大学受験生にとって睡眠時間は非常に重要です。睡眠時間の長さと質は学習効率に影響します。大学受験生に最適な睡眠時間は、6時間または7時間半程度です。これから大学受験に臨む高校生や高卒生(浪人生)の皆さん向けに、睡眠不足が与える影響や良質な睡眠を得るためのポイント、効率的な勉強方法などを解説します。ぜひ参考にしてください。
大学受験生に必要な睡眠時間は6時間か7時間半
甲南大学知能情報学部の前田多章准教授によると、個人差はあるものの、大学受験生に最適な睡眠時間は、6時間または7時間半とのことです。
睡眠では、脳を休めるためのノンレム睡眠と、体を休めるためのレム睡眠が交互に繰り返されます。ノンレム睡眠とレム睡眠の1セットが約1時間半。このセットが4回繰り返されると6時間、5回では7時間半になります。
さらに、睡眠には記憶を脳に定着させる働きがあるため、睡眠が阻害されると、記憶の定着に支障をきたします。
前田准教授が提唱する睡眠と記憶の関係に関する詳細は、以下の記事を参照してください。
※参考:第1回 「睡眠と記憶について/基本的な睡眠とは」|甲南大学
実際の大学受験生の睡眠時間はどのくらい?
内閣府がまとめた「平成27年度版子供・若者白書」によると、高校生の平均睡眠時間は約7時間。平成23年度のデータでは、平均起床時間は6時54分、平均就寝時間は23時48分です。難関大の受験生の平均睡眠時間は6〜7時間といわれています。自分に必要な睡眠時間を考える際の参考にしてください。
睡眠不足が引き起こす影響
睡眠不足が大学受験生に及ぼす影響として、学習効率が下がる、精神的に不安定になることが挙げられます。それぞれのポイントについて詳しく解説します。
学習効率が下がる
睡眠不足は思考力や記憶力、集中力、注意力の低下を招きます。そのような状態で受験勉強をしても、暗記した英単語など、せっかく覚えた内容が記憶としてうまく定着せず、学習効率が下がってしまいます。学習効果が最大限に高まるよう、日々十分な睡眠時間を確保して心身の疲労回復を図りながら、受験勉強に臨むことが大切です。
精神的に不安定になる
睡眠が不足すると精神的に不安定な状態に陥り、不安感や苛立ち、焦りなどの感情が芽生えやすくなります。また、やる気が喪失してストレスの蓄積につながります。精神的に疲労すると勉強を継続できないため、全体の学習効率が悪くなります。精神的に不安定な状態を避けるには、良質な睡眠をしっかりとることが肝心です。
大学受験に向け生活習慣を朝型にするメリット
大学受験に向けて朝型の生活に切り替えることで、2つのメリットが得られます。ポイント別に解説します。
学習効率が上がる
朝、目覚めた後の3時間はゴールデンタイムとよばれます。脳は睡眠中に記憶を整理するため、目覚めた直後は新規の情報処理がスムーズに進み、注意力が高まります。朝の勉強で高い学習効果が得られるのはそのためです。反対に、学校から帰宅した後は頭も体も疲れているため、勉強しても集中力が途切れがちになり、学習効率は下がってしまいます。
受験本番に備えられる
夜型の人の場合、本番間近になってから朝型に切り替えるか、あるいは受験当日だけ早起きをする傾向があります。そのため、起きた後にきちんと脳のスイッチが入る朝型の人と違い、午前中の試験では本来の実力を発揮しにくい実情があります。普段から朝に脳を働かせる習慣が身についていれば、本番でもスムーズに脳を活性化させられます。
朝型にシフトしながら睡眠時間を確保する方法
朝型の生活習慣にシフトしつつ、十分な睡眠時間を確保するにはどうしたらよいのでしょうか。2つのポイントで解説します。
睡眠時間を固定する
朝型に切り替えるには、必要な睡眠時間を決め、起きる時間と寝る時間を固定するのが有効なやり方です。例えば、睡眠時間を7時間半と決めたら、夜は22時に寝て、朝は5時半に起きると十分な睡眠が確保できます。
起きる時間と寝る時間が固定されれば、睡眠時間を削る必要もなくなります。なるべく早い段階で朝型の学習習慣に切り替えて、睡眠時間を固定させることがポイントです。
勉強の計画を立てる
受験勉強で学習する内容、そしてどのくらいの時間をかけて学習するかの計画を立てるのも重要です。明確な計画があれば、それに沿って効率的に勉強ができます。計画を立てる際は、実際に勉強に割ける時間を考慮して計算するなど、現実的で実行可能な内容にする必要があります。さもないと、計画倒れを招いたり、時間が足りず睡眠時間を削ったりする結果になりかねません。
受験勉強には良質な睡眠が重要
受験勉強に良質な睡眠が重要な理由と、良質な睡眠を得るためのポイントを解説します。
