大学受験を見据えて、予備校・塾への入学を検討するご家庭も多いのではないでしょうか。でも、いつから通い始めるのがベストなのか、具体的な時期が分からないと悩む方もまた多そうです。この記事では、予備校に通うべきベストなタイミングや、通学開始時期を決める判断材料について解説します。
高校1年生では3割、高校2年生では4割が通っている
出典:ベネッセ教育総合研究所「学校外教育活動に関する調査 2017」
本格的に受験勉強を始める時期は、なんとなく「高校2年生の秋から高校3年生の春にかけて」というイメージがありませんか? 通学をスタートするタイミングも、これと同じ時期が多いと思いきや、ベネッセの調査によると、高校1年生では約34.6%、高校2年生になると約38.4%が塾や予備校に通っているという結果が出ています。つまり、高校生の3~4割は、イメージよりも早く塾・予備校に通い始めているということです。
必要な勉強時間とは?
早い段階から通学を開始する理由の1つに、大学合格までに必要な勉強時間が膨大であることが挙げられます。
一般的に、国公立大学に合格するためにはトータルで2500~3500時間、私立大学に合格するためには2000~2400時間も勉強をする必要があるといわれています。自宅学習だけでこれらの膨大な勉強時間を確保できればいいのですが、自分の力だけでは心許なければ、早期からの予備校通学を視野に入れておきたいところです。
早期通学で学習習慣が身に着く
予備校へ早期通学する理由のもう1つに、学習習慣を身に付けることが挙げられます。
高校受験までは必死に勉強していた人でも、合格して入学したら気が抜けてしまい、毎日の勉強が疎かになってしまうパターンはよく見られます。部活動が忙しく、自宅で学習する気力がない人もいるかもしれません。日頃から勉強をしていないと、いざ受験勉強を始めようと思っても、学習習慣が身に付いていないために思うように勉強が進まないものです。早期から予備校に通うことで、半ば強制的に学習習慣が身に付き、スムーズに受験勉強へ移行できます。
学校での成績、入試区分、志望校から考える
通う本人の状況によってもいつから通うべきなのかは変わってきます。いくつかの条件をもとに、通い始める時期を判断するといいでしょう。
高校の成績をチェックする
まず着目するべきは、学校の成績です。高校1・2年生で学習する範囲は、共通テストを解くための基盤です。苦手科目を理解しないまま放置すれば、本格的に受験勉強を始めてから苦労することになります。定期考査などの結果が平均点を下回るような場合は、早いうちに予備校の通塾開始をおすすめします。
受けたい入試区分によって決める
学校推薦型選抜を考えているなら、多くの大学では評定平均が出願基準になります。受験する大学にもよりますが、評定には高校1年生からの学校の成績が大きく関わってくるので、早期から予備校に通い、学校成績の向上を目指しましょう。ただし、一般選抜であっても、今後は調査書(評定含む)を重要視するパターンが増えてくる可能性も考えられます。学校推薦型選抜を視野に入れていなくても、学校の成績をキープするに越したことはありません。
一方で、総合型選抜は部活動や留学など、高校3年間で力を入れたことが大きく評価される入試方式です。予備校に早くから通うことで、これらの活動に制限がかかってしまうなら、通い始めるタイミングを遅らせるといいでしょう。
志望校のレベルによって決める
先ほど、国公立大学に合格するためにはトータルで2500~3500時間、私立大学に合格するためには2000~2400時間勉強する必要があると述べましたが、難関大学や医学部を目指すならそれ以上の勉強時間が必要になってきます。したがって、ハイレベルな大学を志望している人は、より早い予備校への入学をおすすめします。
予備校によっては、高校1年生から「基礎」や「難関」などレベルに合わせたコース選択が可能です。志望校のレベルに合わせて、入る予備校やコースのスタイルを選びましょう。
国公立大や私立大、志望校から考える開始時期
志望大学によって必要なトータル勉強時間が異なるのは、難易度の違いもありますが、おもに受験科目数や出題範囲の違いが理由です。志望校の受験科目によっても、予備校に通うべきタイミングは変わってきます。
東大、京大、難関国立大学を目指す場合
国公立大学の特徴は、私立大学に比べて受験科目数が多いことです。科目数が増えるほど、単純計算で必要な勉強時間も増加します。さらに、東大や京大といった難関国立大学を目指す場合、ライバルのレベルも上がります。必然的に、より深い学習知識が求められるでしょう。これらを踏まえると、より早く予備校通学を始めるのが望ましいです。
医学部や、難関大理系を志望する場合
