
執筆:八尾直輝
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長
執筆:八尾直輝
「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長
受験のために、模試を受けることは必須と言われます。受験は相対評価で合否が決まりますので、学力を模試で確認することは確かに必要です。
大学受験を考えている人は定期的に模試を受験することで、自分の学力を知り、適切な学習ができているかを確認しておくべきです。
一方で模試は到達度を示すもので、受験することで成績が伸びるわけではありません。模試は受験するだけではなく、活用することが重要です。このコラムでは模試の適切な活用法を「対策」と「振り返り」の2つの観点で考えてみます。
模試は普段の学習のペースメーカーです。すなわち結果を見て一喜一憂するのではなく、普段の学習の改善に役立てることが重要です。模試に向けた対策は必要ですが、あくまでも普段の学習の延長上で考えるべきです。普段の学習を疎かにして、「模試対策!」と張り切るのは本末転倒です。
そういう意味で、理想は対策しないこと、ということもできます。難関大学合格者のなかには「特段模試に向けた対策をしたことがない」という人が一定数います。良い学習習慣ができていれば、直前の対策は不要なのです。もちろんこれは理想論であり、苦手な単元で復習ができていなかったり、忘れてしまっている内容がある人がほとんどです。模試の対策はこのように、「普段の学習でうまくいっていないところ」を帳尻合わせすることが大切です。
模試の対策で優先すべきは「苦手の克服」です。模試の出題範囲は広く、全範囲を対策するというのは現実的ではありません。課題を絞り、明確にすることで模試を苦手克服の機会にすることが重要なのです。
苦手範囲というと「三角関数」のように、単元を想起する人も多いと思います。ここから具体的な課題(教材)に落とし込むことで、実現可能な計画を作ります。「〇〇問題集1-50」といった要領で、教材と範囲を具体的に決めるのがポイントです。適切な範囲・量にするのは少し難しいかもしれません。その場合は先生に相談し、課題を決めてもらうのも良いでしょう。
実力を発揮するために、形式に慣れておくことも重要です。実力を出し切れなければ、自分の弱点もわかりません。問題数や制限時間、解答形式などをあらかじめ調べ、可能であれば過去問を解き慣れておきましょう。
課題が決まったら、模試の試験日まで逆算して計画的に取り組みます。課題リストごとに必要な学習時間を見積もるのも良いでしょう。必要な総時間がわかったら、模試までの学習日数で割り、1日あたり模試対策にかける時間を算出します。日々の学習と並行して進めることは意外と難しく、ともすれば模試対策が疎かになりかねません。毎日必要な学習時間を確保するために、模試対策から優先して取り組むのも良いです。
計画には「予備日」を設けるのも有効です。計画は完全に思い通りに進むものではありません。余白のない計画はほぼ確実に挫折します。「日曜日の午後はあけておく」「土曜日は計画の遅れを取り戻す日にする」など、意識的に計画に余白をつくるようにしましょう。
模試の解き直しは重要です。しかしとにかくすべてを解き直せば良いというものでもありません。解き直し自体にかなりの時間もかかりますし、そもそも解けなかった問題を解くためには学び直す必要があることも多く、それもまた時間がかかります。
もちろん模試は重要な内容から出題されることが多いので、適切に振り返りを実施することにはとても意味があります。
このコラムでは最後に効率よく解き直しをする方法について考えてみます。
模試には様々な内容が出題されます。必ず理解しておくべき基本問題もあれば、正答率が10%を切るような難問もあります。学習者の状況に応じて、優先順位をつけて振り返りをすることが大切なのです。
まず模試が返却されたら以下のように問題を3つに分類しましょう。
「〇」 …正解できた問題
「△」 …不正解だが、もしかしたら正解できた問題
「×」 …不正解だったし、正解するのは難しかった問題
不正解だった問題を「△=正解できたかも」「×=正解できるはずがなかった」の2つに分類するのがポイントです。この「△」こそが優先して復習すべき問題です。なぜなら重要な基礎事項であったり、勉強のやり方から見直す必要がある可能性があるからです。
解き直しにあたっては、「△」が「〇」だった場合何点になるかも計算してみましょう。意外と高得点がとれたかもと感じる生徒も多いものです。
この得点を「得点ポテンシャル」と呼びます。振り返りをすることの意味を実感し、効率よく復習することができるやり方なので、ぜひ試してみてください。
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「勉強のやり方」を教える塾プラスティー・塾長。 「できない」を「できる」に変換する独自の学習法と習慣形成の支援を行う「学習コーチ」というサービスを開発・提供。 共著には『ゲーミフィケーション勉強法』『小学生から自学力がつく』があり、雑誌『螢雪時代』への寄稿や、講演会の開催、学校・予備校・教育サービス開発に広く携わっている。
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