大学に通うために必要な費用は、目指す大学や学部、居住エリアや通学方法によって大きく変わります。この記事では、大学の費用はどれくらいかかるのか、詳しい内訳を見ていきます。全て親任せではなく、自分の目指す進路だと、どれくらいの費用が必要になるのか、事前にシミュレーションしておき、親子で話し合っておきたいもの。保護者とともに、内容をチェックしておきましょう。
大学の学費の平均費用はいくらになるか?必要なのは学費だけじゃない
大学の学費の大部分を占めるのは、入学料と授業料です。4年間通ったとして、必要になる学費の平均は、国立大学で約242万5000円、公立大学で約245万5000円、私立大学で約469万円となっています。
とはいえ、大学に通うために必要な費用は入学料と授業料だけではありません。それ以外にも、以下のような費用がかかります。
- 受験勉強、受験費用など、大学に入るまでにかかる費用
- 留学費用
- 生活費、課外活動費など
- 参照:
入学までに必要な費用
受験から大学入学までに必要な費用は、入学料や授業料と比べて見落としがちです。場合によっては数百万もの費用がかかることもあるので、しっかり把握しておきたいところです。
全国大学生活協同組合連合会の「2022年度保護者に聞く新入生調査」によると、自宅生および下宿生の、受験から入学までにかかった費用の平均は以下のとおりです。
- <自宅生の受験から入学までにかかった費用>
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国公立大学:138万7600円
私立大学:175万7800円 - <下宿生の受験から入学までにかかった費用>
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国公立大学:212万8700円
私立大学:246万5200円
この費用の中には、受験のために必要な費用のほか、教科書・教材購入費用や住まい探しの費用、生活用品購入費用などが含まれます。
- 参照:
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全国大学生活協同合連合会「2022年度保護者に聞く新入生調査」
受験勉強にかかる費用
受験対策として、予備校や塾に通う学生、浪人生は多くいます。予備校や塾の年間授業料は、高校生で50万円程度、高卒生(浪人生)で70~100万円程度です。通う年数によって費用は増大するうえに、教科を選ぶ単価制の予備校や塾の場合は、選択する科目によっても費用が変わります。
こちらも参照
「予備校とは?-塾との違いやどちらに通うべきか?選び方などわかりやすく解説-」
受験にかかる費用
受験するときに、試験ごとの受験料(入学検定料)がかかります。共通テストの受験料は、3教科以上だと1万8000円、2教科以下だと1万2000円です。さらに、国公立大学の場合、2次試験を受けるのに1万7000円が必要になります。
私立大学だと、共通テスト利用での受験料は1万8000円前後。医歯学部以外の私立大学で、共通テストを利用しない試験では、1つの大学を受けるのに3万~3.5万円ほどかかると言われています。
また、学内併願、インターネット出願などで、割引制度を導入している大学もあります。
- 参照:
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公益社団法人 生命保険文化センター「大学受験から入学までにかかる費用はどれくらい?」
合格発表後にかかる費用 入学金は一括支払いが多い
志望校以外の大学も受験すると、併願校の入学金も払わなければいけないケースがあります。志望校以外の入学金が必要になるかどうかは、“志望校の合格発表日”と“併願校の入金締切日”をチェックして把握しましょう。
入学金は、安いところでも10万円以上がかかり、決して少額ではありません。合格した併願校に、どの段階で入学金を支払う必要があるのか、志望校の受験結果も踏まえて検討する必要があります。
大学の学費は大学や学部で変わる
大学の入学料や学費は、国公立大学か私立大学か、さらにどの学部に入るかによっても変わってきます。
それぞれ、どれくらいの入学料や授業料がかかるのか、平均額を調査しました。
国公立大学志望の場合
国公立大学の授業料の標準額は、文部科学省による「国立大学と私立大学の授業料等の推移」によると、各国立大学が法人化した平成17年以降は同額となっています。国立大学(令和4年度入学生)で、4年間にかかる具体的な学費は以下のとおりです。
- <国立大学(標準額)>
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入学料:28万2000円
1年間の授業料:53万5800円
4年間の総額(諸経費含む):242万5000円 - <東京工業大学>
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入学料:28万2000円
1年間の授業料:53万5800円
4年間の総額(諸経費含む):282万4000円
公立大学は、大学ごとに入学料や授業料が異なります。また、地域出身者か地域外出身者かによって入学金が異なるケースも多くあります。以下は東京都立大学の入学料・授業料です。
- <東京都立大学(地域内)>
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入学料:14万1000円
1年間の授業料:52万800円
4年間の総額:222万4200円