医学部や難関大学の理系学部では、多くの大学で共通テスト理科の科目選択方法に「理科(2) から2科目受験」を指定し、2次試験でも理科2科目受験を科しています。理科(2)は専門科目なので、基礎科目である理科(1)を選択するよりも出題範囲も広く、必然的に難易度が上がります。2次試験の理科の科目数によっては理系科目にかける勉強時間が多くなるので、早めの行動を心がけましょう。
現役高校生、浪人生で変わる目標
受験勉強の進め方や到達目標は、勉強を始める時期で変わってきます。スタートする時期ごとに、ベストな勉強の進め方を解説します。
高校1年から開始する場合
高校1年生では、まず学習習慣や自分なりの勉強スタイルを身に付けることを重視しましょう。学習習慣が身に付いていないと、いざ本格的に受験勉強を始めようとしても、なかなか集中力が続かないものです。自分なりの勉強スタイルが確立されていないと、効率が悪くなり、最終的に勉強時間が足りなくなるというケースも。学習習慣は短期的に身に付くものではないので、高校1年生から取り組むことが重要なのです。
高校2年から開始する場合
高校1年生においても言えることですが、高校2年生では基礎学力をしっかりと定着させることが大切です。とりわけ国語、数学、英語の主要教科の学習を徹底し、学校成績の確保に努めてください。苦手科目がある場合は、なるべく早く克服しておきましょう。
高校3年から開始する場合
高校3年生では、志望校の問題傾向と対策を踏まえた学習が必要になります。基礎学力のおさらいをするとともに、志望校対策として過去問題集に取り組んだり、各社が実施する模試を受験したりして実践を積みましょう。
浪人生の場合
浪人生は現役生と違い、高校3年間の学習が完了している分、前半の模試などでは好成績を得られやすい傾向にあります。ただし、そこで安心すると、現役生の後半の追い込みに敗北しかねません。今日の目標、今週の目標とゴールを細かく区切り、進行を振り返りながら着実に勉強を進めましょう。
浪人生のゼロからスタートや編入希望大学生の場合
現役生のころにほとんど受験勉強をしないまま浪人してしまった場合や、編入を希望している大学生は、まず志望大学の受験方式や必要科目について調べるところから始めましょう。
特に編入試験は、大学ごとに他大学からの編入を受け付けていなかったり(編入試験といえども、学内転部のみ)、試験内容が異なったりするので、どこを目指すかによって対策が変わってきます。多くの大学で学力テストのほか、小論文や面接などが課されます。
予備校の授業が始まるのはいつから?
三大予備校あるいは四大予備校といわれる大手予備校や、現役に特化した予備校など、あらゆる予備校では独自のカリキュラムに沿って授業が進みます。入学を検討するときは、カリキュラムが始まる時期、あるいは区切りのいいタイミングがいつかも確認しておきましょう。
また、自分の好きなときに授業を受けられる映像授業スタイルの予備校もあります。自分の求める学習スタイルかどうかもチェックしつつ、各予備校のカリキュラムを見てスタート時期を考えましょう。
4月、5月、6月から開始する場合
一般的に、予備校のカリキュラムは学校と同じく春からのスタートがほとんどです。したがって、入学する時期としては春がベストといえます。春には入学金無料などのキャンペーンが開催されることもあるので、お得に入学できる可能性もあります。
7月、8月、9月から 開始する場合
7月から8月にかけては、多くの予備校で夏期講習が実施されます。まずは夏期講習に参加し、授業の雰囲気を確認してから9月に入学してもいいでしょう。ただし、高校3年生の9月からスタートできる予備校は少ないので、注意が必要です。
早い方が良いが、遅いからダメなわけではない
ここまでで述べてきたように、大学受験に向けた予備校の入学は、早ければ早いほど良いでしょう。しかし、出遅れたからといって必要以上に落ち込んだりあせったりする必要はありません。
予備校に早くから通うデメリットとは?
予備校に通う時期が早いほど、必要なお金は増えてしまいます。経済状況によっては、予備校に通えるタイミングが限られることもあるでしょう。重要なのは、予備校に通うこと自体ではなく、日頃から学習習慣が身に付いているか、学校の授業をおろそかにしていないかです。学校の授業の予習・復習をきちんとこなし、定めた目標に向かって自宅学習を続けていけば、高校1年生、2年生で習得したい基礎学力はしっかりと身に付くでしょう。
今できる最良の選択がベスト
すでに高校3年生になり、「出遅れてしまった」と感じている人でも、まだ遅くはありません。この記事を読んでいるということは、危機感を持っている証拠です。受験勉強で重要なのは、目的意識を持ち、その目標に向かって努力を続けることです。今できる最良の対策を打ち、ベストを尽くしましょう。