と同じです」で終わりにするのではなく、改めて言葉で伝えましょう。伝えようとする意欲が大切です。特に志望理由書の記述が100~200字程度と短い場合には、理由や具体例を交えて、詳しく話すとよいでしょう。
- ・「面接であまり質問されなかったのですが・・・」
-
用意した回答が面接で質問されないことはもちろんあります。選抜は、志望理由書や面接、実施される場合にはプレゼンテーションや学力テストも含めて総合的に評価されますから、気にせず面接後に実施される課題や試験にも最善を尽くしましょう。
また、面接もすべての質問を通した全体的な評価ですから、仮に1つの質問に思うように答えられなくても、気持ちを切り替えて臨みましょう。
志望理由を考えるときの、よくある誤解とNG例

ありのまま書けば良い?
志望理由書を書く際に、飾らずにありのまま書くようにアドバイスされることがあります。
ただ忘れてはいけないことは、志望理由書はアピールするために書く文章であることです。反省文や報告書ではありません。失敗体験であればそこからなにを学んだか、短所であればどのように改善しているか、またたとえ保護者の勧めで受験する場合でも自分なりに大学にどのような魅力を感じているかなど、前向きな記述を意識しましょう。
創作しても良い?
ただアピールしたいからと言って、事実でないことや、誇張したことを書くのはNGです。面接の質問によって事実かどうかチェックされます。また、背伸びし過ぎて学問についてあまりよくわかっていない専門的な内容を書くと、プロの研究者である教授から指摘を受けることもあります。自分が経験したことや調べたことをもとに、自信をもって説明できることを書きましょう。
志望理由書に詳しく書かなくても面接で説明できれば良い?
面接で詳しく説明しようと考えて、志望理由書の記述が浅いのはもったいないです。志望理由書と面接を別々に評価する場合もありますし、そもそも面接で質問されない可能性もあります。また、記述量が指定文字数より大幅に少ない場合も減点の対象になります。
内容さえよく書けていれば良い?
もちろん、書いてある内容は重要ですが、読みやすいかどうか?ということも大切なポイントです。
手書きの字に自信がない人も、読みやすい字で書くことを意識しましょう。達筆である必要はありません。字が極端に大きかったり小さかったりすることも避けましょう。書き間違えた場合は、あらためて書き直すのか訂正すれば良いのかなど、大学の指示を確認して対応します。
細かいことですが、細く薄い字より、太く力強い字で書かれているほうが読む人に意欲が伝わります。
将来の夢がない!? 具体的になっていない場合の志望理由の見つけ方

ここまで、志望理由の書き方や答え方について、解説してきましたが、そもそも見つからない!と悩んでいる人もいるかもしれません。思うように志望理由が見つからない時の見つけ方について、解説します。
学びたいことの見つけ方
- ・社会の問題やニュースをチェックしてみる
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大学で学びたいことを考えるときに、自分の興味・関心だけから考えると詰まってしまうことがあります。視点を自分ではなく社会へ向けて、「世の中で問題になっていることで、自分が役に立てそうなことはないか」と考えてみたらどうでしょう。情報、エネルギー、国際、環境、教育、医療など、あなたと接点のある問題を探してみましょう。
- ・オープンキャンパスの模擬授業を受けたり、授業動画を視聴したりしてみる
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オープンキャンパスの模擬授業やウェブサイトの授業動画では、専門的な学問を高校生向けにわかりやすく解説しています。入門として学問を知る手掛かりになりますし、気になった教授や授業が見つかれば、その大学を志望する理由にもなります。
- ・ゼミやシラバスを調べてみる
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ゼミは興味関心のあるテーマについて少人数で調べたり議論したりする大学ならではの授業です。大学案内やウェブサイトには、ゼミで取り組んでいるテーマの例が紹介されていますから、学びたいことを見つけるヒントになるでしょう。また、シラバス(大学で開講している各授業の内容を記載したもの)も公開されていますので、参考にしてみましょう。
その大学を志望する理由の見つけ方
- ・学部・学科・専攻・コースの特徴を知る
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志望大学に自分が学びたい「学部・学科・専攻・コース」があることは、大学を選ぶ説得力のある理由になります。学部・学科を専攻・コースにさらに細分化したり、あるいは専門外の科目も柔軟に学べたり、特色あるカリキュラムを用意している大学が多くあります。大学案内やウェブサイトには、各学部・学科の特徴や強み、就職先などがまとめられています。
- ・大学の沿革を見てみる
-
設立者の思い、設立目的、教育理念には各大学の伝統や個性があらわれています。
例えば、どのような学部・学科からスタートしたのか、どのような人材を輩出してきたのかなど、歴史や実績は今の大学の運営にも影響を与えています。大学に対するイメージがより具体的になるでしょう。それぞれの大学の個性やキャンパスの雰囲気に触れる楽しさもあります。 - ・3つのポリシーを必ず確認する
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大学全体や学部・学科ごとにアドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)、カリキュラムポリシー(教育課程編成方針)、ディプロマポリシー(学位授与の方針)が定められています。
このうち、アドミッションポリシーは「どういう人に入学してほしいか」を示したものです。学びに対する姿勢や卒業後のビジョン(どのように活躍したいか)などが志望大学の方針と共通していれば大学の期待も高まりアピールになります。
志望理由書作成は受験勉強のモチベーションアップにもつながる
志望理由書をまとめることは、自分のやりたいことを深く考えたり、大学や社会に対して視野を広げたりする弾みになります。志望理由書は未来へ向けた自分の計画書です。夢や目標が明確になれば、受験勉強にいっそう励む理由にもなるでしょう。出願のために書くことだけを目的にしないで、自分の成長のきっかけになるように取り組んでほしいと思います。
志望理由書や面接はどう伝えるかというテクニックだけでなく、なにを伝えるか、伝える内容が重要です。出願が迫ってから付け焼刃で書くものではありません。ぜひ日ごろから将来について考えたり、行動したりして、それを記録する進路ノートをつくることをお勧めします。出願にあたって、志望理由に使える情報の宝庫になるでしょう。