※地域内=東京都の住民 - <東京都立大学(地域外)>
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入学料:28万2000円
1年間の授業料:52万800円
4年間の総額:236万5200円
- 参照:
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東京都立大学 「学費・減免制度・奨学金制度等」
こちらの記事も参照してください
「国公立大学の学費は安い?私立大学との比較や学部での違い」
私立大学、文系、理系で平均金額は変わる
私立大学の入学料や授業料には、国公立大学のような標準額が設けられていないため、大学によって学費の総額が異なります。さらに、同じ大学でも学科・学部によっても大きく差があります。
- <私立大学文系学部>
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初年度納付金:118万9000円程度
4年間の学費総額:407万9000円程度 - <私立大学理系学部>
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初年度納付金:156万6300円程度
4年間の学費総額:551万2000円程度
理系学部の方が、文系学部に進学するよりも平均額費総額は140万円ほど高くなっています。また、理系学部の方が大学院まで進学するケースが多く、卒業までの学費総額が高くなる傾向にあるようです。
私立大学でかかる費用については、こちらも参照してください。
「私立大学文系・理系の学費 4年間でいくら? 国公立大学との差は?」
医学部、大学院進学になれば6年間に
医学部や大学院に進学したら、最短で6年間も大学に通うことになります。4年生大学よりも、学費が2年間分多くかかるということです。医学部の場合、国公立大学では、6年間の学費の総額は350万~400万円ほどになります。
医学部でなくても、大学院に進学すると、初年度に再度、入学金が必要です。国立大学で大学院に進学した場合の6年間の学費の総額は、標準入学料を加味すると377万8800円になります。
海外の大学を目指す場合
海外の大学は、国によってはもちろん、大学によっても必要な費用は大きく異なります。
例えばアメリカのハーバード大学は、年間授業料として約5万5000ドル(約810万円※)がかかります。オーストラリアにあるシドニー大学の年間授業料は、3万9000~5万1000オーストラリアドル(約368万~481万円)です。イギリスのオックスフォード大学の年間授業料は、2万8950~4万4240ポンド(約530~810万円)となっています。
さらに、海外の大学に通うなら、帰省にかかる交通費や生活費なども多額になるのは避けられないでしょう。
※2023/09/08時点のレートでの計算
休学、留年した場合は?
留年すると、たとえ落としたのが1単位でも、1年分の学費が余分にかかります。ただし、早稲田大学など一部の大学では、留年生向けに学費の減免制度を設けているところもあります。
また大学によって異なりますが、なんらかの事情によって休学しなければならない場合、申請すると授業料が全額免除または一部のみの支払いになることがあります。この場合は、復学のタイミングや時期なども併せて考えておく必要があります。
- 参照:
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早稲田大学「2022 年度 延長生学費の取扱いについて」
学費が払えない!にならないように支払時期を抑えておく
授業料を支払うタイミングは、前期と後期に分かれるのが一般的です。学期が始まって1~2ヶ月が期限となることが多いので、この時期にまとまったお金を準備しておきましょう。
大学によっては1年分を一括で支払うこともあります。「お金が足りなくて学費が払えなかった…」とならないように、支払時期を把握しましょう。
留学費用について
海外留学は、在籍中の大学を休学して海外の大学で学ぶ制度です。
ひと昔前の語学留学は、“一部の人間のみが利用できる特別な制度”といったイメージがあったかもしれません。しかし、現在では海外留学する学生も増え、より身近な制度になりました。現に、大学によっては海外留学が単位取得に必要なところもあります。
文部科学省でも、「トビタテ!留学JAPAN」と題した留学促進キャンペーンを実施し、国として海外留学を後押ししています。その他にも、民間企業等の協力を得た「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」や、国費による海外留学支援制度の推進などで、海外留学がしやすくなっています。
- 参照:
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文部科学省 「日本人の海外留学 海外留学支援制度」
生活費・課外活動 一人暮らしする場所によっても変わる
大学生活の中で、授業料と並んで必要になる大きな費用が、生活費・課外活動費です。これらの費用は、実家から通っているのか、一人暮らしなのか、また一人暮らしでも都市部と地方のどちらで暮らすのかによっても大きく変わります。
スマホ代、パソコン購入など生活準備費
大学の授業を受けるにあたって、新たにパソコンを購入する学生も少なくありません。現代では、スマホも必需品です。パソコン購入費用やスマホ代は、実家通いか一人暮らしかに関わらず必要になる費用です。
一人暮らしでかかる費用は?