良質な睡眠が重要な理由
勉強で心身ともに疲弊している受験生は、睡眠時間の長さだけでなく、質の面も考慮するのが重要です。良質な睡眠には、疲労回復効果があります。睡眠中に脳の疲労が解消されるだけでなく、成長ホルモンが分泌されるため、身体的な疲労回復も促進されます。
良質な睡眠で疲労が回復すれば、翌日のパフォーマンス向上につながります。逆に睡眠の質が悪い場合、翌日も心身ともに疲労感が残り、勉強に集中できず学習効率が低下します。
良質な睡眠をとるポイント
良質な睡眠を得るには何に気をつければよいか、具体的に解説します。
起床後に朝日を浴びる
朝、起きてすぐに太陽光を浴びると、体内時計のずれをリセットできます。人間の体内時計は24時間よりも長い周期のため、調整しないと体内のリズムが後ろ倒しになってしまいます。また、室内で照明を長く浴びていても、体内時計に遅れが生じます。朝日を浴びるタイミングに間に合うよう、夜はなるべく早めに寝ることを心がけ、決まった時間に起きましょう。
夕食は寝る3時間前に済ませる
睡眠は内臓の調子を整えるためにも必要です。食後すぐに寝ると体が消化活動を優先させるため、眠りが浅くなり、疲れが抜けにくくなります。夕食は遅くとも寝る3時間前までに済ませておきましょう。
夜食はなるべく避けるべきですが、どうしても何か口にしたい場合は、ナッツや小魚といった、少量でも腹持ちがよい食品がおすすめです。コーヒーやお茶などに含まれるカフェインには神経興奮作用があるため、寝る前は避けましょう。
お風呂は寝る2〜3時間前に入る
入浴には体をほぐして疲労を緩和する働きがあります。寝る2〜3時間前までにお風呂に入ると、心身のリラックス効果が得られます。体が温まったのち、体温が下がるタイミングで眠気が訪れ、スムーズに睡眠へと導かれるからです。逆に、寝る直前の入浴の場合、寝つきが悪くなる恐れがあります。寝る2〜3時間前の入浴を心がけましょう。
ストレッチで体をほぐす
机に座り続ける、スマホを見続けるなど、長時間同じ姿勢をとっていると筋肉が緊張して、血行が悪くなります。ストレッチなどで体を動かすと、筋肉がほぐれて血流が良くなり、体と脳がリラックスするため、睡眠の質を向上させる効果があります。睡眠直前のストレッチは高いリラックス効果が見込めるため、よく眠れない場合は特におすすめです。
寝る直前にスマートフォンを見ない
寝る直前のスマートフォンはNGです。人間の体は、メラトニンとよばれる物質が分泌されて眠気を覚え、睡眠に入ります。スマートフォンやパソコンのブルーライトを浴びると、脳が今は昼間だと勘違いして、メラトニンの分泌が阻害されてしまいます。そのため、寝る前の1〜2時間はスマートフォンやパソコンの使用を控えるのがおすすめです。
良質な睡眠と合わせておすすめする効率的な勉強法
良質な睡眠の確保に努めるとともに、勉強方法を工夫すればより高い学習効果が得られます。効率的な勉強方法をポイント別に解説します。
アウトプットに取り組む
受験勉強では、授業を受ける、参考書を読む、単語を暗記するなど、どうしてもインプットが中心になりがちです。受験本番そのものがアウトプットなので、受験勉強ではインプット後に練習問題・過去問を解くなどで、アウトプットを実践しましょう。インプットとアウトプットのサイクルを繰り返しているうちに、知識が定着していきます。
隙間時間を活用する
大学受験生の日常生活では、まとまった時間を確保しにくいのが難点です。特に3年生まで部活を続けた場合は、学習時間がさらに限られてしまいます。そのため、いかに日々の隙間時間を有効活用できるかがポイントです。例えば、通学時に電車やバスに乗っている15分間や帰宅してから夕食までの20分間など、細切れの時間を活用して工夫する必要があります。
予備校に通う
予備校は大学受験に役立つデータやノウハウが蓄積された学習機関です。受験勉強を効率的・効果的に進行できるカリキュラムやテキストが組まれています。予備校に通うことで、自分の学習レベルや志望校に合わせて、限られた時間を効率よく使って勉強すれば、睡眠時間の確保にもつながります。独学での取り組みに限界を感じている場合はおすすめです。
まとめ
大学受験生に必要といわれる6時間か7時間半の睡眠時間を削ると、疲労蓄積や精神不安定の原因になります。学習効果を高めるには、朝型の生活に切り替える、良質な睡眠を得るなどの工夫が功を奏します。ぜひチャレンジしてみてください。
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