全国大学生活協同組合連合会が実施した「第57回学生生活実態調査」によると、大学生の一人暮らしにかかる生活費は、毎月平均12万3630円とのことです。ただし、家賃や物価は地域によって差があるので、東京や大阪、福岡といった都心に住まいがあるなら、平均を上回る生活費が必要になるでしょう。一方、北海道などの家賃や物価が低い地域に住むなら、平均より費用が掛からないことが多いです。
同調査によると、大学生への仕送り額の平均は約6万8000円であることがわかりました。少しでも費用を抑えたければ、学生寮の利用を検討するのも良いでしょう。ただし学生寮には定員があるので申し込み方法や期限もチェックしておきましょう。
- 参照:
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全国大学生活協同組合連合会「第57回学生生活実態調査」
部活やサークル、ゼミなどの研修費
部活やサークルなどに所属していると、備品を購入する費用の負担が発生することがあります。また、所属するゼミによっては研修費が掛かる場合があります。
自動車免許や資格取得に必要な費用
大学生になると、時間の融通のききやすさを利用して、自動車免許を取得する学生が増えます。自動車免許を取得するには、だいたい25~35万円ほど必要です。通常の教習所に通うなら35万円程度、合宿免許なら25万円ほどになります。
成人式や卒業式、就職活動に必要になる費用
自治体にもよりますが今しばらくは、大学2~3年生の頃に迎える成人式・卒業式では、ほとんどの女子学生が振袖や袴を着用します。その際、衣装レンタル料やヘアセット代などもかかります。また、大学3年生になると就職活動がスタート。リクルートスーツやバッグ、靴といった道具一式が必要になることもあります。
大学にかかる費用はどうする?
ここまでで、大学に通うにあたって必要な費用をチェックしました。これらの費用を誰が工面するのか、仕送りはどれくらいしてもらえるのかなど、費用面は大学生活が始まる前に保護者としっかり話し合っておきましょう。
大学の学費、親が出す割合はどのくらい?
日本学生支援機構が実施した「令和2年度学生生活調査」によると、学費と生活費を合計した平均的な年間必要金額181万3000円のうち、家庭からの給付は年間約114万円(大学の昼間部に通う学生が対象)となっています。つまり、保護者は大学の学費の約63%を負担している計算になります。
- 参照:
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日本学生支援機構による「令和2年度学生生活調査」
大学までにいくら貯める?必要な貯金額は?
これまで説明してきたように、目指す大学や学部にもよって必要な費用は変わります。
まずは、志望する大学、学部、併願する可能性のある大学、学部の学費を調べましょう。
まだ明確になっていない、進路が決まっていないという場合は、上記アンケート結果の家庭からの給付平均額114万の4年分、450万程度を目標に貯蓄をすすめてみてはいかがでしょうか?
学資保険などで積立、学費の貯め方
まだ子どもが小さければ学資保険を活用する方法もあります。
学資保険とは、“子どもの教育資金を貯める”という、明確な目標が設定された貯蓄型の保険です。教育資金が必要になるタイミングで祝金や満期保険金を受け取れるので、「いざ使おうと思ったときにお金が下ろせなかった…」なんてことも起こりません。
また、児童手当てを全額貯めると約200万円になります。この児童手当を学費として貯めるのもおすすめです。
貯金では足りないなら学資ローンや教育ローンの活用
どうしても貯金額だけでは学費がまかなえないときは、教育ローン(学資ローン)を利用するのも手です。教育ローン(学資ローン)とは、子どもの教育費や学費などを工面するためのローンです。安定した収入があれば、学生本人が申込人になれる教育ローンもあります。
大学無償化制度
大学無償化制度の正式名称は、高等教育の修学支援新制度。令和2年4月1日にスタートしました。金銭的理由で進学できない子供たちを支援するために生まれた制度で、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校が無償になります。ただし、世帯収入やひとり親世帯など、支援制度を受けるにはいくつか条件があります。
- 参照:
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文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
奨学金制度
奨学金制度とは、学費の付与や貸与を行う制度です。奨学金制度の中には返済する必要がない「給付奨学金」と、返済が必要な「貸与奨学金」の2種類があります。「貸与奨学金」は、利子の有無によって、さらに2タイプに分かれます。また、海外留学向けに返済不要の給付奨学金が用意されていたり、大学によっては独自の奨学金制度を設けていたりするところもあります。
勉強も費用も早めの準備が大切
受験勉強も大学生活も、スムーズに進めるためには早めの準備が大切です。大学に通うために必要な費用総額は、学費だけを見ていては見えてこないもの。これを機に、どのような進路を選ぶのか、そのためにはどれくらいの費用が必要なのかを、親子で相談してみてはいかがでしょうか。
自分の進みたい道がまだはっきりわからない方は、以下の記事も参考にしてみてください。
大学の学部、学科の選び方 5stepで見える選択肢